社会人が異世界人を拾いました

かぷか

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異世界人てやつは 

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 突然ですが俺は今吊るされています。婚儀の準備をしている最中にどなたかが入りこんで俺を人質に立て籠っています。

要求があるようでクラムさんと交渉をしています。

「やまとさんをすぐ離してください!」

「駄目だ!」

「王を早く連れてこい!」

こんな具合で1時間ほど時間を潰している。
なぜフィグがいないのかは今、一人であっちの世界に初めてのお使いに行っている。そっちのが心配すぎる。無事に帰ってきてくれる事を願う。

ついでだから、地図を書いて他にも買い物を頼んだからそんなにすぐには帰ってこれない。

「妃がどうなってもいいのか!」

「やめてください!」

 話を聞いているとどうやら異世界の食べ物を食べたいと駄々をこねてるみたい。俺の持ってきたプリンの噂を聞きつけ遠路はるばる(多分)仕官のふりをしてまで近づき縄を用意し俺を吊し上げた。何度も練習したんだろうな~手にまめができている。

そんな事をしなくても言えば買ってきてあげたのにと思ったが四六時中フィグといるから強行突破しないと手に入らないと思ったに違いない。

人質になったのでフィグは手を出せないから大人しくおつかいへ行った…事にする。

「俺も食べたい」と言ったばっかりにフィグが買いに行ったとは言うまい。

「あの~とりあえず下ろして下さい」

「駄目だ!逃げるだろ!」

「逃げません!」

逃げるけど。

「駄目だ!」

 困ったな~フィグがおつかいへ行った後、逃げないように逆さ吊りにされてしまった。

帰って来たらプリン渡して解放してもらおうかな。時折クラムさんががんばれとアイコンタクトをしてきてくれるんだけど、その応援はフィグの方が必要だな。大丈夫かな~やまと心配。

クラムさんは数名の護衛とアイコンタクト会議を開いてるみたい。フィグが戻ってきた連絡はまだないっぽいしな。

「渡したら必ずやまとさんを返していただけますか?」

「返す!」

「今、王が取りに行っています!お待ち下さい!」

「早くしろ!」

 やまとさんが奪われるとは。またしてもうちの護衛の信頼が…今回は仕官となり私達の目を欺き卑劣な真似をされました。

 やまとさんがいつも勉強している紙とペンを持ってきて欲しいといい投げて渡すと何か書いてこちらに投げました。紙を拾い要求された物を王が買いに行きました。かなり心配ですが私もついていけばやまとさんを危険にさらしかねない。一人で行ってもらいました。もうそろそろ帰って来てもいいはず。状況は刻一刻と悪くなっています。

やまとさん、すみません。もう少しの辛抱です。
王が帰り次第、最高位護衛を使い命にかえても助け出します!!

「王が帰ったらとり押さえる、それまで待機」

「はっ!」



フィグ、頼んだ物わかったかな~

何て呑気に助けを待っていたがプリン男が痺れを切らし始めた。

「遅い!騙したんじゃないのか!」

「違います!今、初めてのお使いで頑張ってるんです!もしかしたら一回帰って来て、できないと言うかもしれないんですよ!」

「さては嘘をついて時間稼ぎをしたな!お前が隠し持ってるんじゃないのか!」

そうか、異世界へ取りに行ってる事を知らないからここにあると思ってるのか。それに名前しか知らないから何でどんな物かもわからないよね。

と思ったら吊るしていた縄を緩め男の目線まで俺を下げた。

そして俺のポケットやら服をボディチェックしだした。くすぐったいからやめて欲しい。

「やめろよ!あはは」

「やまとさんに何をしてるんですか!すぐにやめなさい!」

 事もあろうに男がやまとさんをまさぐり始めるとは命知らずな。ただでさえ吊し上げられ縄が食い込んでいるのに!

あんなのを王に見られたら……


「おい、クラム」

どすの効いた声が部屋に響く。
間違いない、我らが最強のナグマのご帰還です。

「はい」

「あれはなんだ」

「くすぐった…あ、フィグ…あは、お帰りあはは。買えた?くっくっ、やめてってば、あはは」

「やまとさんがプリンを隠し持ってると思い探っている……様子です」

「……そうか」

右手を横にだし手の平を開いて、くいくいと何かを差し出すように要求した。

気がついた最高位護衛の一人が自分の持っていた剣槍を差し出す。ぐっと握ると男目掛けて投げた。

ザッ!!!

という音と共に男の体が飛んでいき壁に張り付く。フィグは左手に袋を持ちやまとに近づいた。足のロープを切り離し横抱きした。少しぐったりしているようだった。

「やまと、怪我は?」

「ない。けどちょっと笑い疲れたかも」

「そうか、遅くなった。すまん」

「ううん、上手く買えた?」

「買えた」

「無事で良かった~すごい心配した」

「すまない、松君さんに会った」

「え!?」

「クラム、後は頼んだ」

「かしこまりました」

二人はそのまま部屋に戻った。


「クラム様、見事ですね」

「はぁ~ちょっと前にも同じ光景を見ましたがいつみても恐ろしい」

剣槍は左肩の服のみを貫き壁に深く刺さっていた。男は泡を吹いて気絶している。急に自分の目の前に剣が飛びこめば誰もがそうなる。最高位護衛より常に王の元に置いておいた方がこの上なく安全だなと思い知らされた。そして後片づけのが大変だと思うクラムだった。

「5人ほど剣を引き抜くのを手伝って下さい」


□□□

「だから助かった」

「そっか、今度お礼をしないとね」

「そうだな」

 どうやら向こうの世界で松君に偶然会ったらしい。松君は伊可神社に行った帰りだったらしくキョロキョロしているフィグに気がついて声をかけてくれた。

俺に頼まれたおつかいのメモを見せると一緒に買い物を手伝ってくれたそうだ。松君優しいな~

 お礼は何が良いかな?異世界土産ってなんだ?そう言えばこっちにしか無いもの魔法しかわかんないな。後はこの吹雪は体験しないとだけど、この雪は異世界専用の雪かな?今度、雪を持って帰ってみるか。

「やまと」

「ん?」

「松君さんをナグマに招いたらどうだ?」

「おお~!!それは良いかも!」

確かに、いいアイディア~
松君なら呼びたいな~!それなら手土産と言わず土産話になる。

「実は既に誘ってしまった。次はいつ会えるかわからなかったから話を勝手に進めてしまった。すまない」

「全然いいよ!何て言ってた?」

「死にませんか?と言っていた」

わかる~松君も思うよね!俺も思った。

「大丈夫だと伝えたら、行ってみようかなと言っていた。だから婚儀の日にちも伝えておいた」

「凄い!そこまでしてくれたの?」

「ああ、やまとの知り合いが一人もいないのが気になっていた」

確かに。誰か誘うなんて考えもしてなかったし。松君が来てくれるなら、嬉しいかも。

「ありがとう!来てくれるかな?」

「瓶を渡しておいたたから、1.2回は往復できる」

「そっか!婚儀の練習がんばるね!」

「ああ、それより。さっき触られた方が気になる」

「俺が隠し持ってると思ったみたい」

「そうじゃない」

はぁ~

「フィグ?」

ん、ため息はついてないはずだ。

「俺もやまとが無事で良かった」

「フィグも心配したの?全然俺は大丈夫だったけど。それよりもフィグが心配で仕方なかった」

「ふふ、そうか」


この後人生最大のピンチを迎えたけど正直いいたくない。俺、お嫁にいけないかも。
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