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松編 ③
13 松 ③
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それから何日か経ったある日、余った有給を使えと会社に言われ急に休みを取ることになった。何もする事がなくてソルトに会いに行く。ナグマに急に来たから部屋に着くもソルトの姿はなかった。
仕事をしてるんだろうと思い俺は部屋のドアを開け、廊下から顔を覗かせ離れた場所にいる護衛さんに声をかけた。
呼び掛けると護衛さんは他の最高位護衛が来るまでこちらの世界の服に着替え部屋で待機をして欲しいと言った。着替え終わって一息ついたぐらいでノックをされ二人の最高位護衛が来てくれた。
「あれ、ソルトは?」
「はい、今は離れた場所にいまして直ぐにこちらに向かうとの事です。迎えに行くまで部屋で待機していて欲しいと仰られました」
「仕事?」
「いえ、稽古場です」
「へー途中まで進んだら駄目ですか?」
「ソルト様が着くまでは…」
「部屋にいても暇なんで」
最高位護衛は悩んだが必ずソルトとすれ違う場所迄ならと承知した。待ってるの退屈だった俺は護衛さんと一緒にソルトを迎えに行く事にした。
「松君様、ソルト様は側近になられて更に強くなりました。今も松君様の為に稽古をしていらっしゃいます」
「へー」
「クラム様の次に強いのは間違いなくソルト様です。王もそれを見込み松君様を側近に任命されましたので。我々も努力していますがソルト様ほど努力をされている方はいないです」
「松君様の側近となられた時は皆が納得していました。ですが、ソルト様はあまり喜ばれた様子ではなかったので尋ねた所『とら様を守る通過点でしかないですから』と仰いました。大罪を犯したとはいえ、皆が実力を認めているのに傲らず誰よりも松君様を守ろうと日々稽古を重ねていらっしゃいます。今度、ぜひその様子を見にきてください」
「わかりました。機会があったら行きます」
そんな事を言われ見に行った時のソルトの気持ちが手に取るように想像できてしまった。あいつが喜ばないわけない。いつも俺はそれを否定するんだが俺は何でいつも素直にそうだと言えないだろうとも思う。事、ソルトに関しては余計。
そんな事を考えていたら護衛が足を止めた。
「おお!!これは運命!」
おっと、この声はよろしくない。
ずっと前にお茶を断った成金。
ソルトに話すなとあの時教えられたが今回は流石に無視はできないよなと思ったら護衛がすぐ俺を守った。
「王から彼には誰一人近付けてはならないと言われている。お引き取り下さい」
「随分ですね。以前機会があればと言われましたのでそれが今ですよ」
うわ、覚えてた。
「松君様…本当ですか?」
一人の護衛が小声で話してきたがハッキリ言ってそんなわけない。
「いえ。社交辞令です。全くお茶したくないです」
「ですよね」
「下がれ!!三王の友好の為、手荒な真似はしたくない!」
「駄目ですか~ソルベ王と私は親族ですよ。このままでは私は恥かきですが仕方ない。今回も挨拶の握手だけにします」
護衛は道を開けなかった。一人は槍を構え近づけないようにし、もう一人は俺を守りながら引きさがらせる。しかし、向こうの護衛も引き下がらない。2対2の攻防になり揉み合いをしている間に後ろから別のアドベ護衛が俺を捕らえた。
「ちょっ、何すんだよ!」
その言葉に護衛はすぐアドベの護衛を捕獲し駆け寄るも間に合わず俺は連れ去られてしまった。
「緊急!!アドベを捕まえろ!!」
魔法で緊急音を鳴らすとすぐに何人か集まってきた。その中にソルトも。
「ソルト様!!すみません!松君様がアドベに拐われました!」
「わかりました、王とクラム様にすぐ報告を。他の者は城内封鎖をお願いします。私はとら様を探します」
そう言うとソルトは瞬く間に消えた。
………………………
誘拐なんて初めてされた。
主人公は河口君なのに…主人公がされるっぽいことされてるとか。
こいつ、俺はフィグさんの友人って事になってんのに拐うとか命しらずだな。
「あの…俺、どうなるんですか?」
「すみません、こちらとしてはお茶をしたかっただけなんですが融通がきかないそちらの護衛に少し苛立ってしまいまして」
「じゃあ、お茶するから下ろしてください」
「それは難しいですね」
「なら、俺はどーなんだよ」
「ああ、こうなります」
担がれた体がぐるんと反転すると腕を押さえられ服を思い切り破られた。いくらおっさんだといえナグマ国のやつ。力は強いしガタイもいい。
「意味わかんね」
「ふふふ、そうですか。貴方、もしかしたら異世界の方とか?」
「違うけど」
「王妃様は大層愛らしいと聞きました。もしや、そのご友人ではと思いまして」
なんでバレた?
