社会人が異世界人を拾いました

かぷか

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松編 ③

24 戻ります  

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「とら様これが新婚生活だったんですね!!」

 なんなんだこいつの急なテンションの上がり具合は、また龍空が何か教えたな。

「りく様に今の私の状況を説明しましたら、生活状況は新婚生活に近いと仰いました!」

「俺たちの仲が友人だって話してるはずなのになんでそうなるんだよ」

「はぃ、私もそう話したんですがこの雑誌を見てください!」

 ソルトが見せたのは雑誌に載っている『私達の関係チェックシート』だった。質問項目が30問ぐらいありその数に応じて自分がどのタイプなのかわかるみたいな内容だった。これをどうやら龍空とやったらしい。

正直その内容は占いより達が悪くソルトの当てはまるタイプは98%約束された仲で新婚生活と言ってよいといった内容だった。後の2%は男の逃げ道への優しさか。こういうことを書くから勘違いする奴が増えるんだ。

 まぁ、新婚と言われればそうだけど。あんまり意識したことない。

「とら様、ここ見てください!相性100%ですよ!」

「あー良かったな(棒読み)残りの2%はどこいった」

「このページのいいところは助言もあるんです!」

「あーそ」

「ここです!新婚生活だからといって気を抜いてはいけません。とら様とマンネリにならないように気をつけて常にハプニングを心がけましょうと書いてあります!」

「よく読め。新婚生活にからといってだ。あと、どこに俺って書いてあるんだよ」

 すでにハプニングだらけだからこれ以上は勘弁してほしい。

「とら様、ラッキーアイテムは狭い場所ですって!」

「何だよそのラッキーアイテム。狭い場所ってアイテムなのかよ」

「ここではないのですか?」

 失礼な
 やっぱり狭いって思ってたんじゃねぇか

「だったら何だよ」

「ここで…その…」

「しないからな!嫌だ。約束しただろ」

「はぃ…」

 シュンとするがこいつの狙いはわかっている。全く龍空は変なの読ませやがって。

    それにしても全然迎えが来ないけど大丈夫なのか?俺は別にいいけど忘れ去られてるとか?流石にないか。もう1ヶ月はゆうに経ってるし本当に河口君に何かあったんじゃないか心配になってきた。

「ソルト、ナグマから何も連絡ないのか?」

「はぃ、私も心配なところではあります。迎えがくるのだと思っていましたけどそうではないのかもしれません」

「うーん、だとしても何かしら連絡があってもいいと思うんだけど。一回ナグマいってみた方がいいかもな。なんだかんだいって結構たってるし河口君がどうなったか気になる」

「はぃ。ご迷惑お掛けして申し訳ございません」

「いや、俺はいいけどお前も週末以外どこもいけないし体動かしたり稽古とかしたいんじゃないの?」

「そうですね、体の鈍りは気になります。一応トレーニングはしていますが限られた事しかできませんね。とら様、私の部屋でしたら安全だと思いますので一度あちらに帰り城の様子を見て危険なようでしたらとら様のお部屋に戻るというのはいかがでしょうか?」

「そうだな~結局大型連休まであと少しだから連休になるまで連絡なかったら行くか」

「わかりました」

「龍空には俺から連絡しておく」

「はぃ、かしこまりました」

 こうして何の音沙汰もなく大型連休に入った。龍空はソルトが帰ると言ったら怒っていたが仕方ない。何かあればソルトと二人帰ってこればいいし、もしかしたらそのまま連休をナグマで過ごすかもしれないから俺も鞄に荷物をつめていざナグマへ。

「ソルト、行くぞ」

「はぃ」

 二人の移動は初めてだからソルトが俺を抱えて戻ると言った。液体をかけると数秒でソルトの部屋についた。

「とら様、大丈夫ですか?」

「あ、うん。二人でも来れるんだな。てかフィグさんと来てたから抱えなくても良かったんじゃ」

「念のためです」

 まぁ、いいや。 

 ソルトの腕から離れ荷物を置くが特に変わった事は無さそうだけど。ソルトも部屋を隅々まで見渡すが変わり無いと言った。

 一応俺はナグマの服に着替え直した。ソルトもいつもの服になり俺が着替え終るとアイコンタクトをした。

【とら様、部屋を出てからは何があるかわかりません。アイコンタクトをできるだけ使います。それと今からは安全が確認できるまで自由に触れる許可を下さい】

「わかった」

【安心してください。必ずお守りしますから】

 う、こういう時のソルトは格好いいんだよな。
俺は頷くとソルトの指示ですぐ後ろに待機した。ドアを開けようとしたが鍵がかかって開かなかった。外からかけられているようだ。俺もソルトも不思議に思ったがソルトはうちポケットから自分の部屋の鍵を取り出し慎重にドアを開く。顔を少しだけ廊下に覗かせ様子を伺う。

