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松編 ③
2 松の世界へお邪魔します ②
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今日も結局仕事が遅くなった。
てか日中、仕事が手につかない。
大人しくしてるとは思うけど…あいつが部屋で何してるか気になってしかたない。河口君がため息ついてたりしてたのが良くわかる。フィグさんとソルトどっちが大変かで言ったらフィグさんの方な気がするが…やっぱどっちもどっちか。
だけど、思ったより大人しくしてるきがする。できればゆっくり話とか説明とかしてやりたいけど疲れてそれどころじゃないし圧倒的に時間が足りない。
アパートの窓を確認すると今日は部屋に電気がついてる。
「ただいま~遅くなった」
「とら様!お疲れ様です」
とりあえずご飯も食べてるみたいだし、睡眠もとってるっぽいな。
「変わった事は?」
「はぃ、特には。呼び鈴が何度かなりましたが出てませんでした」
「そっか、それでいい」
勧誘かな。
「とら様、」
「ん?」
「えっと、その…」
「なんだよ、何かあった?」
「お仕事忙しいですか?」
「あ、うーん。まぁ週末までこんな感じ」
「そうですか。お疲れ様です。本日も私に構わず体を休めてください」
??
「あーうん。暇なら何か用意するけど、あ、」
松は何かを思い出してクローゼットの中から見なくなった雑誌を引っ張り出してきた。
「何ですか?」
「雑誌。読み物。字はわかんないかもだけど写真見るぐらいはできるはず。ただのファッション雑誌みたいなやつだからこっちがこんな感じってやつの一部」
「そうですか、ありがとうございます。参考にさせていただきます」
とりあえずソルトに雑誌を渡しこちらの世界に少しでも慣れてもらおうと思った。
そしてまたすぐ仕事の時間になる松はソルトに見送られながら出ていった。
朝、松を見送ったソルトは寝ずに窓の外を覗く。昨日用意された雑誌には手をつけれなかった。なぜならこれ以上の情報を頭に入れる余裕がなかったからだ。
「こんな世界に私が一人なんて…」
………………………
「松永さん、張り切ってますね」
「いや、張り切ってるわけじゃないんです。どうしても早く仕事を終わらせたい理由がありまして。ただ、この量は流石に今日も時間がかかりそうです」
「今週はしかたないですよ~来週、食事でもいきません?」
「あー見通しつかないんでまた今度で」
いや、俺はそんな会話してんのも惜しいんだよ。早く帰ってソルトをみてやんないと。
と思いつつ時間ばかり過ぎて週末まで仕事に追われる松。大した会話もできぬまま金曜日の夜を迎えた。荷物を抱えて帰宅した松は箱を開けソルトに合わせた。
「ソルト、着てみて」
「はぃ」
「サイズ良さそう?」
「はぃ、大丈夫だと思います。ありがとうございます」
「よかった、やっと週末だしそれ着てどっか出かけるか」
「……はぃ」
こっちに来て外に出せず籠りっぱなしもきついよな。少し元気無いみたいだし気分転換しながら話でもするか。
この時松はソルトの異変に気がつけず後で後悔するのだった。
次の日、ようやく松が休みになり待ちに待った二人の時間がとれる。戸締まりをして部屋を出る松の後ろをついていく。初めて異世界の外にでたソルトは部屋にいるよりもかなり大きい生活音だなと思った。そして週末の街並みは人で溢れていた。ナグマとは違い外の日差しが暑く感じた。
「そんなに遠くいく予定はないけどとりあえず昼ごはん食べにいくか」
「はぃ、とら様」
「ソルト"様"は無しな。こっちでは滅多に使わないら。スゲー痛い奴感でるから」
「はぃ、、ではなんとお呼びすれば」
「呼び捨てでいい」
「ですが…」
「いいから、てか呼び捨てがいい」
「では……と…とら」
「うん。それでいい。行くぞ」
「はぃ」
適当な店に入るも人、人、人。並びながらやっと座るも見慣れない字。メニュー写真を見るも何が食べれるかわからず松と同じ物を頼む。余り食欲が湧かず一口食べて飲み物だけ飲む。
「ソルト、お腹減ってない?それとも食べれない?」
「はぃ、すみません」
