社会人が異世界人を拾いました

かぷか

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松編 ③

35 無罪

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 無事にナグマ城に帰ってきた松とソルトはフィグとやまとに報告をしにきていた。

「松君どうだった!」

「河口君…正直鞭が役に立った…」

「おぉー!!それは良かった。これで堂々とソルトさんが表にでれるね!ていっても、松君の側近は変わらないから今までとそんなに変わんないけど。何か疲れてる?」

「大変だった…いろいろ…こいつのせいで……失ったものが多い気がする…」

 紐を持つ手に力が入らない松。隣のソルトを見るといつもの100倍ぐらい明るく幸せそうだった。ニコニコしてるソルトを見てやまとはうまくいったんだと思い良かったなと思った。

「王、やまと様、私の心情が大いに救われました。自城に報告にいけて良かったです。ありがとうございます」

「俺達なにもしてないよ。ね、フィグ」

「あぁ…」

 珍しくフィグはやまとを抱えずソファーで横になっていた。

「フィグさんどうかしたの?凄いぐったりしてますけど」

「仕事しすぎたみたい。ずっと仕事が溜まっててさ、松君達がソルトさんの実家に帰ってる間にクラムさんも休みとってて貰ってたから俺と二人で頑張ったんだよね!」

「そうだったんだ」

 河口君、どう頑張ったんだろう
 あんなげっそりしたフィグさん見たことない


コンコンコン

「はーい」

「やまとさん、失礼してもよろしいですか?」

 声の相手はクラムだった。中に招き入れるとフィグの姿を見て驚いていた。

「松君さんとソルトさんもおいででしたか。丁度良かった。王、本日までお休みを頂きありがとうございました。ゆっくりできましたので明日から…あの…やまとさん王はどうされたのでしょうか?」

「5日間かけて溜まった仕事二人で片付けたんだよね!!皆に迷惑かけたから俺も頑張らないとって思って!!」

 親指をグッと出して達成感たっぷりのやまと。

「そう、ですか。それは助かりました。やまとさんは何のお手伝いを?」

「書類に目を通して良いか悪いかをフィグに判断してもらって俺がフィグの手を借りてサインするみたいな感じ。クラムさんの仕事は3日ぐらいで終わったんだけどクラムさんのお使いの人に他にも仕事ないですかって聞いたら張り切って持ってきてくれた!だからさっきまで仕事してた」

【クラム…それだけじゃない】

【どういうことですか?】

【俺の仮眠中起こして勝手にサインをしたのがいくつか混ざっている。それにもう一度目を通して却下した】

【それはそれは…】

 山のような報告書の一枚を手にし手をかざし書類を確認したクラム。いつもの10倍ぐらい時間がかかったであろう予想はついた。ここにたどり着いた書類はクラムがいつもなら王に通さないようなものも全部含まれていた。中にはやまとへの要望書もあり許可の後に大きく却下のサインがしてあるものもあった。

流石のクラムも量の多さに同情したがなぜこんなにもやまとが元気なのか不思議に思っていたがそういえば、あちらの世界にお邪魔したとき身を粉にして働いていたなというのを思い出していた。
 
「これを全てしたんですか?」

「はい!松君と働いてるときの頃思い出して張り切っちゃったよね!!また、松君と働きたいな~」

「河口君、ありがとう~俺もまた河口君と働きたくなるよ。癒しの河口君がいないから寂しい」
 
「そんなこと言われると照れるな~クラムさん明日からどんどん持ってきて「…却下だ」

 横になりながらおでこに手を当てるフィグ。

「えー」

「まぁまぁ、河口君いきなり張り切ったら続かないからさ。フィグさんにお願いがあって来たんですけど今日はやめといた方がいいですね」

「構わない。俺からも聞きたい事がある。…どうやって…やまとをとめたらいい」

「うーん。河口君は仕事は率先してするタイプでしたから難しいかもですね」

 がっかりするフィグ。

「松君さん、お願いとはなんだ?」

「できたらでいいんですけど、ソルトの犯罪履歴が残っている書類があるなら無くして貰うって事はできませんか?」

「と、とら様!?」

 クラムもフィグも悩んでいるようすだった。やまとは松とソルトの顔をみて察して質問をした。

「そういうのって何か報告書に残ってたりするの?」

「はい、一応全て残っています。どこの牢屋にいつどれぐらいいたかとか。何をして処分がどれぐらいかとかをまとめたものがあります。刑の重さによって管理も違います。ちなみに極刑の部類にはいる者は王の仕事場と私の仕事場の両方で管理しています。閲覧は私以上の位の者でしたらできます」

「へー」 

「ちなみにソルトさんは何の罪になってるの?」

「不法侵入に業務妨害、名誉毀損に一番大きいの国王法違反です。これは王の命や王妃の命に関わるものに対しての罰則です。松君さんが牢屋から出していただいてから刑はずっと保留のままで執行内容は空白のままです」

