夜の冒険者は牙をむく

かぷか

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20 行き先

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「レイ、悪いがヒューズに行く。出来ればできるだけ早く」

「いいけど、今だと国境はすんなり通れないから、1週間ぐらいか?」

「そうだな、まわり道だがグリーンセルに入ってカウロックから入るのが妥当だよな~」

「だな、領地争いに巻き込まれたくないしな」

 ヴィゴラ国とヒューズ国の国境は領地争いの最前線。検問も厳しく今は利用するにはリスクが高い。ヴィゴラの隣国『グリーンセル国』という国を通りグリーンセルから更にその隣の『カウロック国』からヒューズに向かうのが一番安全な道となる。

「グリーンセルの領地と魔の森のギリギリ間を通ってカウロックから抜けたらどーだ?距離はちょっと遠くなるが」

「そーだな、どっちもそんなに変わらない気もするけど、入国審査を通る手間は省けるかもな」

「そっちの方が、楽だな」

「了解」

 魔の森とのギリギリを通りながら、カウロックに向けてハブウルフをできるだけ走らせた。警戒するは魔獣のみで、ことのほかスムーズに進めた。途中、何体かの魔獣が追いかけて来たが「見逃す!」といって進むことをソードは優先させた。

 無事カウロックの領地に入りヒューズまで残り半分の辺りで小さな宿に入った。

「ここまでこれば後はヒューズに入るだけだな。カウロックは今、一番安全だし問題なさそうだ」

 ソードも頷いて風呂上がりのお菓子をレイと食べていた。

「ヒューズはソードの自国だよな、どこの街出身だ?家とかあんの?」

「ガルシアの手前のグースに今は家がある。っても借りてるだけだから、倉庫みたいなもん。実家は別にあるけど」

「へー!1人暮らしか?兄弟とかいんの?」

「1人暮らし。兄が1人いる」

「へー!家いきてぇ!」

 ソードの生活感溢れる話にレイは興味津々で質問が溢れる。今まで全然そう言う話をしてこなかったので新鮮さを感じる。

「一度家に荷物置いて、用事済ました後ならいい。ただ、倉庫だから期待するようなのはないと思う」

「全然いい!やった~ちょー嬉しい!ソード謎過ぎて本当に生活してんのか気になってた!」

「どんなだよ、普通だろ」

 レイはニコニコしながらお菓子を食べた。そして長々と寝る前のキスをして「長いわ!」とソードに怒られて寝た。そして次の日、長いと怒った仕返しをこの後倍がえしにされるソードだった。

□□□

 ヒューズまで目前、7.8日以上かかりそうだった道のりも6日に短縮できた。カウロックでの宿は今日で終わる。明日からはソードの出身ヒューズ国に入る。

「思ったより早くついた、カウロックで何か欲しいものあれば」

「んー今は思いつかねぇな、ソードは?」

というと、街の通りにお菓子屋が並んでいた。言うまでもない。

「ハブウルフ置いてから、行く」

 そうして二人はハブウルフを置いてお菓子屋に足を向けた。レイがその近くで宿を見つけ思い付く。

「なぁ、今日の宿ここにしようぜ!ソードお菓子先に買ってこいよ。俺、宿に荷物置いてきてやるから」

そう言うとレイはソードの荷物を持って、行ってしまった。ソードはうきうきしながらお菓子屋に入っていった。しばらくするとレイが来て、ご飯を食べ一緒に宿に戻った。

「おい、これ…」

「ん?」

「何でダブルなんだよ!」

「バレた?」

「バレるわ!ベッド1個しかねーじゃん!」

「まーまーいいじゃん☆」

「はぁ…」

 いつもはツインでソードが宿をとっていた。だが、今回レイがとったのはダブルだった。キスが長いと怒られたので、もっと長くしてやろうと思ったのだった。これなら、いちいちベッドに戻らなくてキスできるという理由で。

レイはさっさと風呂に入りベッドに横になった。ソードもお風呂から出ると、寝る準備をしてレイの隣に来る。眼鏡を置き、レイとは反対の方を向いて「おやすみ」と寝る。

意外にもレイは普通に話かけてきた、てっきり無理やりキスを迫るのかと思っていたソードは肩の力を抜いた。

「なぁ、ソード。お前何で焔目になるんだ?」

「さぁ?自分でもよくわからん。しかも、なってるの自分では確認できたことはない。だから、お前に言われた時の事思い出すと魔獣と戦った位しか思い当たらない」

「そうか、他に誰かに言われた事は?」

「んー数回ある。どれも魔獣と戦った時の冒険者に。まだ、俺も若かったから言われるまで全然わかんなくて。言われて初めて気がついた。調べようとしたり、欲しいと言うやつもいたけど、怖くて逃げた」

「そうか」

「普通に知らないやつに目を見せるって怖くねぇ?余程信頼してる奴じゃないと無理」

「あはは、確かに」

それ以来ソードは1人で冒険者になったと話した。

「じゃあ、俺とダンケルで会った時警戒しただろ?」

「かなり、初めはお前も目が欲しくて追ってきたのかと思ったが。違ったな…」

「俺は、好きになっただけだからな」

「あ、そ」

「焔目の話、嫌じゃねぇの?」

「別に、聞かれたから答えただけ。ロキにも同じ様に聞かれたら答える」

「ロキしってんの?」

「さぁ?聞かれた事ないから知らないんじゃないか?」

「そっか」

 レイはソードに抱きついて首もとにキスをした。そして、ソードを自分に向かせ無言で優しくねっとりとしたキスをした。何度も何度もキスを繰り返したが、ソードが長いと言う事は無かった。
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