社会人が異世界人を拾いました

かぷか

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そして、異世界人になる

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 遂に嫁いでしまった……。

 後先考えず行動してしまったのはこれで2回目。1回目は異世界人をお持ち帰りして、2回目は人生最大の決断結婚。しかも、異世界人と!

 アパートも引き払ってお母さんにも報告した「良かったね、玉の輿じゃん」と言われただけだ。松君にもお別れを言った。

 フィグが近くまで迎えに来ていたのは驚いたけど来てもらって良かったかも。因みにアパート近くのカフェで松君とは話してました。荷物を沢山抱えていざナグマ国へ。

 不安すぎる!今さら緊張!


「あれ?部屋?」

「そうだ」

「誰の?」

「やまとと俺のだ」

ついた先は極寒の外ではなく暖かい部屋だった。
上着を脱ぎ荷物を置いて出てきた所を見ると何だか綺麗に囲まれた鹿威ししおどしのような物があった。

黒い雫を受け止めるように回りに綺麗なガラスのような器がある。

「フィグ、これは?」

「この場所に黒い雫が落ちるから集めていつでも行き来できるようにした」

「凄い!」

てことは、向こうにいつでも帰れるのか!なら、別に嫁がなくても週末婚でよかったような……。今度提案してみるか。そうすれば買い物もできるしな~仕事辞めてアパート引き払うの早まったかな、う~ん。

「やまと何を考えてる」

「いつでも帰れるなって」

眉間にシワを寄せるフィグは不満そうだが俺的には気が楽になったな~

「もう、帰ること考えるのか?」

「買い出しできるし。フィグも一緒に行けばいいよ」

「わかった」

返事をしてくれたから、にっこり笑うとフィグは頬に手を当ててキスをしようとしてきた瞬間物凄い音で扉が開いた。

バン!!


