社会人が異世界人を拾いました

かぷか

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松編 ③

25 思わぬ方向へ ①

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 【来ました】

 扉からフィグさんのお父さんが入ってきた。固唾を飲んで俺達は見守る。籠の中の河口君は余り動いていないから気がついていないのかそれとも演技しているのか。

 籠に近づき河口君かどうか確かめていた。籠の扉に手を掛けて開けると河口君に手を伸ばした。まさか本当にこんなので引っ掛かるのか?籠の中に閉じ込められるってことは河口君が襲われるかもしれない。

 河口君!!!

 俺は心の中で叫んだ。

「うわー!!離せ!」

「やりました!!やまとさんを助けに行きます!」

 籠に向かうとフィグさんのお父さんは床下から足をつかまれ動けないでいた。クラムさんが籠を外すと床にフィグさんが埋まっていた。

 何これ

「王!やりましたね!」

「クラム早くこいつに縄をかけろ。鎖縄だ」

 手際よくくるくる巻きにされるとお縄ちょうだいれたお父さんが不機嫌にその場に座った。

「クラムさんこの床の穴なんですか」

「これはですね、籠の底に隠れ穴を作って父上様が来たところを隠れていた王が捕まえるという作戦です!これならばやまとさんになにかあってもすぐに助けれますし父上様も捕まえれます!万が一に作っておいた穴が役に立って良かったです」

「そうですか」

 万が一の一が過ぎる…

 俺は横たわる河口君の体をゆさゆさと動かした。

「河口君、河口君。起きて、大丈夫?」

「しまった!寝過ごした!」

「やまと問題ない」

「捕まえる瞬間見たかった~あれ、松君!!どうしたの?ソルトさんも。向こうにいたんじゃないの?」

「皆が心配で様子見に来ちゃった」

「そっか。松君、フィグの勇姿どうだった!!」

 いや、勇姿もなにも穴から手だしただけだし。
 なんなら見えなかった。

「フィグさん自ら入って実行するのがすごいと思ったよ」

「ね!俺、この穴に入ったら出れない」

 相変わらずの河口君で安心した。フィグさんのお父さんは縄に繋がれ何故か物凄く悩んでぶつぶつ独り言をいっている。

「うーん、どちらも捨てがたい。いや、どちらもいい。やまとさんにとら様か…やまとさんの可愛さもあり、とら様のクールな感じもあり。二人を持ち帰り…両脇に迎え…」

「フィグのお父さん!拐わなくても言ってくれれば話しとか家に行きますから!」

「やまとやめろ。そんなことを言うからまたこいつが付け上がる。こいつはただの変態犯罪者だ」

「フィグル、お前はどうしてそんな子に育ったんだ。あんなに優しくて父親孝行だったのに。俺を慕ってくれてたじゃないか」

「いつの話だ」

「2歳ぐらい?」

「「「「……。」」」」

「とりあえず、やまとさんととら様を頂いてだな家で人妻ハーレムを作り…」

「斬ります」
「許可する」

「ちょ、王、ソルトさんもやめてください!」

「なら、お前はビタが狙われたらどうする」

「なに言ってるんですか王、当然斬ります。即斬りです」

「おいおい、俺をそんな風に思っていたのか」

「「「当然」」」

 やれやれ、どうやらフィグさんのお父さんは相当な感じなんだな。

「王、今回は抜かりはないです。魔物送りよりも強力な助っ人を呼んでますから。どうぞ!」

 と扉が開くとフィグさんにどこか似た人が入ってきた。必死で逃げようとしている父親をフィグさんは離さなかった。そして、前に押し出しながらその人に差し出した。

「フィグルよくやった。こいつはこちらで頂いていく」

「直ちに魔物送りにしろ。これで何度目だ」

「わかっている。今回は確実に拘束する。やまとさんまたお騒がせしてしまった。誠に申し訳ない」

「いえいえ、この間は楽しかったですね」

「そう言ってもらえるとこちらもありがたい」

 なんかめちゃくちゃ常識人
 てか、綺麗な人だな

【とら様、あの方は王の母上様でマルベリー様です】

 そうなんだ。フィグさんの見た目はお母さんに全部似たんじゃないかってぐらい綺麗で格好いい人だった。
 フィグさんのお母さんはお父さんの首根っこを掴んだ。何か叫びながらずるずる引きずられ去っていく。

