社会人が異世界人を拾いました

かぷか

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松編 ③

松の番外編 受け会 

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 河口君により早々に開かれた俺達の受け会は波乱に満ちていた。

 
「ビタさんありがとうございます」

「い、いえ。ほ、本当にささやかな物ですのでまた正式にいつか決まりましたらその時にしっかりしたものを渡します」

「俺もビタさんの結婚式には何かプレゼントしたいですから何でもいってください」

「そ、そんな。滅相もないです。私こそお二人にはお世話になっています。感謝しきれません」

「ビタさん、もう友達なんだしそんな畏まらなくても大丈夫だよ。俺なんてビタさんのほうが年上なのに全然敬語使ってないし。可愛いから年下に見えちゃうんだよね」

「そうそう、ビタさん可愛いからそうなるのわかります」

「あ、ありがとうございます。敬語は必要ないですから。あの、お二人はどちらが年上なのですか?たまに丁寧に話されるので」

「あ~それね、社会人だったときの名残でさ。松君とは仲良かったんだけど仕事場では敬語で話さないといけなくて今もたまにでるよね」

「そうだね、歳は同じ24歳なんだけど名前も河口君は河口君のままだしね」

「そうだったんですね。クラム様といると私も仕事場の言葉のまま話すのですごくわかります」

「「へー!」」

「じゃあ、好きですとかは言ったことないの?」

「そ、、そう言えば言ったことない気がします」

「「ええー!」」

「気になるのでお付き合いしてくださいといった感じでしたので多分クラム様からも言われたことはないです。好きといっていいかわからなくて。好意はあると思うのですが」

「「はぁ??」」

「ビタさん、クラムさんはビタさんのことが好きですから大丈夫です」

「は、はい」

「クラムめー!うちのビタをもてあそんだら許さん!!婚儀はやまとが認めてからにしてください!!」

「落ち着いて河口君!」

 まさかそんなことも言ってないとは思わなかった。でもクラムさんはかなりビタさんのこと好きなはず。婚儀を早くしたがってたしなんで言わないんだろ?

「好きと言う発言はナグマではどうなんですか?キスと同じぐらい重要なんですか?」

「えっと、口づけよりは重要ではないですが好意を抱いている相手に言う好きは重要ですからあまり人前やこの人と決めた相手に言うのが基本だと思います」

「それはこっちと同じだね、ソルトさん初めから結構松君に好き好き言ってたけどあれは?」

「そうですね…えっと、私のですからとらないでください。だと思います」

「重い」

「俺もそーいえばフィグに好きっていって貰うの遅かったな。フィグが周りにばっかり好きだ宣言してて腹が立った気がする。本人に全然いわないから」

「おそらくですがそれも同じです。ですが王が宣言するのは全て揃った状況でしか言われないかと」

「てことは、もう自分のなかで好きだと決まってるから言わないってことだよね。でも、やっぱり口に素直に出してくれないとこっちとしては心配になるよなー」

 二人が俺を無言で見た。
 なんだよ。

「てことは、松君はソルトさんに好きって言ったの?」

「私も気になります。どうやって伴侶になったんですか?私はクラム様から聞いたとき大変驚きました!」

「ねーねー!教えてよ馴れ初め!松君俺友達じゃん!聞きたい!」

「わ、私も是非参考にしたいです!」

「好きって言ったの?好きって!!」

 河口君の宇宙の不思議を探求するみたいな少年の目で見てくるのやめて!
 ビタさんも興味津々じゃん!

「だーわかったから」

 俺は仕方なく二人に馴れ初めを話す羽目になった。もう、今さらだし伴侶ってだけでももうやけくそだから話した。

「何その良い感じにドラマチックなの。俺、フィグに拐われてきたんだけどー」

「す、素敵です!そんなことが起きてたんですね!」

「じゃあ、やっぱり最後は好きって言ったんだ」

 河口君のちょっと不貞腐れた感じは何なんだろう。

「まぁ、言ったかな。でも、一回目言ったらわかんなかったみたいだから二回言った」

「ひゃー!」

 ビタさんの聞いたことないその声はどこからでてるんだ。俺の話なのに顔真っ赤にして押さえている。

「逆プロポーズになるのかな?ソルトさん相当嬉しかっただろうね。あの難攻不落な松君ついに落としたんだから!フィグより落とすの難しいんだから!」

「はい!絶対絶対嬉しかったと思います!」

 だから、河口君は俺をどう見てたんだ。
 ビタさん今日凄いテンション高いな。
 恋ばな好きなのかな?

「てことは、初夜もしたんだよね?」

 二人でこっち見ないで。
 それは、言いたくない!言いたくないから!

「松君!!」
 
 がっしり手首を捕まれた俺は河口君の気迫に押される。

「ちょっ、」

「松君、どっちか教えて下さい!話によっちゃあ今までの受け疑惑が晴れます!晴れて俺達の仲間入りになれます!ここは、受け会ですよ!」

「だからなんの疑惑つけられてるんですか俺は!」


コンコンコン

「やまと、」

 ナイスタイミング、フィグさん!

 助かった~

 ドアを開けるとやまとと松が押し問答をしていた。

「フィグ!!!延長です!!」

「わかった」

 俺の一瞬の希望はすぐに打ち砕かれた。フィグさんもっと頑張って終わりだっていって!

