社会人が異世界人を拾いました

かぷか

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松編 ③

4 松の世界にお邪魔します ④ ソルト

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 朝から呼び鈴が鳴りました。

 昨日ご迷惑をおかけしたのにも関わらずとら様が私の為にベッドを用意してくれました。ナグマより小さめのベッドは体を密着でき最高でした。寝るのが惜しかったぐらいです。今朝起きるととら様がすぐ横にいる安心と昨日から触れれる回数が増えたせいか心も体もすっきりしていました。

あぁ、寝顔も素敵です。
これを独り占めできるなんて…

まだ、寝ていらっしゃるのを起こすのは心苦しいですが…

「とら様、呼び鈴が先ほどから何度かなってますがよろしいのですか?」

「うっ…ん…うるせぇ…勧誘ならソルト斬っていいから…」

「かしこまりました」

 斬ればよろしいのですね。
 ここは狭いですから短剣でなんとかしましょう。
 ドアを開けた瞬間を狙いますかね。

 私は隠しておいた短剣をマットの下から取り出しました。とら様をお守りするには当然です。

そんなとら様は面倒なご様子で体を起こし四角い飾り付けのような箱の前に立つと顔面蒼白になられてました。

「とら様?」

「ソルト、すぐ服きろ!悪いけどその辺片付けて欲しい!」

「はぃ」

 焦った様子のとら様は誰かと会話している様子。私はただ事ではないと思い急いで昨日の状態にしました。

 こんなもんでしょうか?

「とら様できました」

「完璧。助かった!てか、なに剣持ってんだよ!しまえ!今から人入れるけど余計な事は絶対話すな」

「はぃ、かしこまりました」

 この方は招き入れたのち斬ればいいんでしょうかね。気づかれてはいけない感じですね。

「おい!!しまえってそう言う意味じゃねぇ!背中に隠すな!!敵じゃないから、絶対斬るな!」

「すみません」

 怒られてしまいました。
 どうやらお知り合いのようです。

 とら様がドアに手を掛けました。

 あ、とら様が下着姿。

 カチャ。

「遅い!!てか、何で下着姿なんだよ!!」

 履き物を脱ぎ捨てお怒りの様子で勢いよく部屋に入って来られたのはとら様より一回りほど小さいお方。座る私を見て驚いた表情をしていました。

「おい、ちょっと待てって」

「誰この人」

「友達、泊まりに来てる。だからさっさと帰れよ」

「は?何で。俺がこんなに困ってんのに意味わかんない。てか、だから出なかったのか。メーター回ってるのに出ないから居留守使ったかと思ってムカついてた」

「お前か…家に来たの。下向いててわかんなかったわ」

「見たら開けてくれないだろ」

「当たり前だ。帰れよ。疲れる」

 何やら言い争っているご様子
 もめ事があったのでしょうか?

「てか、俺も泊めて」

「は!?ふざけんな!お前自分のアパートあるだろ!帰れよ!」

「何だよ!可愛い弟が兄を頼って何が悪いんだよ!友達が良いっていったら泊まるから!」

 ああ~とら様の弟君でしたか。通りで節々に似ていらっしゃる所があると思いました。

「ねぇ、そこの友達、名前、なんですか?」

「おい!」

「虎の友達は俺も友達だろ!やまと君以外に泊める人いたんだ」

 やまと様ともお知り合いなのですね。ここはしっかりと挨拶をしなけれなばなりませんね。とら様のご親族、失礼の無いようにしなければ。

「初めまして。ヒマイラリヒソルトヤーロック21歳です。趣味は魔……」
「だーー!!!!」

「虎、大声出すなよ。ひまいら?なに、よくわかんなかった」

「こいつは、比舞そうたでロックが好きな21歳」

「誰がですか?」

「お前だよ、お前!」

 どうやらこちらでは本名ではなくそう名乗らねばならないようです。

「へー比舞そうたさん。21歳なんだ。俺と同い年。なら敬語無しでいいよね。宜しく~俺、竹虎の弟の龍空りく。なに知り合い?会社の人…じゃないよね。髪の色もそんなだし学生?どこ大学?」