「歩いているだけで異世界人は我々の気を惹こうとすると聞きました。私、この間ピンときたんですよ。王妃様はあの王が離さないともっぱらの噂でして。王妃でないならそのご友人ではと。貴方は何処か違う。それに、アイコンタクトがあれば護衛とひそひそと話すなどないですから。つまり、アイコンタクトができない方…異世界人」
単純な発想だが間違ってない。
「違うってば」
「ならばこれは読めますか?」
文字が写るがさっぱりわからなかった。
「読む必要あるの?」
「ええ、ありましたよ。なぜなら今は助けてと書きましたから。大声で読めば誰か来ていたかもしれません。やはり、読めなかった。私の所へ来ていただければ生涯可愛がってさしあげます。異世界人は官能的だと聞きましたから」
キモ。
てか、河口君の淫乱が異世界人イコールになってる!俺は違うからな!
クソ、命綱はあれしかない。肌に離さず着けているから気がつくはず。それまで時間稼ぎしたい。
「てことは、俺とやりたくて拐った感じ?」
「ははは、これはハッキリとしていていい」
「何でもいいけど離してくんない?それにお前、俺のソルトなめすぎ」
「ソルト?ああ、いなかった奴か。たかだか護衛1人が来た所でこちらにはまだ護衛はいる」
そう言うともう二人護衛が現れた。アドベは護衛に俺の腕を持つように言った。こいつだけなら逃げれる可能性あるかもって思ったが護衛つきなら無理っぽいな。やっぱり時間稼ぎぐらいしかできない。
「間違えるなよ。ソルトは側近だ」
「ほう、昇格したと。おめでとうといいたいですが本人はいませんね。それにしても貴方を助けれない側近とは大した側近です。ダーシャル王もなんとも間抜けをつけた」
「間抜けはお前らだ」
「ならばどちらが間抜けか確かめますか。ここで貴方に何かあれば側近もただではすまない。まぁ、どのみち何かあるのでどうでもいいですが」
「何かってなんだよ」
気持ち悪い笑みを浮かべるこいつは高揚していた。
「王妃様と同じ異世界人と会えるとは私は幸運だ。この幸運逃すまい!脱がせ!」
「離せよ!」
ビリビリビリ!
俺の破れた服は更に破かれ首元から脇腹がしっかり見えていた。睨み付けても嬉しそうにするし、観念するしかないか…男にやられるとか…はぁ、腹くくるか。
「ほほ、これは。異世界人は噂通り美しい体だ」
「アドベ様、諦めたようです」
「何と物わかりの良い従順なお人だ。はぁ~なんともいい香りではないか」
流石に匂い嗅がれるのは勘弁してくれ。首に当たる鼻息に思わず鳥肌と身震いが起こり顔を逸らした。隙見て絶対反撃してやると思っていたら、ニヤニヤ笑いながら破れた場所から手を入れられそうになる。
仕方ない、反撃を伺う為だ少しぐらいなら………
と思ったけどやっぱ嫌だ!!!
早くこいよ!ソルト!
気持ち悪い!俺に触んな!!
嫌だ!嫌だ!嫌だ!!!
