社会人が異世界人を拾いました

かぷか

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松編 ③

29 ソルト城 ②

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 ゆっくり列車が止まった。扉が開き足元に用意された階段を降りる。目の前には白い大きな建物が。

「とら様ここがうちです」

「でか!何これめちゃくちゃ城じゃん」

「はぃ、城です」

「乗り物も凄いって思ったけど家も凄い」

「そうですか」

 とら様の好奇心たるお姿は私を和ませてくれます。さて、どなたがお迎えになるのでしょうか。


 三人の男が玄関扉前に待ち構えたいた。二人は荷物を運ぶ係で真ん中はソルトの教育係だった人物。

「ヒマイラ様、よくぞご無事で」

 ぬけぬけと良くそんな事が言えると松は思ったが今は流した。

「先に私ではなくナグマ1の調教師様に挨拶をお願いします。クラム様より地位が上です。それに王妃様のご友人です。失礼のないようにお願いします」

「た、大変申し訳ありませんでした。初めまして、私はハクモソイマエンレイです」

「初めまして。松永竹虎です」

 そう、何を隠そう俺はナグマで調教師と言う職に付いた。いいのか悪いのかリアクションが取れなかったけど河口君たっての希望だった。どうやら仕事内容は全然決めてなかったらしく響きだけで決めたらしい。ナグマに調教師と言う職業はあるが主に魔物を操る時に使うらしいから人に使うと言うのは初めてらしい。だから適当にどんな感じの仕事とかはこっちで考えていいとの事。それよりもナグマ民だという印象をつけたみたい。

 握手をしようとしたがソルトが必要ないとアイコンタクトをしてきたので俺は会釈だけした。

 年齢はソルトより20歳以上上に見え落ち着いた雰囲気だがどこか厳しそうな人にも見えた。

「では、改めてヒマイラ様、お帰りなさいませ」

 男がソルトにハグをしようとしたがソルトは手を前に出して静止させた。そして松と同じく頭を下げるにとどまった。

「ソイ、私達には触れないで下さい」

「かしこまりました」

「さっそくで申し訳ないのですがこちらへ案内させていただきます」

 歩きながら会話をするソルトとソイ。

「私は城でどうなっていますか?」

「はい。大罪を犯した犯罪者です」

「そうですか。では、裏から入ります」

「ヒマイラ様、構わないとのことです。どうぞお二人共にフードを脱いで下さい。皆がお待ちかねです」

 やっぱりソルトは大罪を犯したって事になってるのか。何か言われたり責められるのもあるかもな。ソルトをチラッとみたけど落ち着いてるみたい。
 
扉を開けて入った部屋には何十人もの人が広い豪華なテーブルに各々の席にきちんと座っていた。その一番奥の席にはここの主、つまりソルトの父親らしき人物が座っていた。俺達が入ってきても静かなままだったのでこれから尋問でも始まるのかと思った。父親と向かい合わせになるよう俺とソルトの椅子は置かれていた。座ったと同時に一斉に立ち上がると声を揃えてこう言われた。

『王妃様のご友人、この度は誠に申し訳ありませんでした!』

 いきなり気合いの入った謝罪を大の大人数十人にされビックリした。ソルトも少し驚いたようすだった。皆が頭を上げないので俺は言った。

「謝るのなら王妃様かソルトにでは?」

 凄く全うな答えを俺は返したと思う。

「そうではありますが松君様にも多大なるご迷惑を御掛けしましたので謝るのは当たり前です」

 ここでも俺は松君様かよ。

「はぁ、」

 何か思ってたのと違うぞ。
 
 てっきりひどい扱いや嫌みを言われるかと思ったけど全然違う。あっさり謝った。ソルトを見てもソルトもわからないといった感じだった。

 それよりも何故か盛大に歓迎をされ始める。あれよあれよと言う間に豪華な食事が運ばれてきた。そして何かわからないが乾杯をした。

「父上、これは一体どういうことですか。私は大罪を犯した後の身辺報告をしに来ただけです。なぜこんな歓迎のようなことを」

乾杯の手が止まる。

「ようなことではなく歓迎している。ヒマイラ、お前のしたことは城の恥だが罪を償い今は松君様監修の元で側近をしているときいた。王妃様と王の寛大な計らいで魔物送りは無くなり松君様のお陰で牢獄からも出れたと聞く」

「はい。そうです」

「大丈夫だ、それについては皆も承知だ」

 全部知ってるって事か。

 こんなに歓迎されるならわざわざ報告に来なくても良かった気もするが来なきゃわかんなかったと思えば良いか。そうとわかればさっさと報告してナグマで生活するオッケーを貰えばいいんじゃないか?

 俺はソルトをチラッと見た。目が合うと言いたいことに気がついたよう。

「父上まずは私からお話をさせてください。私の犯した罪で皆さんにご迷惑をおかけしました。今もなお肩身の狭い思いをしていると思います。その事に関しては謝っても謝りきれません。今は王の心遣いで刑を変更し調教師様により、罪は償い終えています。今回、報告をしにきたのは今後の事です。罪を犯した恥さらしですが私はナグマ城で今のまま働きたいと思っています」

 みんな神妙な顔してると思ったらひそひそ話し出した。

「何とかならないのか」
「流石にそれは…」
「松君様も…」
「いや、図々しいじゃないか」
「ありだぞ!調教師様だ」

 そんな中ソルトの父が一歩前に出る。

「ヒマイラ、それについてだがお前にはこの城に帰ってきて貰いたい」

「お断りします」

「私達も悪かった。だから、お前には幸せに…」

「体裁でしたらやめてください。それに私なら今幸せです」

「体裁ではないのだ。お前の最大の幸せを考えてだな…」

「父上、ですから私は幸せです」

「それは、仕事での話」

「どういう事ですか?」

「ヒマイラ、用意したのだ!!」

「何をですか」

「お前の伴侶候補だ!!!」

「「は?」」

 ソルトの父親が手を拡げると後ろの分厚いカーテンが一気に落ちた。そこには大小様々な男がズラリと並んでいた。思わず俺は鳥肌が立つ。

 20人ぐらいいるだろうか…

 ソルトも口が開いたままになっていた。どうやらソルトの帰宅と同時にお見合いを結構するつもりらしい。

「つきましては、調教師の松君様に相手を吟味して頂きたい!うちのソルトを正しく導いた調教師様なら目が越えていらっしゃる!間違いないかと!」

 一気に俺に目線が集まるが俺は思わずソルトを肘でコツいた。我にかえったソルトは首をふる。

「父上、何を仰ってるんですか!とら様はその様な事は致しません!今日は報告のみです!」

「いつまでも独り身とはいかん!それにこの城で婚儀を挙げ私に可愛い孫を早く見せて欲しい~!」

「な、な、なんて勝手な!」

「さぁ、どんな人がいいんだ選びなさい!」

「嫌です!」
 
 すると父親が手をパンパンと叩きぞろぞろとソルトの近くにまで寄ってきた。一人の男がソルトに近づき勝手に手を取ろうとした。

 ピシャッ!

「いたッ!何をするんですか!」

「行儀が悪いぞ。誰がソルトに触って良いって許可をだした」

 松はソルトの手を握ろうとした男の手を鞭で叩いた。    
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