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そして、異世界人になる
5 松語る
しおりを挟む河口君が入社して2年目。
会社では至ってごくごく普通の男。
電車通いの一人暮らし。
好きなおにぎりの具は昆布(梅昆布ではない)
通常運転、普通、人並みを重んじる成人男性。
と本人は思っている。
河口君が人と違うと思ったのはここ最近の事ではない。普通の人は365日お昼のおにぎりの具は昆布にしない。会社の挨拶で普通なので宜しくお願いしますとは言わない。宅配が来て何処から来たんですか?と言ったらドアを指差してあっちから来ました。とは言わない…
間違えたと言って鞄に人参を入れて出社しない…
等など上げたらキリがないぐらい普通ではない。ちょいちょい違和感がでる生活を送っている。
そんな彼が異世界人を拾ったと聞いた時はやはりそう言う星だったかと尊敬の念と住む世界が違うのだと思った。
酔っ払って夢でも見たのかと一瞬思ったけど河口君は嘘つきではない。
そんな河口君の尋常じゃない落ち込みに何かあったかと心配になって話を聞くとその異世界が帰ってしまったという話だった。できれば変な事に巻き込まれて欲しくないから帰って良かったんじゃないかなとも思った。
一時、おにぎりの具が変わった事に衝撃を受けたのは記憶に新しい。普通だと錯覚しかけた。
次に聞いたら帰ったはずの異世界人が許嫁の事に悩んでいると戻って来て、家に上げて面倒をみていた。はっきりいって、凄すぎる。河口君はほっといたら騙されたり危険に巻き込まれたりしないか心配になる。
一応、一般的目線のアドバイスを話したが何処まで通じるだろうか。
と思ったら夏休み明けに会社を辞める話を聞いた。変な勧誘にでも誘われたかと思ったけど違ってた。
結婚報告でしかも異世界人と!にわかに信じがたいが本人は至って普通に報告した。なんでここ普通なんだ!
最後に好きなんだよね?と聞いたら好きと答えていた。安心した。結婚相手をチラッとだけ見かけたがでかくて強そうだった。嬉しそうに話して小さくなる二人を見てると何だか嫁に行く父親の気分になった。
全然周りからは通常運転に見えなかった河口君だけど、河口君にとっては通常だったんだよね。天然で変わった人だったけど面白くて好きだったな。河口君と会えなくなるの寂しくなる。
お別れにプリンをくれた。
なんでだろ……。
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