「ソ…ル…」
「とら様!!!」
と思ったらソルトは物凄い勢いで片っ端から輩を倒して行った。いつの間にかアドベも床に。余りの早さに何をしたかわからなかった。その光景を見ていたがハッと我に返った。
倒れて抵抗できない間もひたすらソルトは殴り続けていた。ソルトは何かを思い出して殴る手をピタリと止めると剣を取り出した。
「ソルトやめろ!」
「とら様、生きている価値がないです」
「やめろって、後はフィグさんが判断する」
「気がおさまりません」
ソルトに近づき両手を握った。
「やめろ。やっぱり、首輪は必要だな」
「とら様…」
「おい、ハグを許可してやる」
「…はぃ」
ソルトは自分の服を俺にかけ力強く抱きしめて離さなかった。
内心河口君方式で行くと俺は助けが来ないフラグかと一瞬思ったじゃないか。あ~良かった。やっぱり助けに来てくれた。あんなおっさんマジで勘弁だ、と思っていたら足音と共に声が聞こえた。
「ソルトさん、松君さん大丈夫ですか!」
「とら様が!」
「松君さんにお怪我でも!?」
「大丈夫です。服を破かれたぐらいです。ソルト離せよ!」
「嫌です!」
「はぁ…クラムさんすみません、後できちんと説明しますから。こいつ離れなくて」
「わかりました。皆さんはこの者達を牢屋へ。ソルトさんは部屋で松君さんの手当てと護衛をお願いします」
護衛は倒れたアドベ達を担いで運んでいった。俺は普通に歩けたがソルトが離さないから抱き上げられながら部屋に戻った。その後、クラムさんが状況を聞きにソルトの部屋に来た。
「ご迷惑をおかけしました」
「いえ、謝るのはこちらです。怖い思いをさせてしまいましたね、大変申し訳ございません。やまとさんに合わせる顔がありません。本当になんとお詫びしたらよいか」
「いえ、危険だと言われていたのに言う事を聞かずソルトに会いに行った俺が悪かったです。ソルトがきてくれたので助かりました…っていい加減離れろ!」
「嫌です」
ずっと松から離れないソルトは松の肩に顔を埋めていた。
「はぁ…とりあえず、最高位護衛さん達は好意的に解決しようと俺を守ってくれてました。それで揉み合ってる隙に腕を掴まれ目眩ましをされて担がれた感じです。俺が護衛さんと小さな声で話しているのを見て異世界人とばれたようで。目的は俺とやりたかったみたい。怪我は特にないけどライムさんとソルベさんが作ってくれた服がだいなしに」
「っ…」
ソルトの息の詰まる声が松だけに聞こえた。
「そうですか、本当にお怪我は?些細な事でも構いません。しっかりと王に説明しなければなりませんので」
松はソルトの腕をポンポンと叩き外させると破れた服の間から腕を出した。すると、掴まれていた腕が赤くなっていた。
「松君さん、本当に申し訳ございません。ソルトさん後で冷やして差し上げて下さい」
「はぃ…わかりました」
「少し赤くなっただけです」
「それも全て報告致しますので我々には遠慮や気を使うと言った事はなしですよ。やまとさんのご友人だからとかではなく松君さん、貴方を友人の一人として皆が守りたいと思ってますので」
「ふふ、ありがとうございます。次からは全て話します」
「次回はないです!!全く、うちの護衛は不甲斐なさ過ぎる!では、失礼いたします。ソルトさん、松君さんを頼みましたよ」
「はぃ」
クラムはいそいそと駆けて行った。
松はシャワーが浴びたいと言い脱衣場に下ろしてもらいシャワーを出して出ていってもらった。お風呂から出ると簡単な部屋着が用意されていた。それを着てドアを開けるとソルトがすぐ横に立って待っていた。
「首…赤いです」
「ああ…うん」
「とら様、私は話すに足らない相手ですか」
