社会人が異世界人を拾いました

かぷか

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番外編

1「クラムのお見合い編」 

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「次」

「ナグマ国出身 ミミエコン地区 一等 32の9952 マズハナイハシジグラミン 30歳」


 ここはある男の人生の決断を決めるために開かれた会場だった。

「次」

「凄い~こんなにも人が並んでる」

「ああ」

 広い会場には列をなし男達が並んでいた。机が並べられた先に三人の男性が座りその前には椅子が置いてある。四人ずつ椅子に座りアピールをしている。5分ほどのアピールタイムが終わると次から次へと同じ椅子に別の人が座り、まるで大手の面接会場のようだった。

 今回の主役は業務が終わり次第駆けつける事になっている。

「何か会社の面接思い出すな」

「やまともしたことあるのか?」

「お見合いじゃないけど、仕事決めるときの面接だよ。あんな感じでアピールして、良かったら就職できるんだよ。書類審査、一次試験、二次試験、一次面接、二次面接、最終面接みたいに人気な会社になればなる程最終までいくのが大変で途中振るいに何度もかけられるんだ」

「そうか」

「うん、だからなかなか思った会社に入れない人が殆んどだったりする。俺もそんな感じだったかな。ナグマ国ならもっと条件厳しそうだね」

「そうですね…基本、強くないといけませんし、仕事も城に支えるなら其なりに長けた能力のお持ちの方しかここには就けません。お見合いも似たような感じです。王の時には何人か候補になる人がそもそもいて教養を身につけた方の中でも最も優秀な方と婚姻ですけど私の場合はそういう方はおりませんので募集をかけて合いそうな方と婚姻いたします」

 後ろから現れ説明してくれたのは本日の主役クラムさんだった。そう、ここはクラムさんのお見合い会場。ナグマでは恋愛とお見合いどちらでもいいんだけど普段の業務が忙しいクラムさんは恋愛をしている時間がないのでお見合いがいいと言った。

ナグマ自体、3つの地域に別れていてライムさんとソルベさんの地域にも募集をかけれるんだけど文化の違いがあるらしく慣れたフィグのいる場所だけの募集になった。

 だけど、流石クラムさん。人気な証拠だな。お見合いしたい人がこんなにも居るなんて!

 俺達は面接官の人に挨拶をして別に用意されていた椅子に腰かけた。

 主役はクラムさんだから真ん中の席に座るかと思ったら俺だった。

「俺が真ん中?」

「ああ」

「クラムさんじゃないの?」

「やまとさん、私が真ん中に座ったら王から離れますから」

「別にいいでしょそこは!」

「却下だ」

 仕方ないから真ん中に座ったがクラムさんのがいいよな~?なんて考えていたらアピールがどんどん進むが全然頭に入らない。名前が何処までとかどっちが受攻どっちと考えているうちに次に行ってしまう。フィグとクラムさんを見るもじっと見てるだけだった。

 これ、クラムさんが気に入った人が現れたらちょっと今の人キープとか言うのかな?

「やまと、どうした」

「いいなーって人が現れたらどーすんのかなって?」

「候補には入るがすぐには決まらない。基本は何人かに絞って最終的な判断をしてからクラムが選ぶ」

「そうだけど、もっと話したりしないの?結構遠いよ?質問とかしたりさ。近くで見ると写真と別人とか」

「人数が多いから面接官にまかせる。後は直々に別の城からの紹介もある」

 なんと、ここへ来て権力がちらつくとは!つまりうちの娘いかがですか?強いては○○家をご贔屓にってやつか。

「やっぱり、クラムさんと結婚すると特なの?」

「無いとは言いきれませんね。少なからずそういう方もいらっしゃいます」

「俺の側近だからそれなりに伴侶にも優位に働く事もある」

「護衛の皆さんの最終目標は大体王の側近、王妃の側近、次に最高位護衛です。皆さんここを目指してますから私の伴侶となる方は王にもやまとさんにも近くなりますのでそれなりの方になります」