「あー!!思い出した!」

「いつもの手だ気にするな」

「違う違う、マルちゃん聞いて。ヒマイラさんじゃないか?セルサミサの親戚だろ。生きてたの?」

 誰それ、て思ってソルトを見たらソルトは青ざめていた。

「おい、なんで知ってる」

「フィグルの元第一妃候補だろその人。ヒマイラリヒソルトヤーロック(21)趣味は魔石回し。セルサミサの親戚でナグマ城で罪をはたらき永久追放か魔物送りだったはず。こんな所で何を?」

「極秘になってる。それをどこで知った」

「人妻になる候補はチェック済みだ。当然人妻になり次第私と会う運命だったがお前と婚姻しなかったから会えなかった。私の直感はヒマイラさんよりとら様に反応したからすぐ気がつかなかったな~魔物送りかと思ったが生きてたんだな」

「答えになってない」

「フィグル、どういう話だ」

 俺と河口君以外はまずいと言った顔をしていた。特にソルトは動揺していた。俺は紐を手繰り寄せソルトの隣に来て小声で声をかけた。

「ソルト、大丈夫か?」

「……。」

 何も返事をしないソルトが気になる。解決してたとばかり思ったがどうやらソルトを匿っていたに近いみたいだ。

「ヒマイラさんはとら様という方とどういう関係で?」

 俺も答えに悩んでいたら救世主が現れた。

「じゃじゃーん、何を隠そうこの松君は俺の一番の親友なんです!でも、フィグの友達でもあります!でもってソルトさんは松君の側近です!とっても優秀で頼りになるんです!!罪は償ってますから安心してください!魔物送りなんてさせません!」

「お~そうだったんですか。やまとさんの心遣いで魔物送りは免れたんですね。それは寛大な」

「元々そんな大した罪じゃないのに皆が大事にするからさ~ソルトさんを責めないでください!それにソルトさん以外松君を守れないですから!」

 河口君…ありがとう
 
「フィグル、相手の城から永久追放されてるのか?罪をつぐなって生きているとわかれば追放が取り消されるのではないか。ましてや追放者が王妃の友の側近になっているとなれば騒ぎだぞ。説明したのか」

「わかっている。できればこちらで預かりたい」

「なら、皆は黙認か?」

「マルベリー様、向こうの永久追放には条件がありまして。魔物送りか牢獄生活ならば永久追放をしますとの事でした。うちとしては罪を償えば解放する予定でしたが相手がそれで納得いくかわかりませんでした。ソルトさんのためとは言えその条件を飲んでいます。実際は刑は別の方法で既に終わっています。今は松君さん監視の元うちで働いてもらっています。それも黙認でも圧力でもなくソルトさんの実力で側近になって皆も受け入れています。表には出せませんがナグマ城で松君さんの側近を続けて貰いたいと思ってます」

「へー凄いじゃないか。罪人から側近なんてなかなかできないぞ。なぁ、マルちゃん。別に大した事じゃないからいいんじゃないか?相手の城にわからなければ」

「マルちゃんと呼ぶな。ウォルナット、お前の楽観的は今日は役に立つといいたいがそうもいかんぞ。そのソルトの同城出身者のセサミは私とお前の側近だ。あそこに来ている」

 気がつけばさっきからずっと固まっている男がドア付近にいた。

「おい、セルサミサ。セサミ!セサミ!こっちにこい!」

「は、はい!」

「何してる、今の聞いただろ。ヒマイラさんはどうなる?」

 すぐに皆の前に立て膝を着いて頭を下げた。そしてフィグに向かい話をした。

「王、発言を失礼します………申し訳ないのですがこの話はヒマイラ様の家族に通させていただきます。生きていたとわかればこちらで引き取ります。よろしければこのまま連れて帰りたいのですが」