先ほどまで全く赤くなかった首を見てソルトは悲しげな顔をして松に言った。
「わかった、言うよ。ソルトが来るちょっと前にアイツに首の匂いを嗅がれて。それが気持ち悪くて感覚が取れなくてさっき擦った」
「……。」
普段ならすぐ何かしらの返事が返ってくるが無言で松を見つめるソルトに俺は焦った。
「お前の言うこと聞かずに動いたから拗ねてんの?機嫌直せよ、悪かったよ。待ってろって言われてたのに勝手に動いて」
いつものソルトに戻そうとハグをしようとしたがソルトはその手をおろさせた。ソルトの顔は真剣だった。
「そうではありません」
「じゃあ、なんだよ」
「とら様…大丈夫ですか?」
「何が」
「とら様がです」
「大丈夫だけど」
「怖かったんじゃないですか?」
「は?」
「もしそうだとしたら…」
「別に。確かに俺は弱いから何にもできないけど怖い訳じゃない。俺をバカにしたいならすればいい。お前がいないとこっちじゃ何もできないって!」
「とら様、違います。もしそうなら素直に仰って下さい。とら様は…」
「言ったらどうにかなるのかよ」
「私が受け止めますから。一人で解決しようとしないで下さい」
「重い。俺はそう言うの嫌なんだよ。誰かに頼ったり頼られたりするのが!」
「とら様、素直に気持ちを仰ってもいいと思います」
「誰に、何で」
「はっきりと気持ちを吐き出すのは悪い事ではないです」
「お前に言われたくないし、話さない」
「とら様…」
違う、こんな事がいいたい訳じゃない。素直に助けてくれたお礼と怖かったと言えば済むのに俺は……
「触るな」
俺はソルトの手をはね除けた。
自分の気持ちを読まれるのは嫌いだ。
それが当たってるなら尚更。
「すみません…ただ心配で」
「なら、心配無用。助けてくれた事には感謝するけど」
また、こんな言い方しかできない。
クソ……こいつといるとイライラする。
「とら様は悪くないです…すみません…私が…」
「お前が謝る必要ないだろ」
松はいたたまれなくなり自分の服に袖を通すとと元の世界に戻ろうとした。
松が瓶を持つとその手をソルトは掴んでいた。
仕事をしてるんだろうと思い俺は部屋のドアを開け、廊下から顔を覗かせ離れた場所にいる護衛さんに声をかけた。
呼び掛けると護衛さんは他の最高位護衛が来るまでこちらの世界の服に着替え部屋で待機をして欲しいと言った。着替え終わって一息ついたぐらいでノックをされ二人の最高位護衛が来てくれた。
「あれ、ソルトは?」
「はい、今は離れた場所にいまして直ぐにこちらに向かうとの事です。迎えに行くまで部屋で待機していて欲しいと仰られました」
「仕事?」
「いえ、稽古場です」
「へー途中まで進んだら駄目ですか?」
「ソルト様が着くまでは…」
「部屋にいても暇なんで」
最高位護衛は悩んだが必ずソルトとすれ違う場所迄ならと承知した。待ってるの退屈だった俺は護衛さんと一緒にソルトを迎えに行く事にした。
「松君様、ソルト様は側近になられて更に強くなりました。今も松君様の為に稽古をしていらっしゃいます」
「へー」
「クラム様の次に強いのは間違いなくソルト様です。王もそれを見込み松君様を側近に任命されましたので。我々も努力していますがソルト様ほど努力をされている方はいないです」
「松君様の側近となられた時は皆が納得していました。ですが、ソルト様はあまり喜ばれた様子ではなかったので尋ねた所『とら様を守る通過点でしかないですから』と仰いました。大罪を犯したとはいえ、皆が実力を認めているのに傲らず誰よりも松君様を守ろうと日々稽古を重ねていらっしゃいます。今度、ぜひその様子を見にきてください」