「ソルト!!」

「はぃ、とら様」

 あいつは察しがいい、気づいてくれるはず。俺が目で訴えると気がついたみたいだ。


【好きです】

「違う!!」

 おま、お前~!助けろよ!後で罰を下すぞ。

 目線にぞくぞくとしたソルトは何故か嬉しそうな顔をした。
 
「やまと様、申し訳ございません。この後私の稽古を見ていただく予定になってまして…」

「えー」

「ごめん、河口君」

「おや、ソルトさん稽古でしたか。では、私もお付き合いいたしましょうか?」

「え、クラムさんもするの?」

「はい、たまにいたしますよ」

「フィグは?」

「王は滅多にいたしませんが、よろしければ久しぶりにいかがですか?」

「………。」

「俺見たい」

「わかった」

 てこで話がまとまり間一髪難を逃れた俺は皆で稽古場へ。
 稽古をしていた人達がざわざわとした。

 勿論、フィグさんが来たからであってソルトがいる普段より緊張感が半端ない。河口君は初めて来た様子、キョロキョロしていた。

「では、どうしますか?」

「なんでもいい」

「では、王とやりたいかたいらっしゃいますか?」

 皆が退くなかソルトが前に出た。

「宜しくお願いいたします」

 普段の成果を確かめるって感じかな。
 がんばれよ。

 俺は河口君とビタさんと一緒に見学。

「凄いね~ソルトさん強いんだね~流石松君の側近」

「でも、ソルトよりクラムさんの方が強いよ。何度か見たことあるけど敵わないって感じだね。てか、フィグさん汗一つかいてないよ」

「あーフィグは多分そういう成分でできてんだよ。あれは人ってカウントしないで魔男と呼んでやってくれ」

 さらっと酷いこと言ってる。

 終盤に差し掛かりソルトの体力が限界に近いように見えた。よく頑張ってる。


「あの…松君様…」

 知らぬ間に男が一人少し離れた場所にいて話しかけてきた。俺は一歩下がり距離をはかった。これぐらいは離れていたい。

「なんでしょう?」

「よろしければ、次にお相手していただけませんか?」

「え?」

 俺無理だけど。

「ソルト様を従えている松君様と一度手合わせをしてみたいと思いまして。お強い松君様のお手合わせする姿を見てみたいです」

 そんな風に見えてんのかよ。
 俺は実際全然弱いからな。

「それに、最強の調教師様ですから…ぜひ…その…私を…鞭で…」

 き、気持ち悪い!

 と思った瞬間俺とそいつの間に何かが物凄いスピードで通りすぎた。

「ひっ!」

 通りすぎた物を見ると稽古用の剣が壁にささっていた。
 これって刺さるもんなのか?

「ソルト」

「申し訳ございません。とら様を守るのが私の使命ですから。どなたか存じ上げませんがとら様と会話をしてよろしい許可はでてるのでしょうか?とら様の顔を見てよろしい許可、同じ空気を吸って良い許可は?」

 フィグさんとの稽古の途中でこっちに来たソルトは剣を抜きに来た。そして虫けらでも見たかのように男を見ると言った。

「次のお相手をしていただけませんか?」

 俺はすかさず首輪をはめ紐を掴む。
 今にも斬りかかろうとするソルトを引っ張った。

「やめろ、再起不能にするきか」

「とら様」

「大人しく隣にいろよ」

「はぃ」

 男は逃げるように去っていった。

「とら様、大丈夫ですか?」

「うん」

 大人しくなったソルトは松の隣にニコニコしながら鎮座した。

「あーえっと、王、いかがでしたかソルトさんは」

「悪くない。特に最後の一撃は的確だ」

「そ、そうですか。それではお次は…」

 何人かの護衛が向かうもフィグさんの足元にも及ばずだった。

「どなたか王とやりあえるぐらいの根性がある人はいないのですか?」

「はい!!!」


 そんな中一人の成年が元気な声をあげた。

 もう、おわかりだと思いますが言わずと知れた河口君だ。

 周りはビックリしているが俺的にはもはや当たり前になりつつあるこの光景。元気よく返事をした河口君は一番軽そうな剣を手にしてフィグさんの前に来た。

 フィグさんは無表情。

「やまとさん、怪我をしますから!」

「クラムさん、止めないでくれ!これは男と男の戦いですから!最強を決めるんです!」

 格好いいセリフ大好きな河口君は剣を構えた。

「やまと、遠慮はなしだ」

「勿論!手加減しないでほしい!」

 本当にやるきなのか!?

 走り込む河口君!

「やー!」

「やまと、待て!」

「はい、待ちます」

 振りかぶろうとして河口君は止まった。

「やまと、持ち方が間違っている。こうだ」

「そうなの?剣持った事無いからわかんないや。では、改めてまして。やー!!」

「待て!」

「はい、待ちます。今度はなんですか?」

「それだと踏み込んだら俺にすぐやられる」

「えーー!じゃあさ、じゃあさ、二刀流してみていい?」

 剣を二つ持つ河口君はどっちが持たれてるかわからない。

「フィグ、剣二つ構えれない。なんでーやりたかったのに」

「長すぎるからだ。あと、二つ持つにはやまとの筋肉が足りない」

「えーちょっとフィグさん後ろで支えてよ」

「わかった」

 だんだん和やかな雰囲気になる稽古場。河口君はフィグさんを使ってワイヤーワークを始めてしまった。ペアのフィギュアスケートのように舞っていて楽しそうだ。

 それを見るとクラムさんは手を叩いて他の人と稽古を始めた。ビタさんはクラムさんを見て嬉しそうにしている。

 ソルトは俺の隣で変な奴がこないか見張っている。
 まぁ、そんな感じで今回の受け会も楽しく終わった。

「あー!!クラムさん!俺のビタをもて遊ぶ輩は俺が許さないです!だから、やまとを越えてから結婚してください!フィグ、そこで回って!」

「やまとさん、ビタさんをあそぶ輩は私も許しませんし私は輩ではありません。それにいつからやまとさんのビタさんになったんですか!そしてやまとさんを越えるとは何ですか? イテ」

「クラム様、油断大敵です」
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