「いいよ、もしかしたら疲れた?今日はこれで帰るか」
「ですが…」
「無理する理由もないだろ。明日も休みだし」
「はぃ、すみません…」
早々に店を出て来た道を戻る。
やはり周りは騒音に人混み。
「…ルト…ソルト…おい!」
腕を掴まれハッとした。
「は、はぃ。どうされました?」
「お前こそ大丈夫か?全然返事しないから」
「あ、はぃ。大丈夫です。何でしたか?」
「いや、足りないもの買いたいからアパート帰るついでに買い出ししたいけど、辞めとくか」
「あ、いえ。大丈夫です」
「なら、いいけど…」
道を歩くが歩けど歩けど足が重く松と離れる。
(足が鉛のように重い…とら様についていかなければ。あ、待って下さい。待って…置いてかないでください…一人にしないでください)
先に行く松に声をかけようとしたがその声も騒音にかき消されてしまう。見失い置いていかれ急に目の前が暗くなった。頭がぐらりと揺れ地面に倒れると思った時に前から体を支えられた。
「やっぱ、無理してただろ」
「………」
「ふぅ…早くいえよ」
実際は松は置いていった訳ではなく返事が無いソルトの横に並んで様子を見ながら歩いていた。フラフラと前に進むソルトを声を掛けて止めたが先に進んでいく。体が前のめりになり危ないと思って急いで前に回り込み支えたのだった。近くの人にタクシーを頼みソルトを後部座席に乗せ車を走らせてもらった。どれぐらい経ったかわからないがソルトもようやく気がつき起き上がる。
「もうちょいで着くから、休んでろよ」
「はぃ、すみません」
振動が無くなり着いた場所はアパートではなかった。周りを見渡すと森のような場所。人はいるがまばらで街中のような騒音はなく静かだった。
「とら様、ここは?」
「公園、イカ公園って言って何ていうかみんなの憩いの場所みたいなそんな感じ。もしソルトが起きなかったら俺のアパート2階だからさすがにお前おぶって部屋まで行けないから気がつくまで公園で休ませようと思って」
「お手数かけました。もう大丈夫です」
松はため息をついて手首を掴むと人気の少ない日陰の涼しい場所まで引っ張って行った。木陰にソルトを座らせ動くなと言って松は走ってどこかへ行ってしまった。また、一人になってしまったと思うも動く気力もなくソルトは大人しく木にもたれ掛かりぼーっと松の小さくなる後ろ姿を見ていた。いつの間にか閉じた目を覚まさせたのは頬に当たる冷たいペットボトル。
「飲めよ、水だから。水ならナグマにもあるし飲めるだろ」
「はぃ、ありがとうございます」
蓋を開けてソルトに手渡し一口飲むのを見ると松も自分の水を飲んで隣に座った。無言が続いていた。松は隣にいるソルトを見たがまだ顔色が悪そうだった。座るより横にさせたほうがいいと思いどうするか考えた。
「ソルト、ここに横になれよ」
松は自分の膝上に頭を乗せるように言った。
「で、ですが、あの」
松は苛立ち頭を無理やり自分に来るよう倒した。それでも起き上がろうとしたソルトの顔を見て言う。
「これ以上心配かけるな」
ソルトは「はぃ」と小さく返事をして大人しく甘えた。目を閉じ力を抜くソルトを見て松は安心したのだった。
てか日中、仕事が手につかない。
大人しくしてるとは思うけど…あいつが部屋で何してるか気になってしかたない。河口君がため息ついてたりしてたのが良くわかる。フィグさんとソルトどっちが大変かで言ったらフィグさんの方な気がするが…やっぱどっちもどっちか。
だけど、思ったより大人しくしてるきがする。できればゆっくり話とか説明とかしてやりたいけど疲れてそれどころじゃないし圧倒的に時間が足りない。
アパートの窓を確認すると今日は部屋に電気がついてる。
「ただいま~遅くなった」
「とら様!お疲れ様です」
とりあえずご飯も食べてるみたいだし、睡眠もとってるっぽいな。
「変わった事は?」
「はぃ、特には。呼び鈴が何度かなりましたが出てませんでした」
「そっか、それでいい」
勧誘かな。
「とら様、」
「ん?」
「えっと、その…」
「なんだよ、何かあった?」
「お仕事忙しいですか?」
「あ、うーん。まぁ週末までこんな感じ」
「そうですか。お疲れ様です。本日も私に構わず体を休めてください」
??
