夜の冒険者は牙をむく

かぷか

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21 ガルシアのレオ

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「流石ヒューズ、国境検査も入国料も一流!」

 無事にソード達はヒューズ国に入国した。ヒューズはこの世界で最も大きな国。街の数も人の多さも桁違いで昼も夜も賑わっている。その中でも一番大きな街が「ガルシア」。地図で見るとソードが住むグースの上にガルシアが位置する。

「高いよな」
「大国だしな、俺も何回かガルシアに来たことある」
「へーまぁ、一番目立つ街だしな」
「グースはどーだったかな?通った位はあるかもな」

 二人はハブウルフを預け歩いてソードの家に行った。行き交う人は忙しそうに、また商人は騒がしく会話の声が聞きとりにくいぐらいだった。

ソードが道を案内しつつ目的の我が家に着いた。鍵を冒険者プレートで開け、とりあえず荷物だけを中に置きすぐに外に出た。

「ガルシアで人に会う、俺の学校時代からの友達」
「へー!」

友達いたんだ。

「一応、俺にも数人いるからな!」
「何も言ってない」
「顔がいってんだよ」

とフードをバサッと被った。その後は、クロウという乗り合いの蛇獣を使いガルシアまで行った。蛇獣は足の有るものと、そうでない無足のものに別れ乗り合いのクロウはほぼ有足だ。旅行客や一般、勿論冒険者達も乗る交通手段として使われている。

 ソードは何度かクロウを乗り継いで剣術訓練学校に着いた。受付に行き、プレートをかざし中に入ったが受付の者が呼び止める。

「すみません、只今レオナルド先生は怪我をして医務棟にいます」

「すぐ会えますか?」

「それは何とも」

「でわ、場所を教えてください」

 場所を教えてもらい、少し早歩きでそこへ向かう。レイも後ろからついて行った。階段を上り廊下を進むと前からデカイ男が歩いてきた。

「よう!ソードじゃねぇか、久しぶり!魔の森行ってたんじゃねーのか?何でここにいんだ?」

「お前、怪我した?」

「あ?これか、へまやって腕おった」

「あっそ」

「他は?」

「別にねぇけど」

「ならいいや、レイ用事は済んだ。帰るぞ」
「あ、おぅ。いいのかよ?」

「用事は済んだからいいんだよ」

「何だ~ソード。タイミングがいいじゃね~か!暇だから部屋来いよ。その、後ろのイケメンも一緒にな」

 レオはソードにこっちだと言って部屋に向かった。

 ここはガルシア剣術訓練学校。学校はいくつもの剣術場があり横には4棟ほどの寮が建てられいた。その一角の3階に職員寮があり一番奥の部屋に通された。
 部屋は綺麗に整頓され、机、ベッド、ソファーと一通り生活できるものが揃っていた。職員寮といっても普通の部屋と何ら変わりなかった。

「遠慮すんな、座れよ」

そう言うとソードとレイはソファーに腰掛けた。

「初めまして、俺はレオナルド=スミス。ここで剣術を教えてる。こいつとは学校時代の友人だな。ソードが人を連れて来るなんてありえないから興味津々だ。よろしくな~」

「うるせ!こいつは、レイだ。今、一緒に冒険してる…」

「レイです。よろしく」

「は!?…お前が誰かと一緒に!?マジか…よく、ソードと一緒に居られるな!こいつ、変だろ!」

「おい!」

「んー」

「レイ、お前も否定しろ!」

 レオは豪快に笑った。レオは18歳の成人を迎えた後、実務を経てここ剣術学校の教師として最短で受かり働きに来ていた。剣術学校の教師は身体、精神共に鍛え上げられたエリート達の集団である。出世や転職にも有利に働き、職としては安泰であった。

「しばらくいんのか?」
「まぁ、そうだな。14.5日いるかもな。その後ロキの所戻る」

「あ~あいつ元気か?随分見ないが、だいぶでかくなったんじゃねぇの?」
「そうだな、身長も伸びたしスタミナも有るしな。剣術も悪くない」

「したら、俺の所に連れてこいよ!鍛えてやるから、ロキなら歓迎するぞ」
「ロキは冒険者になりたいから必要ない。と言いたいが、実は少し考えている」

「へー!まぁ俺はいつでもいいぜ。推薦してやるよ。やっぱり冒険者になるか」
「ロキに話しとく」

隣のレイを見て言った。

「よく、ロキがレイ君を許してくれたな。ソードとあれだけ組みたがってたのに、どーやったんだ?レイ君とは長いのか?」

 ソードの普段の行動からあり得ない事実が次々起きてきてレオは驚きを隠せなかった。ロキ以外を紹介した行動には特に興味津々だった。また、ソードが来た事により怪我をしたことによる時間の持て余しをしなくてすむなと嬉しく思った。

「レイと組んだのは1カ月ぐらい前で、その間にロキに会って許してくれた」

「へー!!そらスゲーな!レイ君、ロキの説得は苦労したんじゃねぇか?あははは」

「レオナルドさん、君付けは無しでお願いします。学生時代思いだすんで、レイで大丈夫です。意外とすんなり許してくれましたよ。利害が一致したんで」

レイは苦笑いしながら話した。

「んじゃ俺もレオで頼む。ソードと組んでんだ、お互い遠慮はいらねぇか。ソードと話す感じで話してくれよ!その方が俺もいい」

「お前の遠慮の無さは感心する」

「ソードにだけだろ?知らねぇのか?あはは。そーいや、こっちは王子の第一子の年に一度の御披露目だが見に行かねぇの?」

「いかね」

「変わらねぇなお前は、第一子なんだ。あいつも変わってくだろ?」

「お前の目は節穴か、あいつこそ変わらねぇよ。じゃあ、そろそろ行く」

「おぅ!なぁ、3日後休みだから飯でも食いながらいろいろ話そうぜ!勿論レイも一緒に」

「いいぞ」

「じゃあ、また」

 ソードとレイは立ち上がりレオの部屋を出ていった。久しぶりに会ったソードの変わりっぷりに口元が緩む。

「利害が一致ねぇ」

 口元を上げて誰に聞かれるでもない部屋でそう言った。
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