「わかりました。機会があったら行きます」
そんな事を言われ見に行った時のソルトの気持ちが手に取るように想像できてしまった。あいつが喜ばないわけない。いつも俺はそれを否定するんだが俺は何でいつも素直にそうだと言えないだろうとも思う。事、ソルトに関しては余計。
そんな事を考えていたら護衛が足を止めた。
「おお!!これは運命!」
おっと、この声はよろしくない。
ずっと前にお茶を断った成金。
ソルトに話すなとあの時教えられたが今回は流石に無視はできないよなと思ったら護衛がすぐ俺を守った。
「王から彼には誰一人近付けてはならないと言われている。お引き取り下さい」
「随分ですね。以前機会があればと言われましたのでそれが今ですよ」
うわ、覚えてた。
「松君様…本当ですか?」
一人の護衛が小声で話してきたがハッキリ言ってそんなわけない。
「いえ。社交辞令です。全くお茶したくないです」
「ですよね」
「下がれ!!三王の友好の為、手荒な真似はしたくない!」
「駄目ですか~ソルベ王と私は親族ですよ。このままでは私は恥かきですが仕方ない。今回も挨拶の握手だけにします」
護衛は道を開けなかった。一人は槍を構え近づけないようにし、もう一人は俺を守りながら引きさがらせる。しかし、向こうの護衛も引き下がらない。2対2の攻防になり揉み合いをしている間に後ろから別のアドベ護衛が俺を捕らえた。
「ちょっ、何すんだよ!」
その言葉に護衛はすぐアドベの護衛を捕獲し駆け寄るも間に合わず俺は連れ去られてしまった。
「緊急!!アドベを捕まえろ!!」
魔法で緊急音を鳴らすとすぐに何人か集まってきた。その中にソルトも。
「ソルト様!!すみません!松君様がアドベに拐われました!」
「わかりました、王とクラム様にすぐ報告を。他の者は城内封鎖をお願いします。私はとら様を探します」
そう言うとソルトは瞬く間に消えた。
………………………
誘拐なんて初めてされた。
主人公は河口君なのに…主人公がされるっぽいことされてるとか。
こいつ、俺はフィグさんの友人って事になってんのに拐うとか命しらずだな。
「あの…俺、どうなるんですか?」
「すみません、こちらとしてはお茶をしたかっただけなんですが融通がきかないそちらの護衛に少し苛立ってしまいまして」
「じゃあ、お茶するから下ろしてください」
「それは難しいですね」
「なら、俺はどーなんだよ」
「ああ、こうなります」
担がれた体がぐるんと反転すると腕を押さえられ服を思い切り破られた。いくらおっさんだといえナグマ国のやつ。力は強いしガタイもいい。
「意味わかんね」
「ふふふ、そうですか。貴方、もしかしたら異世界の方とか?」
「違うけど」
「王妃様は大層愛らしいと聞きました。もしや、そのご友人ではと思いまして」
なんでバレた?
「歩いているだけで異世界人は我々の気を惹こうとすると聞きました。私、この間ピンときたんですよ。王妃様はあの王が離さないともっぱらの噂でして。王妃でないならそのご友人ではと。貴方は何処か違う。それに、アイコンタクトがあれば護衛とひそひそと話すなどないですから。つまり、アイコンタクトができない方…異世界人」
単純な発想だが間違ってない。
「違うってば」
「ならばこれは読めますか?」
文字が写るがさっぱりわからなかった。
「読む必要あるの?」
「ええ、ありましたよ。なぜなら今は助けてと書きましたから。大声で読めば誰か来ていたかもしれません。やはり、読めなかった。私の所へ来ていただければ生涯可愛がってさしあげます。異世界人は官能的だと聞きましたから」
キモ。
てか、河口君の淫乱が異世界人イコールになってる!俺は違うからな!