「あーうん。暇なら何か用意するけど、あ、」
松は何かを思い出してクローゼットの中から見なくなった雑誌を引っ張り出してきた。
「何ですか?」
「雑誌。読み物。字はわかんないかもだけど写真見るぐらいはできるはず。ただのファッション雑誌みたいなやつだからこっちがこんな感じってやつの一部」
「そうですか、ありがとうございます。参考にさせていただきます」
とりあえずソルトに雑誌を渡しこちらの世界に少しでも慣れてもらおうと思った。
そしてまたすぐ仕事の時間になる松はソルトに見送られながら出ていった。
朝、松を見送ったソルトは寝ずに窓の外を覗く。昨日用意された雑誌には手をつけれなかった。なぜならこれ以上の情報を頭に入れる余裕がなかったからだ。
「こんな世界に私が一人なんて…」
………………………
「松永さん、張り切ってますね」
「いや、張り切ってるわけじゃないんです。どうしても早く仕事を終わらせたい理由がありまして。ただ、この量は流石に今日も時間がかかりそうです」
「今週はしかたないですよ~来週、食事でもいきません?」
「あー見通しつかないんでまた今度で」
いや、俺はそんな会話してんのも惜しいんだよ。早く帰ってソルトをみてやんないと。
と思いつつ時間ばかり過ぎて週末まで仕事に追われる松。大した会話もできぬまま金曜日の夜を迎えた。荷物を抱えて帰宅した松は箱を開けソルトに合わせた。
「ソルト、着てみて」
「はぃ」
「サイズ良さそう?」
「はぃ、大丈夫だと思います。ありがとうございます」
「よかった、やっと週末だしそれ着てどっか出かけるか」
「……はぃ」
こっちに来て外に出せず籠りっぱなしもきついよな。少し元気無いみたいだし気分転換しながら話でもするか。
この時松はソルトの異変に気がつけず後で後悔するのだった。
次の日、ようやく松が休みになり待ちに待った二人の時間がとれる。戸締まりをして部屋を出る松の後ろをついていく。初めて異世界の外にでたソルトは部屋にいるよりもかなり大きい生活音だなと思った。そして週末の街並みは人で溢れていた。ナグマとは違い外の日差しが暑く感じた。
「そんなに遠くいく予定はないけどとりあえず昼ごはん食べにいくか」
「はぃ、とら様」
「ソルト"様"は無しな。こっちでは滅多に使わないら。スゲー痛い奴感でるから」
「はぃ、、ではなんとお呼びすれば」
「呼び捨てでいい」
「ですが…」
「いいから、てか呼び捨てがいい」
「では……と…とら」
「うん。それでいい。行くぞ」
「はぃ」
適当な店に入るも人、人、人。並びながらやっと座るも見慣れない字。メニュー写真を見るも何が食べれるかわからず松と同じ物を頼む。余り食欲が湧かず一口食べて飲み物だけ飲む。
「ソルト、お腹減ってない?それとも食べれない?」
「はぃ、すみません」
「いいよ、もしかしたら疲れた?今日はこれで帰るか」
「ですが…」
「無理する理由もないだろ。明日も休みだし」
「はぃ、すみません…」
早々に店を出て来た道を戻る。
やはり周りは騒音に人混み。
「…ルト…ソルト…おい!」
腕を掴まれハッとした。
「は、はぃ。どうされました?」
「お前こそ大丈夫か?全然返事しないから」
「あ、はぃ。大丈夫です。何でしたか?」
「いや、足りないもの買いたいからアパート帰るついでに買い出ししたいけど、辞めとくか」
「あ、いえ。大丈夫です」
「なら、いいけど…」
道を歩くが歩けど歩けど足が重く松と離れる。
(足が鉛のように重い…とら様についていかなければ。あ、待って下さい。待って…置いてかないでください…一人にしないでください)
先に行く松に声をかけようとしたがその声も騒音にかき消されてしまう。見失い置いていかれ急に目の前が暗くなった。頭がぐらりと揺れ地面に倒れると思った時に前から体を支えられた。
「やっぱ、無理してただろ」
「………」
「ふぅ…早くいえよ」
実際は松は置いていった訳ではなく返事が無いソルトの横に並んで様子を見ながら歩いていた。フラフラと前に進むソルトを声を掛けて止めたが先に進んでいく。体が前のめりになり危ないと思って急いで前に回り込み支えたのだった。近くの人にタクシーを頼みソルトを後部座席に乗せ車を走らせてもらった。どれぐらい経ったかわからないがソルトもようやく気がつき起き上がる。
「もうちょいで着くから、休んでろよ」
「はぃ、すみません」
振動が無くなり着いた場所はアパートではなかった。周りを見渡すと森のような場所。人はいるがまばらで街中のような騒音はなく静かだった。
「とら様、ここは?」
「公園、イカ公園って言って何ていうかみんなの憩いの場所みたいなそんな感じ。もしソルトが起きなかったら俺のアパート2階だからさすがにお前おぶって部屋まで行けないから気がつくまで公園で休ませようと思って」
「お手数かけました。もう大丈夫です」
松はため息をついて手首を掴むと人気の少ない日陰の涼しい場所まで引っ張って行った。木陰にソルトを座らせ動くなと言って松は走ってどこかへ行ってしまった。また、一人になってしまったと思うも動く気力もなくソルトは大人しく木にもたれ掛かりぼーっと松の小さくなる後ろ姿を見ていた。いつの間にか閉じた目を覚まさせたのは頬に当たる冷たいペットボトル。
「飲めよ、水だから。水ならナグマにもあるし飲めるだろ」
「はぃ、ありがとうございます」
蓋を開けてソルトに手渡し一口飲むのを見ると松も自分の水を飲んで隣に座った。無言が続いていた。松は隣にいるソルトを見たがまだ顔色が悪そうだった。座るより横にさせたほうがいいと思いどうするか考えた。
「ソルト、ここに横になれよ」
松は自分の膝上に頭を乗せるように言った。
「で、ですが、あの」
松は苛立ち頭を無理やり自分に来るよう倒した。それでも起き上がろうとしたソルトの顔を見て言う。
「これ以上心配かけるな」
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