夜の冒険者は牙をむく

かぷか

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24 レイの答え

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 ソードが「二日後にもどる」と言って出ていった。それから、帰ったのは三日後の早朝だった。そのまま倒れ込んだソードを寝かして目が覚めるのを待った。
俺はリッカの話を聞き出すつもりも、叱るつもりも全くなかった。そんな事よりもだ。この事を知らないふりをするなんて俺にはできない。

はぁ…本当にこいつは…

「ソード、こっちに来いよ」

とソードを自分の方へ来させた。案外素直に来たのは、いる場所がなかったからなのか。話を始めたがソードが「依存したくない」と言ってきた。頼りたくない、甘えたくないとかそういう感じだろうな。多分。

「俺は全然構わないけどな、してもらって」

それより俺の本題はこっち。ソードが倒れるまでに至った行動だ。きっとこれは、普段からソードが少なからずしてきた事だと思う。ただ俺と一緒にいる事によりバレたと言った方が早いな。

「ソード、お前本当ならリッカにもっと残りたかったんだよな?それを俺が居るから最短で戻って来たんだろ?ありがとな」

「……。」

はぁ…

「できない約束はしないタイプだろ」

「……。」

図星か。

「だから、起きてすぐ約束破ったの謝ったのか?普通、心配かけてゴメンとかなんだよ」

「……。」

んー困った。

「後、何事も無いようにするなよ。昨日の倒れたの見てなくて、普通に次の日会ったらわかんねぇよ。そうやって誰にもバレないように自分の気持ち隠してきたのか?気を使いすぎだ」

ぎゅっとソードを抱き締めた。

「……。」

今までバレないように皆に優しくしてきたのか。てか、気づく奴いんのかよ。

「はぁ…生きづらいだろ?その性格だと」

「わかってるからいい」

これが、こいつにとって普段通りだとしたら…

「なぁ、頼むから。そんなお前見てるのつらい」

 俺は好きな人に気づかないうちに愛されてるより、表に出してくれたほうがいい。といってもソードに染み付いた気づかれない愛はすぐに表に出せないよな。通常なんだから。それに、こいつのは人間愛だな。

ソードにという意味で愛されたら幸せだろうな~あぁ~幸せにしたい。

はぁ…倒れるまで必死に俺の所に帰ってくるとか…こんな行動されて、どーすりゃいいんだよ。

はぁ~もぅ、無理。

許せロキ。

「ソード、ずっといてやるから俺といろよ。全部受け止めてやるから」

「ソード、愛してる」

「これ、言っとくけどいろいろすっとばしてプロポーズだからな」

 返事なんてどーでもいいや。

 あ~ちょー好き。
 ソードの顔みたい。
 キスしたい。

 ソードの目に俺を映してくれ。

「ソード好き。やっと目みれた」

□□□

「お腹空いた」

「俺もー。ソードが買ってきたお菓子なら少しあるぞ」

「いや、食べに行きたい」

「だな、じゃあ行くか」

 と、適当なご飯屋に入ってソードはニケの話を淡々としてくれた。

 レオから話を聞いていた俺は、ソードの話と照らし合わせていた。ニケは大事な友人の1人でかなり親しかったようだ。多分、ソードは浅くはあまり付き合わないタイプなんだな。誰とでも仲良くなれそうなレオとは真逆そうだな。

ニケの病はすぐにどうこうなるものではなく、今は療養しながら体調を見て仕事もしているらしい。

俺はソードが心配でレオに会って心辺りを聞いてしまった話をしたら、明日レオに会いに行くと言ってくれた。ソードの報告もしたいしな。

だけど、まだ何かひっかかる。なんだ?

□□□

「よう!家出冒険者!どこいってた?」

「家出じゃない。リッカに帰省してた」

「実家か?」

「違う、ニケに会いに行ってた」

「何だニケに会いに行ってたのかよ!あいつ元気だったか?」

 何気ない普段よくでる会話だが、病気だと知っている俺たちには簡単には返事ができない。

「めちゃくちゃ幸せそうだった。子供も可愛かったしな。また、ゆっくり会いに行く」

「そうか、あいつにも全然会ってねぇな~学校でてから一回も。今度行くかな!ソード、レイが心配してたから行くならちゃんと言ってからにしろよ~」

「そーだな」

「レオ、ありがとな。ソードの事教えてくれて、無事捕獲できた」

「おい!魔獣みたいな扱いすんな」

「ははは、良かったな。そいつすぐどっか行くからちゃんと捕まえとけよ!」

「おぅ!婚約したから大丈夫」

「さわんな!!!」

ソードの肩に手を掛けていた俺の手は、パシッっと叩かれた。レオは大爆笑した。

報告が終わりガルシアからの帰り道、気になってたことを聞いた。

「レオにニケの病気、言わなかったんだな」

「ニケが俺に話すの初めて躊躇ったんだ。それに、こんな話を話題にしたくないだろうし。ニケが自分から話してくれって言った訳じゃないしな。何よりもめちゃくちゃ幸せそうだった」

「そっか、でもレオからしてみたら何で話してくれなかったんだってならないか?」

 ソードは真剣な顔をして真っ直ぐ前を見て話した。確か、この顔どっかでみたな。

「それなら、今から会いに行けばいい。仕事も休んで、友人に会いに行けばいい。病気を知ったから会いに行くより、会いたいから会いに来たの方がニケは喜ぶ」

「………そうだな」

 それは現実難しいと思うのは、仕事や用事があると理由に俺が友人を蔑ろにしてると認めざる得なかった。

「死んでから会っても意味はない」

「そうだな」

どこまでもソードはぶれない。

 もしも、もしもレオがソードにそんな事を言ったのなら、それはソードへの八つ当たりでしかない。会いに行かなかった自分への後悔を誰かにぶつけるには、黙っていたソードに言うしかないからな。

そうやってソードは誰かにされてきたのかと思うと、胸が痛くなる。にしてもニケはソードに愛されてるな。

あ゛~うらやましい
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