「お前勝手に、ソル…そうたも困ってるから帰れよ。それになに繋がりなんてどうでもいいだろ」

「やだね、泊めてくれるまで帰らない。で、そうたはどこで知り合ったの?」

 あ、私の事ですね。

 困りました、とら様には余計な事は話すなと言われたのですがまさか自分の名前もご紹介に差し障りがあるとは思いませんでした。それにとら様はご友人として紹介されましたのでそれに従います。きっとナグマ国や職業も話してはいけないですね。

 とら様を見ると首を振られております。

 う~ん、こんな時アイコンタクトができると便利なんですが困りました。どう説明したらよろしいのでしょうか。

「えっと、婚姻の席で会ったといいましょうか…」

「へー!」

「おい、龍空いい加減にしろ。お前の話聞いてやるから」

「え~わかった。じゃあ、お茶」

「んとにお前は。それ飲んで話したら帰れよ」

「やだ、けどとりあえず話す」

 私は端に避けて壁際にずれると腰掛けました。りく様ととら様は向かい合いに座られました。ご相談ならば私が聞いてもよろしいのか迷いましたが退席してもいく場所がないので申し訳ないですが相席させていただきました。

「またフラれた」

「だと思った」

「なんだよ!今度の理由は俺じゃないからな!」

「じゃあ、なんだよ」

「俺が他の奴と話してただけなのにフラれた」

「お前じゃん」

「違う!連絡とってご飯行っただけだし。本命に優しくしてた。けど、ちょっと別の奴と軽く挨拶しただけなのに」

「お前の挨拶は挨拶じゃないだろ」

「バレずにした」

「バレてるからフラれたんだろ。お前の挨拶は浮気って言うんだよ。そいつが誰かにお前との関係を話したんだろ」

「えー相手が話したかもしれないって事?絶対秘密にするって言ったのに。裏切り者だ」

「裏切り者はお前だ。反省しろ」

 相談内容はどうやら恋のもつれのようでした。別れを切り出されたりく様は納得がいかない様子。お付き合い中の挨拶が原因のようです。どのような挨拶を交わしたのかはわかりませんが文化の違いは気を付けなければならないですね。お付き合い段階で他の方としてはいけない事があるのはナグマと同じです。口づけはその一つですがしてはならない行動が他にまだありそうですから注意深く観察してご迷惑をかけないようにしなければ。

「なんだよ、虎だって適当に付き合ってるだろ。俺も虎みたいに適当がいい。絶対、俺は虎の影響受けてる。責任とって」

 とら様が私を見ましたがどうしたんでしょうか?

「俺はいいんだよ。社会人になって卒業したから。てか、話し済んだなら帰れよ。俺らまだする事あるから忙しい」

「卒業したなんて嘘だね。いろんな奴といただろ。やだね帰らない。ねぇ、そうたはどう思う?俺が悪い?フラれたの可哀想じゃない?」

 うーん、私の意見を話しても良いのでしょうか?どちらが悪いかどうかまではわかりかねます…ただ、別れを告げられる痛みはわかります。

「好きな人から別れを告げられるのはとても苦しいです。ずっと心に残ってしまいますから。りくさんが抱える悩みを軽減できたらいいのですが…あまり私も経験が無いので安易に意見は言えないです。良い方が見つかるといいのですが」

「ちょっ、虎。そうた本当に21?堅い。真面目。つまんない」

「すみません…」

「そうた、謝らなくていい。そうたはこれでいい。てか、マジで帰れよ。あと、謝るのはお前だ。そうたに謝れ」

「なんだよ、フラれた傷を癒しに来たのに!いいよ!帰るよ!バカ!虎のバカ!!」

 機嫌を損ねてしまったりく様は立ち上がりドアから出ていってしまわれました。

「あ、りくさん、待って下さい!」

「いい。ほっとけば」

「すみません、とら様に余計な事を言うなと言われたのに」

「ソルトは悪くない。龍空が悪い。あいつはいつも自分勝手で思い通りにいかないとああやって癇癪を起こして逃げるんだよ。はぁ…我が儘なんだ昔から。フラれると俺の所に来ては自分は悪くないって言って帰るんだよ」

「そうですか…ですがとら様を頼って来られたのでは?」

「さぁな、聞いて欲しいだけな気がする。次の日にはけろっとしてるから気にするな」

 とら様にそう言われましたが少し気になってしまいました。そしてその気になる思いがとんでもない事に発展してしまいました。 
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