クソ、命綱はあれしかない。肌に離さず着けているから気がつくはず。それまで時間稼ぎしたい。
「てことは、俺とやりたくて拐った感じ?」
「ははは、これはハッキリとしていていい」
「何でもいいけど離してくんない?それにお前、俺のソルトなめすぎ」
「ソルト?ああ、いなかった奴か。たかだか護衛1人が来た所でこちらにはまだ護衛はいる」
そう言うともう二人護衛が現れた。アドベは護衛に俺の腕を持つように言った。こいつだけなら逃げれる可能性あるかもって思ったが護衛つきなら無理っぽいな。やっぱり時間稼ぎぐらいしかできない。
「間違えるなよ。ソルトは側近だ」
「ほう、昇格したと。おめでとうといいたいですが本人はいませんね。それにしても貴方を助けれない側近とは大した側近です。ダーシャル王もなんとも間抜けをつけた」
「間抜けはお前らだ」
「ならばどちらが間抜けか確かめますか。ここで貴方に何かあれば側近もただではすまない。まぁ、どのみち何かあるのでどうでもいいですが」
「何かってなんだよ」
気持ち悪い笑みを浮かべるこいつは高揚していた。
「王妃様と同じ異世界人と会えるとは私は幸運だ。この幸運逃すまい!脱がせ!」
「離せよ!」
ビリビリビリ!
俺の破れた服は更に破かれ首元から脇腹がしっかり見えていた。睨み付けても嬉しそうにするし、観念するしかないか…男にやられるとか…はぁ、腹くくるか。
「ほほ、これは。異世界人は噂通り美しい体だ」
「アドベ様、諦めたようです」
「何と物わかりの良い従順なお人だ。はぁ~なんともいい香りではないか」
流石に匂い嗅がれるのは勘弁してくれ。首に当たる鼻息に思わず鳥肌と身震いが起こり顔を逸らした。隙見て絶対反撃してやると思っていたら、ニヤニヤ笑いながら破れた場所から手を入れられそうになる。
仕方ない、反撃を伺う為だ少しぐらいなら………
と思ったけどやっぱ嫌だ!!!
早くこいよ!ソルト!
気持ち悪い!俺に触んな!!
嫌だ!嫌だ!嫌だ!!!
「ソ…ル…」
「とら様!!!」
と思ったらソルトは物凄い勢いで片っ端から輩を倒して行った。いつの間にかアドベも床に。余りの早さに何をしたかわからなかった。その光景を見ていたがハッと我に返った。
倒れて抵抗できない間もひたすらソルトは殴り続けていた。ソルトは何かを思い出して殴る手をピタリと止めると剣を取り出した。
「ソルトやめろ!」
「とら様、生きている価値がないです」
「やめろって、後はフィグさんが判断する」
「気がおさまりません」
ソルトに近づき両手を握った。
「やめろ。やっぱり、首輪は必要だな」
「とら様…」
「おい、ハグを許可してやる」
「…はぃ」
ソルトは自分の服を俺にかけ力強く抱きしめて離さなかった。
内心河口君方式で行くと俺は助けが来ないフラグかと一瞬思ったじゃないか。あ~良かった。やっぱり助けに来てくれた。あんなおっさんマジで勘弁だ、と思っていたら足音と共に声が聞こえた。
「ソルトさん、松君さん大丈夫ですか!」
「とら様が!」
「松君さんにお怪我でも!?」
「大丈夫です。服を破かれたぐらいです。ソルト離せよ!」
「嫌です!」
「はぁ…クラムさんすみません、後できちんと説明しますから。こいつ離れなくて」
「わかりました。皆さんはこの者達を牢屋へ。ソルトさんは部屋で松君さんの手当てと護衛をお願いします」
護衛は倒れたアドベ達を担いで運んでいった。俺は普通に歩けたがソルトが離さないから抱き上げられながら部屋に戻った。その後、クラムさんが状況を聞きにソルトの部屋に来た。
「ご迷惑をおかけしました」
「いえ、謝るのはこちらです。怖い思いをさせてしまいましたね、大変申し訳ございません。やまとさんに合わせる顔がありません。本当になんとお詫びしたらよいか」
「いえ、危険だと言われていたのに言う事を聞かずソルトに会いに行った俺が悪かったです。ソルトがきてくれたので助かりました…っていい加減離れろ!」