【おかしいです。護衛が見当たりません】

「それっていつもいる人がいないってこと?」

【はぃ、最高位護衛がいるはずなんですが】

「それは、俺が来ないからじゃないの?」

【それもあるかもしれませんが静か過ぎます】

「もしかして城に何かあったとか!?」

【……。だから迎えが来なかったとは考えたくないですが…否定できません。王やクラム様が何者かに倒されるとは思えませんし】

「だけど、河口君を奪還て言ってたから城にはクラムさんだけなんじゃないのか?それか何かフィグさんがいない間にあったとか!?」

【とら様、クラム様に状況を確認しにいきます。何があるかわかりませんのでとら様はあちらの世界に戻ってください】

「俺も行く。役に立たないのはわかってるけど…こんな状況で離れたくない」

「とら様…」

「なるべく足手まといにならないから。頼む」

「足手まといにはなりません。とら様がいるなら心強いです。では、いつものをして下さい」

 ソルトはにっこり笑って俺の我が儘を聞いてくれた。そして、いつもの首輪を付けた。紐はどうするか聞いたらそのままでいいと言ったから俺は紐をしっかり握りソルトと一緒に廊下に出た。

 確かにいつもよりかなり静かだ
 でもって誰もいない

 二人の靴音だけ響く。

【とら様、やはり静か過ぎます】

「うん」

【恐らくクラム様は王の仕事部屋かご自身の仕事部屋のどちらかにいると思いますのでそこに向かいます】

 頷く俺はソルトに案内されながら城の廊下を進む。今の所誰にも会わない。いつもなら一人ぐらいすれ違っても良い筈なのに。窓の外は相変わらず吹雪いていてやっぱりナグマだなと思った。

 まずはクラムさんの仕事部屋に着き軽くノックをするも返事はなく、ノブを捻るが鍵がかかったままだった。人のいる気配がないので次はフィグさんの仕事部屋に。廊下を進むと二人の最高位護衛が廊下に立っていた。ソルトが近づくと二人は驚いていた。

「ソルト様!?」

「な、何故ここに!?しかも松君様まで!?」

「いけません、すぐ部屋に戻って下さい!」

 かなり慌てた様子の二人。

「何があったんですか?クラム様は?」

「いや、今かなり込み入ってて。話してる暇が無いです。とにかく部屋に早く戻って鍵を閉めて下さい」

「まずい、まさかこんな時にお二人が戻られるとは」

「何があったんですか?」

「今から起こるんですよ。時間が。とにかく私はクラム様に連絡を!」

「待って下さい。私が行きますから場所を」

「駄目です。弱ったな」

「とにかく何も言わず部屋に戻って下さい!」

 護衛に背中を押されながらソルトは自分の部屋に戻るよう言われた。俺達は仕方なく来た道を戻る事にした。

「ソルト、やっぱり何かあったみたいだな」

「はぃ、困りました。これから起こるとはなんでしょう。闇雲にクラム様を探したら余計に危ないですから護衛の言う通り一旦もどりましょう」

「わかった」

 部屋に帰る途中に人と出会った。
 ナグマ服ではなさそう。

 こちらに気がつくといきなり何か叫びながら男が両手を広げダッシュで向かって来た。

「ひーとーづーまーーーー!!」

 超こえー!!!

【アイコンタクト】

【斬ります】

 俺はすぐ手の紐を離すと同時ぐらいにソルトがそいつに斬りかかったが男は後ろに下がり避けた。

「いきなり斬りかかってくるとはどういう教育をしているんだフィグルは!まだ、なにもしてないぞ?」

「とら様に近づく者はどんな方であろうと許さない」

「とら様か~初めまして。ナグマ流の挨拶したかっただけですよ」

「気安く名前を呼ばないでもらいたいです。アイコンタクトも禁止です」

「徹底してるな~半信半疑だったから一瞬出遅れてしまったけど悪くない。なかなかいい趣味をおもちですね。ちょっと私のうちに来てお話でもどうですか?」

「貴方には関係の無い人です。それ以上近寄るなら確実に斬ります。どうかお引き取りください。王の父上様」

「え!」

 フィグさんのお父さん!?
 てか、ソルト斬りかかっちゃ駄目だろ!

 打ち首とかにならないのか!?

 俺はすぐソルトの紐を掴み手繰り寄せた。ソルトもそれに気がつくと俺をさっと抱き抱える。

 なんで?

