社会人が異世界人を拾いました

かぷか

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いつも一緒に

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「フィ、フィグお父さんいたの!?」

「激しくご健在です!」

 抱きつかれハグをされスリスリと顔を寄せられそうになった所でフィグがひっぺがえした。

「なんだ、いいじゃないか。久しぶりの再会だ」

「やまととは初めてだ。気安く触れるな」

 家族の挨拶はしなくていいっぽい感じだったからもしかしたらと思ってたけど健在だった。

「ご健在なら挨拶したのに~」

「王が頑なに拒否をされたんです。儀式もお誘いするのが常ですが全て拒否をされまして。晩餐会のみの参加となりました」

「まぁ、こっそり見てたけど」

フィグがジロリと見るもフィグ父は動じていない。

「やっと王妃様に会えた~」

「フィグ、なんでお父さん呼ばなかったの?」

「必要ない」

「王!!お父上ですよ!いくら嫌でも婚儀ぐらいいいじゃないですか!二人の王にも協力していただいたんですよ!」

だから、二人はさっさと逃げたのか。
にしても何でそんなに嫌なんだろう?

「フィグル、やっと会えたんだ。王になってからも噂は聞いていたし婚儀を受けると聞いた時は驚いた。こんな喜ばしい事はない」

 プイッと横を向いたフィグは反抗期の息子のような態度だ。

「あ、ありがとうございます」

「やまと様は異世界人だそうだが苦労はないですか?」

「は、はい。皆さん良くしてくれてます!後、様は必要ないですから。やまとでいいです。河口大和といいます。婚儀後ですみませんが、フィグさんと結婚させていただきました」

ペコリと挨拶をした。

「そんなにかしこまらないでください。貴方は王妃様ですから。フィグルをお願いします。やまとさん」

「やまとさん、年は下ですがやまとさんは王妃様ですからお父上の態度は気にしないでください」

 いや、気になるから!
王はフィグだけどお父さんは王の王じゃないの?

首をかしげるとクラムさんが付け足してくれた。

「王より上は居ませんからお父上は王より地位は下になります。といっても由緒ある家をお出になられてますが。現在はナグマ国の城から離れた場所に住まわれてます」

「そうなんですね。滅多に会えないなら…呼んでも良かったんじゃ?」

「必要ない」

 フィグの機嫌がものすごく悪い。
 そして、フィグとフィグ父の性格が全然似てない。父上は社交的だ。

「王!いい加減にしてください!王になれたのはお父上のお陰でもあるんですよ!」

「そうなんだ」

 クラムさんは語ってくれた。

 フィグが13歳の時に魔物狩りへフィグ父が連れていくと、めきめきと頭角を現したフィグ。それに気がついたフィグ父はもっと強くなるかもと魔物がいる森へ置いてきたらしい。数日後に迎えにいくもおいた場所を忘れてしまったらしい。

 どこに置いたかわからなくなって2年後。

 突如家に戻ってきたフィグに皆が驚いた。
 生きていたのか~!!と誰もが喜んだ。

置いてきた張本人のフィグ父は

 おかえり~!
 魔物狩りは楽しかったか?

と言ったそうな。

フィグはそこから性格が曲がったとかなんとか。

 そして、ナグマ国で強い人を探していると聞きつけたフィグ父は前王に紹介するとフィグは敵なしだった。前王はフィグの強さに恐れをなし地位を投げ出したとか。

 あっという間に王として周りに祭り上げられ今の状態になったらしい。

「と言うわけです。お父上を恨むのもわかりますが今の幸せはお父上あってですよ!」

そうなんだけど……何か違うような?
根本的な何かが欠如しているような。

「そうだったんですね」

「フィグル~こんなに大きくなって~いつの間に王になったんだ~」

「王になってからも何回か会ってますよ」

 お付きの方がこっそり付け足した。
 横にいるフィグを見ると眉間のしわが無くならない。

「フィグ、でもお父さんお祝いしてくれて良かったよ。ご健在で何よりだし」

「そうですよ。やまとさんを紹介できて良かったです」

「クラム……忘れたのかこいつは…」

「わ、忘れてはいません。勿論わかっています。婚儀の場所ですしお付きの方もいますから。王もいるじゃないですか!」

まだ何かあるのか?

「やまとさん、王のお父上は珍しい物や新しい物などが好きでして…」

「へ~」

あ、ならあっちのお菓子とかあげたら喜ぶかも!
ポケットにまだあったはず。本当はちゃんと菓子折り渡したいけど次回しっかりしたのあげよ。

「あ、良かったら異世界のお菓子があるんで食べますか?本当はしっかりしたの渡したいんですが手持ちが今なくて。今度渡しますね」

「喜んでいただきます!」

 喜んでもらえて良かった~!

「最後に王と王妃様に挨拶をしてもいいですか?」

 と言われ勿論俺はオッケーをだしたがフィグは必要ないと言い張った。

 ちょっとフィグ父が可哀想になってしまったがあんな事をしたなら仕方ない気もするけど。

「いいんです、私が悪いんだ。せめてやまとさんに少し長めの挨拶をさせてください」

「はい、喜んで」

フィグが止めなかったって事は許してくれたんだよね。

「やまとさん、失礼します」

ハグをするために抱きついた。

あれ?

何か腰に縛り付けられて。

「フィグ…なんか縛り付けられて」

「フィグル…やまとさん、ちょっと借りてく。異世界の話を聞かせて貰ったら帰すから!」

「クラム!!」

「わかっております!」

 フィグ父は俺を縛り上げ肩にかついだ。

 前にもこんなような事あったな~と思っていたらクラムさんが俺ごとフィグ父に網のような物をかけた。地面にへばりつくとまるで水揚げされた魚のような俺とフィグ父。

「やまとさん、ご無事ですか!」

「はい」

 フィグは俺だけ網から出して抱えた。クラムさんはピチピチ跳ねるフィグ父をお付きの方と捕まえようとしている。それを見下すようにしてフィグは言った。

「おい、王の妃を奪うとは良い度胸だな」

「フィグル~こんな良い妃を独り占めとはずるいじゃないか!俺も異世界人と結婚したい!」

「奥さまが聞いたら殺されますよ。王、すみませんでした。挨拶しかしないと言ってたので連れてきてしまいました」

「やまとさん、お父上は新しい物と珍しい物が好きでして恐らくやまとさんを欲しがると思いましたのでこちらを準備させていただきました。後、この扱いは正当ですので気にしないで下さい」

「わ、わかりました」

 お付きの方が縛り上げ抱えている。抱えながら騒いでいる父は本当に最後にするからと懇願した。
 仕方なくお付きの方が下ろして腕を縛られた状態で会話をした。フィグはもちろん警戒して俺を抱えたままだ。

「フィグル、俺は父として何もしてやれなかった。だが、これだけは言える」

何故か俺を見ながら話すフィグ父。

「お前は私の誇りだ!」

感動をするセリフだが全然だれも感動してない。

「あ……お父さん。多分フィグには伝わっているような気もします」

「やまとさん、いただきます!!」

「はい?」

 ちゅ

 ちゅ?

俺は何故かフィグ父にキスをされた。

その後は…大惨事だった。

それはそれは…もう。
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