「嫌です」
ずっと松から離れないソルトは松の肩に顔を埋めていた。
「はぁ…とりあえず、最高位護衛さん達は好意的に解決しようと俺を守ってくれてました。それで揉み合ってる隙に腕を掴まれ目眩ましをされて担がれた感じです。俺が護衛さんと小さな声で話しているのを見て異世界人とばれたようで。目的は俺とやりたかったみたい。怪我は特にないけどライムさんとソルベさんが作ってくれた服がだいなしに」
「っ…」
ソルトの息の詰まる声が松だけに聞こえた。
「そうですか、本当にお怪我は?些細な事でも構いません。しっかりと王に説明しなければなりませんので」
松はソルトの腕をポンポンと叩き外させると破れた服の間から腕を出した。すると、掴まれていた腕が赤くなっていた。
「松君さん、本当に申し訳ございません。ソルトさん後で冷やして差し上げて下さい」
「はぃ…わかりました」
「少し赤くなっただけです」
「それも全て報告致しますので我々には遠慮や気を使うと言った事はなしですよ。やまとさんのご友人だからとかではなく松君さん、貴方を友人の一人として皆が守りたいと思ってますので」
「ふふ、ありがとうございます。次からは全て話します」
「次回はないです!!全く、うちの護衛は不甲斐なさ過ぎる!では、失礼いたします。ソルトさん、松君さんを頼みましたよ」
「はぃ」
クラムはいそいそと駆けて行った。
松はシャワーが浴びたいと言い脱衣場に下ろしてもらいシャワーを出して出ていってもらった。お風呂から出ると簡単な部屋着が用意されていた。それを着てドアを開けるとソルトがすぐ横に立って待っていた。
「首…赤いです」
「ああ…うん」
「とら様、私は話すに足らない相手ですか」
先ほどまで全く赤くなかった首を見てソルトは悲しげな顔をして松に言った。
「わかった、言うよ。ソルトが来るちょっと前にアイツに首の匂いを嗅がれて。それが気持ち悪くて感覚が取れなくてさっき擦った」
「……。」
普段ならすぐ何かしらの返事が返ってくるが無言で松を見つめるソルトに俺は焦った。
「お前の言うこと聞かずに動いたから拗ねてんの?機嫌直せよ、悪かったよ。待ってろって言われてたのに勝手に動いて」
いつものソルトに戻そうとハグをしようとしたがソルトはその手をおろさせた。ソルトの顔は真剣だった。
「そうではありません」
「じゃあ、なんだよ」
「とら様…大丈夫ですか?」
「何が」
「とら様がです」
「大丈夫だけど」
「怖かったんじゃないですか?」
「は?」
「もしそうだとしたら…」
「別に。確かに俺は弱いから何にもできないけど怖い訳じゃない。俺をバカにしたいならすればいい。お前がいないとこっちじゃ何もできないって!」
「とら様、違います。もしそうなら素直に仰って下さい。とら様は…」
「言ったらどうにかなるのかよ」
「私が受け止めますから。一人で解決しようとしないで下さい」
「重い。俺はそう言うの嫌なんだよ。誰かに頼ったり頼られたりするのが!」
「とら様、素直に気持ちを仰ってもいいと思います」
「誰に、何で」
「はっきりと気持ちを吐き出すのは悪い事ではないです」
「お前に言われたくないし、話さない」
「とら様…」
違う、こんな事がいいたい訳じゃない。素直に助けてくれたお礼と怖かったと言えば済むのに俺は……
「触るな」
俺はソルトの手をはね除けた。
自分の気持ちを読まれるのは嫌いだ。
それが当たってるなら尚更。
「すみません…ただ心配で」
「なら、心配無用。助けてくれた事には感謝するけど」
また、こんな言い方しかできない。
クソ……こいつといるとイライラする。
「とら様は悪くないです…すみません…私が…」
「お前が謝る必要ないだろ」
松はいたたまれなくなり自分の服に袖を通すとと元の世界に戻ろうとした。
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