社会人が異世界人を拾いました

かぷか

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松編 ③

16 松 ⑤

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 今までと同じように仕事に打ち込み休みには好きな事をして過ごした。意外にも自分が思っていたより異世界生活の穴を上手く埋めれている事からやはり早めに手を打って良かったと思っていた。

 距離を置いたことにより冷静さを取り戻したがいろいろ引っ掛かっていたことはあった。

 まず俺、なに抱かれてんの?
 相手は男だぞ

 嫌だったんじゃなかったのかよ
 気持ち悪いんじゃなかったのか

 100歩譲ってソルトだったから許せたとして何でソルトならいいんだよ。あいつは重いし付き合ったらめちゃくちゃ大変だ。もし女に変身したとしてもかなり面倒。

 はぁ…

 次。

 ……なんで、あいつはキスを避けたんだ

 俺が好きだったんじゃないのかよ
 あの場では自然な…キスだったと俺は思う

 すると思ってた
 
 俺は告白せずにソルトにフラれた感でいっぱいだった。ヤバい俺、凄い傷ついてる。キスできなかっただけで、避けられただけでこんなに人って傷つくのかよ。

 はぁ… 

 時間がたつにつれて冷静さは保てたがあっちの世界での出来事を考えるようになっていた。そんな時だった。

「虎!またフラれた」

「またか…お前、真面目に付き合えばいいのに」

「真面目にって何を。本能に従っただけだし虎が悪いし」

「何がだよ」

「俺がこうなったの虎のせいじゃん」

「俺のせいにすんなよ。何もしてない」

「何もしないからだろ?だから、俺は…虎が」

「龍空、帰れよ」

「何だよ、久しぶりに来たのに!最近いないから心配したのに!俺の気持ちをいつも下げやがって!」

「別に、俺にもプライベートはあるだろ」

「虎だっていっつも本気で付き合わないくせに!嘘ばっか!嘘で付き合ってるくせに!!ビビってばっかり!!知らね!」

「龍空!いい加減に」

 バタンと扉を閉めて出ていく。

 はぁ~まただ
 あいつはいっつもああだ

 ああ…一気にストレスが溜まる
 お酒飲みたいけど明日仕事だ…

 寝れない…

 ………。

「1時か………今なら寝てるよな」

 瓶を使い俺はソルトの部屋に行った。なんでかって聞かれるとわからない。何か行きたかった、ただそれだけ。

久しぶりに来た部屋は何も変わっていなかった。灯りは消えていてソルトがベッドで寝ていた。深い眠りで起きる事は無さそう。近くの椅子に座って考えた。

 はぁ…結局ここに来てる…

 俺は何がしたいんだろう。突き放して逃げるようにこっちに帰って来たのに。仕事も順調で前と変わらないのに……関わらないんじゃなかったのかよ。気にしてなかったんじゃないのかよ。

 そんな自問自答をしながら寝顔を見ていた。

 俺のナグマへ着いた時の行動はまずは男が近くにいないか確かめる。それから、近づきそうな相手や護衛のいる場所はなんとなくわかるので覚えて避けている。だけどここ最近ナグマへ行くとそれを気にしていなかった。だから、ソルトを迎えに行っても良いって普通に行動したんだ。

 俺にとっては誰にもばれないように男を避ける方法は自然な行動なんだけどなんで警戒しなかったんだ。
  
 ん、ちょっとまてよ

 もしナグマでの俺の行動にソルトが気が付いていたとしたら。いつも俺の行き先を微妙に修正していたのは男から近づけないためとか?俺の最高位護衛は毎回同じ人な気がする。

怖いなら怖いと言って助けを求めろと言ったのはアドベに対してではなく俺の男嫌いに対して言ってたんじゃないか?もしかして、男嫌いの解決方法を探してくれようとしてたとか。

 待て待て待て

 俺がいく行動範囲はいつも大勢が集まる場所は行かない。大きな食堂や広場やカフェはやんわり断られたりする。でも、河口君は俺よりも遥かに危険な立場なのに食堂にもいってるし大勢な人と話しをした話も聞いた。フィグさんがいるって言うのもあるかもしれないけどそれだけで?

よく考えたら河口くんよりも制限が多い気がする。そう言えばソルベさんやライムさんの着ている服の護衛とは一度も会話したことない。

 マジか……

 今頃気がついた
 ソルトが全部それから身を守ってくれてたから警戒しなくてすんでたとか…

 だとしたら、俺最低じゃん

 俺は手を払いのけあいつの弱点に付け込み襲わせて傷つけたんじゃないか。

 あの時ソルトがいなかったら俺は何されてたかわからない。こうやって俺をナグマで守れるよう日々稽古して努力してた。それ以外にも俺が安全にいられるためにしてくれてたのか。

 俺に好意を抱くソルトが初めは苦手だったが従順なこいつは俺が嫌な行動を注意すると次は直してくれていた。そんなこいつと一緒にいるのが楽だと感じ始めた俺はソルトを利用して遊んでいた。深く足を突っ込まなければ大丈夫だと思ってた。

 アドベの一件は本気の本気で心配したソルトは多分俺に男性恐怖症の事を話して欲しかったんだと思う。

 別に隠していたわけじゃないけど知られたいとも思ってなかったから言いたくなかった。

 俺は大したことじゃないと自分のなかで解決していた。だけどあいつはそれは解決じゃないと自覚させるために迫った。実際ナグマではそれを話しておいた方が良かったんだなと後から思ったけどそこまで重要視していなかった俺にはただただ癇に触っただけだった。

 俺よりも俺の事を理解して心配するあいつ。

 深入りしたらいけないと思って帰ってきたはずだけど時間がたつに連れて本心が浮き出てくる。

 ソルトと頬を軽く触れた。

「マジか…お前…」

 頬から口に手を当てると自然と顔が赤くなった。何かヤバいと思って直ぐに瓶を使い俺は部屋に戻った。

 部屋に帰ってもドキドキは止まらなくて俺の何かのスイッチが入りっぱなしになった。鏡は見てないが顔が赤いのは見なくてもわかった。

 それから深夜になるとたまにソルトの部屋を訪れた。少しだけ顔を見て帰るを繰り返す。そのうちにソルトの体には一つ傷が治ったと思うと今度はまた別の場所に新しい痣がいくつかできていた。自分が会いに行く回数が減ったのにも関わらず稽古を怠らないソルト。

「ヤバい…もう無理だ」
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