 そっか~じゃあ、安易にこの人がいいって選べない部分もあるのか。だから、あの三人の面接官が振るいにかけてるのか~

「クラムさんにいい人見つけてもらいたいな~俺もがんばる!」

「やまとはがんばらなくていい」

「ありがとうございます」

 そうは言ってもお世話になってるクラムさんには幸せになってもらいたい。そして、頑張った結果ろくなことにならなかった。

 何となくナグマ文字が読めるようになってきて資料を面接官に見せてもらい俺なりに応募してきた方々に質問をしてみた。
急遽面接官がフィグとクラムさんと俺になり、皆の緊張が高まるもアピール合戦になっていた。因みにフィグの許可はとってあります。

 まさか、自分が面接官になれるとは!ちょっと楽しみ~!

「コホン、それではクラムさんの好きな所はどこですか?」

「若くして側近になった所です」
「側近になりたいです」
「やまと王妃の側近希望です」

「やまと王妃の夜の側近に…ぐぉ…」
 ……ズルズルズルズル

 
「では、クラムさんと一緒にしたいことはなんですか?」

「手合わせです」
「側近業務がしたいです」
「一緒にやまと王妃のお世話を」

「やまと王妃に触れ……ぐはぁ!」
 ……ズルズルズル


 俺への側近アピールタイムになってる
 フィグさんの機嫌悪くなっちゃうから!

 なんてこったい完全に俺が邪魔だ!

「フィグ、そんなに皆なりたい感じ?」

「半分はやまと狙いだがあと半分はやはり側近になりたいだろうな」

「へー!」

「側近になれば権限を持つことができるし王の次に偉い最高位の職務だからな。誇りに思うだろう」

「すご!クラムさん、ちょーエリートじゃん。最近、ソルトさんも側近になったよね?」

「ソルトさんは元々才色兼備でしたから成れる素質はあったと思います。ただ、側近としては大罪を犯してしまいましたので王ではなく松君様の側近となりました。ただ、皆さん勘違いをされてますが側近は王自ら決めるので私に決める権限ないんですよ」

「最高位護衛と側近の違いは何ですか?」

「簡単に言えば距離感ですかね。護衛はあくまでも護衛なのでやまとさんが一人で出掛けるときに必ずつきます。側近は似てますがお世話も含めた感じでより距離が近いです。因みに、王の直々側近は今の所私だけですね」

「そっか、クラムさんめちゃくちゃ凄いんじゃん。じゃあ俺が側近欲しかったらフィグが選んでくれるってことか」

「必要ない」

 あれ、フィグさんお怒り。

「やまとさんに王がいますから」

 そんな話をしていたら入り口に隠れている人がいた。気になってしまい俺は近づきたかったが王妃としてバレてはいけないと思いフィグのマントをこっそり借り頭から被りわからないように話しかけた。

「どうしたんですか?」

「え!あ、いえ、なんでも…ないんです」

 何も無いわけがない!

「クラムさんのお見合い候補の方ですか?」

「………は、はぃ」

 確かにこんなにいたら自分は選ばれないなって思うよな。わかるよ。

「沢山の方がいると自分が選ばれる自信無くなりますよね」

「はぃ……」

 かといって無理に進めるのもな。落ちて残念な結果になったら可哀想だしな。

「やまと王妃は何をしてるんだ?」
「本当だ、やまと王妃が直々に話してる。いいな~」

 あれ、バレてる。

「あ、あの、自分の思うように後悔ないようにしてください」

「ありがとうございます」

 俺は後ろに立つフィグに瞬時に抱えられ退散となった。今思えばフィグのマントを被ったらバレるじゃんと反省した。

「やまとさん、そうじゃないです。そもそも席を立たれた時点でバレてます」

「何だって!?」

 後日、最終選考で10人に絞られたが果たしてこの中にクラムさんの伴侶となる人がいるだろうか?   
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