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5 ソードとレイ ③
しおりを挟む困惑した顔
そりゃそうだ。
罵倒や拳の一発でもあると思ったら
「こ、このお菓子は俺の」
「は?」
一瞬、脳が固まった。
「……わかった」
周りがみるみるザワつき始め、野次馬が集まりつつあった。
俺はフードを被せ横向き抱っこをして何事も無かったようにセドリックの居る武器屋に戻った。
「見つかった」
「見たらわかる」
何とも言えない顔で俺を見てくるセドリック。
わかってるよ!
「とりあえず、奢るから昼飯でも食べながら話そう」
と言って俺達は店をでた。途中、人拐いでは無い事と強姦目的では無いことを伝えて地面に下ろした。あと、逃げられるのが嫌で手首を握りながら歩いた。
俺、逃げられる事にそんなトラウマになってたのか?そんな事を思いながら比較的空いていて、開放的なテラス付きの店に入った。
手首を離せないでいたら「ご飯食べれないです」と言われた。俺はまた、逃げ出すかもしれないっと言ったら「今日買ったお菓子を人質にしたら逃げません!」と言われたのでちょっと笑った。
自分から逃げれない理由の提案するのかよ。俺は遠慮なくお菓子を人質にし一先ず席に座ってもらった。
「………。」
「あー俺はレイでこっちはセドリック」
「…ども」
「うっす」
「……………。」
「さっきは、すみませんでした!!」
俺は平に平にテーブルに頭をつけて謝った。隣でセドリックは笑いを堪えていた。マジで後で覚えてろよ!
「はい、許します」
「え?いいの?」
「まぁ、謝ってくれたので」
話したくてたまらないのに、会話がでてこない。俺は童貞か!と、自分につっこんでいた。
「とりあえず、レイさん。俺に話ってなんですか?」
と向こうから切り出してくれた。
「レイでいい。まず、俺はお礼が言いたい。1年前、魔の森で助けてくれたっつうか。あのままあんたがいなかったら、死んでた。覚えてないだろうけど、本当ありがとう」
眼鏡の奥にある瞳が、少し目が大きくなった。
「こいつ、1年も探し続けたんだぜ。ここ出身でもないのに。な!いつの間にか、ここでは有名人だ!」
ニヤニヤしながらセドリックは言った。
「そうですか」
「……名前、名前知りたいんだけど教えて貰えないかな?」
ダメか?
「……。」
警戒心強いな。いや、そらそーか。名前なんておいそれと教える訳ないよな。当たり前だ。冒険者の誰が自分から情報流すんだよ。しかも相手は俺より強い、格下なんか相手しねぇよな。
だが何とか普通に話がしたい。
いろいろ考えたが、今の俺に差し出せる信用を勝ち取る方法がこれしか見つからない。
「俺の名前はレイ=ルーベン=クラークス。年齢は19歳。身長は187センチ。髪は見ての通りシルバーで目はパープル。家はここからしばらく歩いた坂の途中。
好きな食べ物は甘いもの。嫌いな食べ物は味の無いやつ。今は冒険者をしながら暮らしていて、借金も指名手配もされてない。付き合ってるやつは今はいない。
1年前の満月の日。魔の森で魔獣を追いかけ、深追いした。魔獣の餌になりかけたところをあんたに助けてもらった。お礼も言えず、名前も知らないあんたを俺は探し続けてここに住み着いた。そして今日偶然、お菓子屋でみつけ今に至るところだ。できれば、普通に話したい」
「お、お前、おま、クラーク…」
セドリックは驚いていたが眼中にはいらない。
じっとそいつの目を見つめながら話した。いつの間にか片手を軽く乗せるように、そいつの手を握っていた。
伝わっただろうか?
「はぁ…」
ダメか。
「あのよく斬れる剣はまだ、持ってんのか?」
!!!?
今、何て!?
「ソードだ。ソード=オーデナリー。1年前の俺の『すみませんでした!』と今日のお菓子屋での事はこれで帳消しな!」
「覚えて……」
「あ?あの時お前だろ?1回深追いせずに帰ろうと判断してただろ。正しかったぞ。それを俺が横からすり抜けたせいで気が俺にそれたあげく危ない目に合わせちゃったからな。しかも、勝手にお前の剣拝借して血みどろで返して。悪かっ……」
レイは話し途中のソードにギュっと抱きついた。
「うれしい。スゲーうれしい。覚えてくれてたんだ!」
「悪かった…なレイ」
「いい。そんな事よりソード…ソードて言うのか」
「俺、20歳」
「あっそ」
ボソッと年を言ったソードは気にくわない様子だったが嬉しすぎた俺は暫くソードから腕を離せないでいたら背中をポンポンと叩かれた。
「レイ。飯食うぞ」
「わかった、そーいや今日はフードは黒じゃないんだな」
「フードはいろいろあるうちの1つ」
「へー冒険者依頼であった時は気がつかなかった。黒だと思いこんでたからって言っても今思い出せばだけどな」
「レイ、お前会ってたのか?」
「お前も会ってるよ。ぶつかったのソードだよな?」
「…そうだ」
「そりゃ、悪かったな」
「いや全然、謝ってくれたから嬉しかった」
謝るの普通な気がするが……
飯を食い終わって、セドリックが俺に「良かったな」と笑顔で言って別れた。あいつが誘ってくれなかったら会えなかった。
俺はまだ話したりなくてソードが今日どこで寝て、明日も居るのか気になって仕方なかった。
「まだ、時間あるか?話したい」
「いいよ」
意外にすんなりだった理由がこの後のソードの話で発覚する。そして俺の心は爆発する。
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