「いきなりだな」

「王に対して不躾です。連れて帰るなどありえません。こちらとしてはソルトさんは必要な方です。いきなり言われても話しは通りません。しかも永久追放したのはそちらです」

「はい。ですが条件を破られたのも事実。無効とまでは言いませんがこちらの条件を少なからず満たしていただきたいです」

「そうやって魔物送りにしようとするからだ」

「大罪者なら当然です」

「それはやまとさんの好意を踏みにじると承知でですか?それに松君さんが刑を執行しているんです。不十分とでも仰りたいと?」

「重々承知致しております。罪を軽くしていただいたのには感謝いたします。ですが、償ったのであれば早々に城にお戻りいただきたいです。生き恥をかくだけですのでナグマ城から連れて帰ります」

「魔物送りになるなら許されない」

「わかっています。王妃様の慈悲は無下には決していたしません。ですが一家の恥さらしをこのままにはできません。一人だけのうのうと王妃様のご友人の側近など許されない」

 フィグやクラムはやはりこうなったかとため息をついた。下を向くソルトにフィグは質問をした。

「ソルト、自分の城に帰りたいか?」
 
「嫌です…」

「なら、決まりだ。こちらで預る」

「ですが……」

「これ以上何を求める」

「……では、ヒマイラ様に話を」

「認める」

 膝をついたままソルトに向きを変えたがソルトは見ようともしなかった。

「ヒマイラ様。あちらの城で静かにお暮らし下さい。きっと父上もそれを望んでいます」

「嫌です…帰りません」

「どうなさったんですか。あれほど素直だったヒマイラ様が帰るのを嫌がるなんて。父上は罪を償って帰れば許してくれるはずです」

「嫌です。永久追放にわざわざ条件をつけたんです。どうせ私を魔物送りにせずともあの城から出られなくするのでしょ」

「それは…そうかもしれませんが外に出たいときは私が取り持ちますから。ご家族と会いたくなければ離れにお住まいになればよろしいではないですか。何か離れられない理由でも?」

「それは……」

 うーん、まるでドラマのシリアスシーンだ。俺も河口君もさっきから話す人話す人の顔を見ている。

 あ、河口君と目があった

 何?何か頷いてるんだけど

 俺、全然わかんない

 挙手をして一歩前に出た河口君

「やまとさん、どうされました?」

「皆さん聞いてください。ソルトさんはナグマ城に来て変わったんです!箱入り息子だったソルトさんは人とあまり関わっていなかったので思い詰めて式にスパイスを与えにきてしまった。ですがこれが転機になったんです!この松君によって世の中を知ったんです!」

「どういう事ですか王妃様」

「罪を犯し懺悔する日々。こんな時に自分に寄り添う人がいてくれたらどうなりますか?」

「心の支えになる…ですか?」

「そう。では、自分の考えを正してくれて新しい世界を見せてくれるとしたら。クラムさんはどうですか?」

「それは一筋の光が見えたように大変嬉しくなります」

「では、罪を犯しても側にいてくれたなら!フィグさんどーぞ!!」

「惚れる」

「正解です!!」

「では、ヒマイラ様は王妃様のご友人の松君様に想いを寄せているいうことですか…」

「違います!!」

「え、今の流れだと…」

「ちっちっち!」

「王妃様…教えてください!」

「いいでしょう。教えましょうセサミ君。片想いだと誰もがお思いでしょう。私も貴方と同じ立場ならそう思います。しかし、ここにいる松君とソルトさんは内緒でいい感じに両思いです!!!ひゃ!」

 歩き語りをしている河口君は内緒をばらしてしまった。結婚って言ってないからいいでしょう的ななんだろうが。

 ほら、俺に目線が集まる………

 はぁ…仕方ない…
 別に結婚ってばれなきゃ良いってことだしな

「あぁ…まぁ、そんな感じ」

「とら様!」

「うっ苦しいぞ」

 そんな発言をした俺にソルトは思いっきり抱きついた。セサミさんの口は開いたまま閉じることはなかった。そして誰よりも興奮しながら話した河口君がこの時いなかったのは勢いで穴に落ちたんだけど気がつくのに時間がかかったのは仕方ない。

「あの~フィグさん~助けて~ここです」
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