「結構ありますね」

「そうですね、それぐらいのことでしたのでこういう報告書はきっちり書いています」

「そうですか、なら難しいですね。ソルトだけ特別というわけには流石にいかないですね」

「松君さん、理由を聞いてもいいか?」

「はい。婚儀前に送ったフィグさんの手紙をソルトの父親が故意に渡さなかったんです」

 心当たりのあるフィグ。

「なぜだ」

「ソルトを思って渡さなかったそうです。城に行ったらソルトが惨めになると思ったそうです。もしそれを見ていたら婚儀は邪魔しなかったかもしれません」

「フィグ結婚前にソルトさんに手紙送ったの?」

「あぁ、やまとを会わせようと思った」

「なんで!!」

「会えば断った理由が伝わると思った」

「でもそれって、そういわないとわかんなくない?断られたのに行くって普通は無理かも。それに親心もわからなくもない」

「そうなのか。やまとだから見せたいと思っていたが…良くなかったか」

「とはいえ、手紙を見せなかったのはソルトさんの父上の判断ですし事は起きてしまっていますから難しいですね…」

「ですね。いえ、無理を言ってすみません」

「罪を償いましたってサインはあるの?」

「ありますよ。保留のままですから」

「見せてください!俺が罪完了のサインをします!」

「やまとはその権限がないし、やまとは書けない」

「確かに。じゃあフィグさん今してください」

 そう言われフィグはクラムに頼み書類を持ってくるように頼んた。2枚の書類が並ぶ。

「もう、罪は松君で終わったんだから終わりましたってサインしてください!」

 フィグは体を起こすとやまとを膝に乗せ『完了』とサインをした。

「ありがとうございます」

「あぁ」
「これで書類は完了です」

 七輪を準備するやまと。フィグに火をつけさせると報告書を手に持ちポイっとなかに放り込んだ。

「やまとさん!」

「あれ、燃えない」

 フィグはため息をつくと。七輪から報告書を掴み手の中で魔法を出して破棄した。

「王!」
「フィグさん!」

「やまと、これ以上仕事を増やすな」

「わかった。フィグ、ありがと。ご褒美いる?「いる」

 食いぎみのフィグにやまとは了解と言った。そして七輪に網を付けて何かを置いた。

「何だそれは」

「あたりめ」

「あたりめ?」

「イカの干したやつ、炙って食べると美味しいよ」

「クラムさん間違えて報告書炙ってしまった。お詫びに一番にこれあげる。はい」

「ありがとうございます。いただきます。本当に本当は絶対に絶対ダメですが…むぐむぐ…見なかったことにします。噛めば噛むほど味が…むぐむぐ」

「助かります。はい、次フィグ。お仕事お疲れさまでした」

「あぁ、むぐむぐ。酒が飲みたくなる」

 松とソルトにも渡す。

「河口君、ありがとう。むぐむぐ。久しぶりに食べた」

「やまと様…すみません。感謝してもしきれません。むぐむぐ、とら様、固いですが美味しいです」

「いえいえ。燃やしたのフィグだし。それよりクラムさん、何か松君達に用事があったんじゃないの?」

「そうでした!松君さんとソルトさんにこれを。うちのビタさんからです」

 綺麗な箱を受け取り中身を空けた。すると綺麗に装飾された

「首輪と鞭。格好良くデザインされてる!」
「おぉー松君レアアイテムゲットいいな!格好いい!」

「良かったら付けてください。ささやかですがお祝いだそうです」

「ありがとうございます☆今度あったらビタさんにお礼を言いますね!」
「今度私からもお礼を言いたいです」
 
「あ、じゃあ久しぶりに受け会開くよ。フィグ、俺もアイテム欲しい」

「たくさんある」

「どれ?」

「愛の手助けアイテムがある」

「だからーあれは、アイテムではありません!!」

…………………

 部屋に戻った二人は松の休みが終わるまでナグマで過ごすことにした。

「とら様、ありがとうございました。罪まで無かった事にしていただいて」

「別に。したのは俺じゃない」

「いいえ、本当に感謝しかありません。貴方を好きになって良かったです。いつかとら様の男性嫌いも治るといいですね。と言いたいですが私は邪なので治って貰わない方がいいと思ってしまいます。私以外に心を許してほしくないです。すみません、とら様にはお辛い事なのに」

「俺はどっちでもいい。治っても治らなくても」

「そうなのですか?」

「元々、龍空に襲われそうになってから男性恐怖症になってるから10年以上たつし治らないと思ってるから別に治す必要もないかな」

「そう…だったんですか」

「別に龍空が嫌いとかじゃなくて、、それにこれは言うつもり無かったんだからな」

「はぃ!」

 にこにこするソルトにため息をつく松。
 
「とら様、折角ですからビタさんの下さった首輪を付けてお茶でもいきましょう」

「いいよ」

 歩くと周りからひそひそと声が聞こえてくる。

「おぃ、最強の調教師だ」
「凄いな、鞭を持ち歩いているらしいぞ」
「おぉ~一段と迫力が増したが色気も増した」
「何か言われたい!罵倒されたい!」

 歩きながら松の機嫌が悪くなる。

「とら様、いつの間に二つ名がついてしまったんでしょうか」

「知らん!」

「とら様に罵倒されたいなんて図々しい、許しません。斬ります」

「すぐ斬るな!!」

 ぐっと引っ張り床に手をつけさせた。

「おぉ~!」

「…とら様素敵です」

「お前はもう何もするな!!お前のせいでいろいろ大変になるんだよ!反省しろ!!」

「はぃ☆」
 
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