 と思ったけどソルトの顔は真剣だった。

「初めましてとら様。私はフィグルの父で今城にお邪魔してるんだがやまとさんと離れてしまって探してるんだけど見なかったかな?」

【話さないでください】

「この方に話しかけないでください。見ていません。私達も探しています」

「いい~ね~その感じ。じゃあ、一緒に探さない?」

「探しません。どうかお引き取りを」

「そう、堅いこと言わず。んーどっかで君を見たことあるんだけどな~あ、まずい」

 急にさっと居なくなってしまった。姿が消えるとソルトは俺を下ろした。

「い、良いのかよ!フィグさんのお父さん斬りかかって」

「とら様、王の父上様ですが同時に犯罪者です。私が言うのもなんですが罪人が向かってきたら斬ります」

「そういうものなのか…よくわからん。てか、河口君探してた。てことは戻って来てどっかにいるんだ。この事知らせないと」

「そうですね。ただ、居場所がわかりません。探しているということはどこかわからないように王がかくまっている可能性があります」

「さっきの護衛さんに話をしてクラムさんの居場所だけでも聞いたほうが」

「はぃ」

 俺達は急いで護衛に話しをするとクラムさんの場所を教えてくれた。教えられた場所は河口君が挙式をあげた場所だった。

 静まりかえる場所に何やら大きな籠がど真ん中にあった。怪しすぎる。毛布にくるまれた何かが動く。

【なんでしょう】

「さぁ?」

 警戒してみていると急に肩を叩かれた。

「ッ!」

「「クラムさん、様!?」」

 しーっと指ですると裏に連れてこられた。

「お二人共、どうされたんですか?ビックリしました」

「ソルトを迎えに来ないから心配して皆に何かあったんじゃないかって様子を見に来たんです」

「そうでしたか、実は今囮作戦をしてまして」

「あれですか?」

「はい、やまとさんは無事奪還したんですが父上様がもれなく着いてきたようで知らぬ間に城に紛れこんだんです。やまとさんが見つからないとわかると手当たり次第人妻を探し始める被害がでたんです。で、王が民を守る為二日間城内を出入り禁止にしまして今、やまとさんを囮に炙り出そうとしているところです。勿論ビタさんは一番安全な場所にいますので安心してください」

「よく、許しましたねフィグさん」

「はい、前回の事があるんで今回は逃がしたくないと国をあげて捕まえることにしました。父上様は極度の新しい物と人妻好きでして人里離れた場所に隔離していたんですが婚儀に出席後行方不明に。やまと様を拐いに来た後、うまく奪還したと思ったらこの騒ぎです。はぁ…ここにいたるまで他にもいろいろあるんですがそれは長くなりますから。お好きな物の執念深さは王にも通ずるものがありますからやはり親子ですね。変な所が似てます」

 クラムさん相当大変だったんだな、毒がでてきてる。てか、あんなあからさまな罠にかかるのか?

「クラム様。さっき、とら様といる時に父上様と遭遇してしまいました」

「松君さんを見られたんですか!?」

「はい、すみません。偶然出会ってしまいましてすぐに斬りかかったんですが捕らえるまではできませんでした」

「そうですか。無事で良かったです。とにかく、父上様が護衛に誘導されながら来るまで見守ります」

□アイコンタクト〈クラム・ソルト〉□

【部屋に鍵をかけてしまいすみません。実はやまとさんが連れ去られる間にソルトさんのお城の方がいらしてですね刑が本当に執行されているか確認に来たんです。永久追放には条件がありましたから、その条件はご存知の通り魔物送りか永久的に牢獄でと言われていたんですが我々はそうしたくなくてですね】

【はぃ】

【あちら側が今の状況を知れば強制送還しかねない恐れがありまして松君さんの所へ避難させたのです】

【はぃ、ありがとうございます】

【なので、城を自由に動かれるとまずかったんですよ。勿論、帰られたらまた前のようにしようと思ったんですが父上様の問題が長引いてしまいなかなか迎えにいけなかったんなです】

【そうだったんですね。すみません】

【いえ、私も話せれば良かったんですがまさかいきなり父上様がやまとさんを拐いに来るとは思いませんでしたので追い出す形になりすみませんでした】

【いえ、大丈夫です。心遣いありがとうございます】

【それで、向こうの城の方なんですが牢屋にソルトさんの姿がないとわかると納得して帰られましたから安心してください】

【何から何までありがとうございます】

【いえいえ、とんでもない。この事は落ち着いたら王を踏まえ皆で考えましょう】

【はい】
 
「クラム様、とら様が」

「はい、わかっています」

「俺が何?」

「えっと…」

「ソルトさん静かに…来ます」

 何だよ

 いいずらそうにするソルトの袖を俺は引っ張った。なんだよ、気になるじゃんかよ。

【…異世界人と知られないようにしないといけないのと…】

 あぁ~内縁関係知られちゃいけないってことか。頷くとソルトは察したみたいだ。異世界人よりもそっちのほうがよろしくないのか?

【この事は限られた人しか知りませんのでできれば隠せると良いのですが王の父上は物凄い直感で婚儀者かどうかを見抜いてしまわれるので、これ以上他の人に知られるのはまずいです】

 ふーん、ソルトは深刻な顔をしたけど俺は余りピント来なかった。けどこの後さらにハプニングは起き続ける。
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