「王!!」


ビックリした俺は思わずフィグに掴まった。扉を開けたのはクラムさんだった。

「勝手に入るな」

「やまとさん来てるじゃないですか!」

「今来た」

「やまとさんお久しぶりです。お待ちしておりました」

「クラムさん、お久しぶりです!今日から末永く宜しくお願いします」

ペコリとお互い頭を下げた。と思ったらフィグを見てクラムさんは怒った。

「王!あれほど口づけは駄目だと言ったじゃないですか!!」

「まだしてない」

「今、しようとしました!私が入らなければしましたよね!!」

「二人きりは別だ」

「駄目です!!何度も言ってるじゃないですか!婚儀するまでは口づけは禁止だと!」

「そうなんだ~」

 フィグのいるナグマ国はいろいろ貞操に規定があるらしくその一つが婚儀まではキスをしてはいけないとか。他にも口づけ以外の全て口に関する事も駄目らしい。

「え、てことは頬っぺにちゅーとかは?」

「駄目です」

「キスマークは?」

「駄目です」

「お口でご奉仕は?」

「だ、駄目です」

何だって!?
てことは入れる以外は駄目なのか!!知らなかった。じゃあ、俺のしたキスの練習も禁止事項だったんだ。キスなしで盛り上がるんだろうか……

「なので、王もやまとさんも婚儀まではしないでください。人前などもっての他です。では、王戻りますよ」

「フィグ仕事?」

「いや違う」

腕を引っ張りフィグを連れていことするが全く動かない。

「王…やまとさんにこの部屋の説明は?」

「フィグと俺の部屋って言ってた」

「王!!ここはやまとさんの部屋です!!王は別にあるじゃないですか!!後、使用人追い出すのやめてください!」

「知らん」

「ぐぬ~!」

一歩も動かないフィグはそっぽを向いてしまった。子供か!だめだ、このままだとクラムさんが怒り狂ってしまう。こんな時は……
 
「プーリーン~!買ってきましたから皆で食べましょう!いろいろ俺も規則とか部屋の話を聞きたいですから。ね、ね」

広い部屋にある机と椅子に三人で座りお茶をした。使用人達がお茶を運ぶ。

「やまとさん、こちらやまとさん専用の三人の使用人です。何かありましたら話かけください」

三人ともお辞儀をしたからすぐに俺もお辞儀を返したけど、えーどうしよ。

「何を言えば…」

「主に明かり付け、お風呂、食事です」

「なるほど」

「必要ない」

フィグは必要ないと怒っているみたいだったが流石に明かりとお風呂は困る。

「いや、困るし」

「俺がいるからいい」

「だから、いない時の話です!!」

 いない時は使用人に頼む事を了承してもらい、婚儀までフィグは自分の部屋へ帰ることに何とか返事をもらえた。クラムさんには迷惑料とこれからお世話をかけるので3つ入りのプリンを渡した。嬉しそうだ。
 後から二人の王にもあいさつに行きたい事も頼んだら快く承諾してもらえた。挨拶大事!
何だか和んだ気がする~良かった!

フィグはそっぽ向いて拗ねたみたいだけど規則なら仕方ない。口に関するのは駄目なんて難しいな~

「噛むのは」

「駄目です」

「舐めるのは」

「駄目です」

「口移しは」

「駄目です」

「間接的に飲むのは」

「う~ん、う~ん、大丈夫です」

「よし!」

勝った!

「やまとさん、私で遊ばないでください」

あ、バレた

□□□〈クラム〉

我が国の王妃は淫乱です!

これだけは自信を持って言える。

優しくて淫乱なやまとさんにうちの王が惚れてしまい異世界から勝手に連れてきて半ば無理やり妃にした。

 このナグマ国の規則というか生活は厳しくやまとさんには大変な思いをさせてしまう。何とか生活に慣れてもらうしかない。

こちらで通常行える文字や日常生活で使う力をやまとさんは「まほう」と呼ぶのでそう統一しましたが、やまとさんはその魔法が使えません。

明かりもお風呂も自分ではできません。勿論、文字やアイコンタクトもです。これはかなり困りますが文字は覚えてもらうしかないです、それ以外は努力ではどうにもなりません。

「王、まやとさんですが自国に帰宅している間にいろいろ準備をなされては?3ヶ月は戻れないといっておりましたし」

「……わかった」

王が上手く用意できるとは思えません、魔物狩り以外は口を出したことはほとんどないですから。
先ずは部屋の確保と誰か世話係が必要です。

「王、やまとさんの部屋と世話役の準備は任せてください」

「部屋は一緒でいい、世話役はいらない」

「……。」

「とは言うものの、世話役は必要です。明かりもつけれませんし。王がいない時どうするのですか?」

「一緒にいるから大丈夫だ」

「……。」

なんと言う事だ、王が駄々を捏ねている……
普通の妃と違うやまとさんには必ず使用人は必要ですし1日中一緒にいれるはずもない!

「無理ですよ…王も仕事がありますし」

「連れて行く」

な!!仕事場に連れてくなんて何処までやまとさんを縛るきなんですか!

「やまとさんを連れ回さないでください!やまとさんにも自分の時間は必要ですし、息抜きもいります!」

「……。」

ぐぬ~ !返事もしない!

「そんなに独占欲が強いと嫌われますよ!!」

「……。」

「わかった、ならあの黒い雫の場所に部屋を作らせろ。世話係は検討する」

今あの場所は取り囲まれていて人が迂回するようにしてある。向こうの世界に意図せず行くのを防ぐためだ。そこに作るとなると二人の王へ行く廊下の途中に部屋ができることになるが…。

確かに、これならやまとさんが好きに自国へ帰れる様に部屋を加工できる。やまとさん以外は基本使わないし会議室にも近いから王も安心かもしれない。

皆には迂回を更にしてもらう事になるが妃の部屋ともなれば納得してくれるはず。

「わかりました。すぐに部屋を増築させます」

「頼んだ」

「王、わかっていると思いますが婚儀までは口づけ禁止ですから!!」

「……。」

ぐぬ~!また黙りこむ!目も合わさない!

「私の前で2回もしています!王が規則破ってどうするんですか!!やまとさんが好きなのはわかりますが絶対駄目です!!」

「わかった……」

返事をいただけたので破ることはないと思いますが……あのやまとさんを前にしたらどんな屈強な人でも誘惑に負けてしまうのでは。気を引き締めなければ!
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