社会人が異世界人を拾いました

かぷか

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松編 ②

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「松君様は私を好きなってくれませんか?」

 お酒を飲み進めていたらソルトにそんな事を言われ昔を思い出した。

 今までそこそこいろんな子と付き合ったがそんな事を言われたのはその子が初めてだった。

 俺はその子を好きになってみようと努力をした。デートをしたり帰り道を一緒に帰ったりメールを送ったりと本当に周りがしているような事をして好きになる努力をした。

 実際、努力してみて前よりかは好きにはなってたと思う。

 日を重ね、じゃあ付き合うかってなった時に言われたのは予想外の言葉だった。

「好きになってないですよね?」

 確かに良い感じだったしいいかもなと思ったが好きにはなってなかった。そうかもと言ってそれきりになった。何故かその言葉が今でもずっしり残る。

 現に今まで好きになった事はあるけど無かったかも。好きは絶対的なものじゃないし、向こうだってずっと好きか信用できない。

 絶対的なものがない人は好きにはなれない。

 社会人になってからも付き合う人、付き合う人、長続きしなかったな。

 仕事で河口君のいる部署に落ち着いたんだけど、河口君は入社した時と変わらず変わった子だったな。

 いつも何かしらハプニングが起こる河口君が気になって声を掛けたんだけど一緒に居たらすごく楽しかった。勘だけど河口君は絶対変わらない気がしたんだ。だから好きになったんだけど。

 俺が自分の気持ちに気がついたのはフィグさんと出会ってからかな。

初恋は実らないって言うけどそうだったな~

「松君様…?」

「ああ、何だっけ。好きにならないかも」

 お酒を一気に飲み干し空にした。座る椅子に立て膝を付きソルトを見ながら答えた。

「ならなくても私は好きです!松君様に好きな人ができて伴侶ができても一生好きです!」

「何でだよ。一生や絶対なんて無いだろ」

「有りますよ。好きは変わらないです」

「………。」

 当然のように答えるが、ソルトの今までの行動が伴わない事にイライラした。

「お前、フィグさんが好きだったんじゃないのかよ」

「好きでしたがそれより好きな人ができれば仕方ないです」

「なら、絶対じゃないだろ。乗り換えてる。裏切りだし好きじゃないだろ」

「はい、好きではなかったです」

「矛盾してる」

「松君様を好きになったんです。王は好きになろうとした人です。途中まで好きでしたが本当には好きにはなれなかったです。あのまま婚姻していたらいずれ別れていたと思います」

「……。」 

「松君様は絶対に好きです。貴方の幸せを近くで見届けたいです」

「俺が好きにはならなくてもか?」

「はい、私は好きです。できるなら近くにいたいですができませんので城に帰ります。でも、私は松君様を好きです」

「なんだよそれ……重たい。スゲー重たい」

缶を置いて足を組み座り直した。

「そうですか?自分の事を好きな人が一人でも居たら嬉しくないですか?」

「重い。それは……人類愛か」

「あい?は、わかりませんが呼べばいつでも貴方の側へ飛んでいきます」

「はぁ~そんな事できないだろ。できないこと言われるのは嫌いだ。足蹴にしたり鬱陶しく思ったり八つ当たりしてもいいのかよ……」

「はい、松君様の感情を共有できるから私は幸せですが」

「暴力はされたら犯罪だからそこは許すなよ。お前は純粋通り越して痛すぎる。利用されるぞ」

「はい……?松君様の幸せを一番に願います。だから好きです」

 なんなんだよ、好きにらないかもしれないのに……頭が痛い。

「おい、俺はナグマには住まないし気まぐれでしかここに来ない。好きにもならないかもしれないし都合よく使うかも」

「構いません。思う気持ちを許して貰えませんか?」

「構う。重くするなよ。重いの苦手なんだよ」

「わかりました」

 はぁ……そんなガッカリすんなよ。
 
 異世界の誰だかよくわらかない奴にめちゃくちゃに好かれて自棄になったのか?

それとも全然酔わないこのお酒のせいなのか…

らしくない俺の行動。

「はぁ~思うのは好きにすればいい。俺は自分勝手にする。それでもいいなら側に居る位ならいいよ。ただし、俺に触るのは許可してからな」


「!?」

 驚いたソルトは声を出すのも忘れていた。

「そんな、驚くなよ……そして泣くな」

 はぁ……


「すみません、フィグさんにソルトを出すように……いや、クラムさんに頼めますか?」

「すぐ、お呼びしてきます!」

 護衛の一人に声を掛けると走ってクラムの元へ行った。それを見届けると松はソルトに話しかけた。

「ソルト…お前にだけ教えといてやる。俺は松永竹虎まつながたけとらだ。松永が名字で竹虎が名前だ。松君の君は名前じゃないから違う呼び方をしろよ」

「はい。たけとら様」

「呼び捨てでいいよ」

「とら様」

「呼び捨てじゃないし、まぁいいや」

 そんな話をしていたらクラムさんが走りよってきた。

俺も普通じゃない世界に足を踏み入れてしまった気がする。
 
「はぁ……得意なのなんだっけ。魔石3つ回しだっけか…」

「はい!」

「今度みせろよ」

「喜んで!!」
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