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第2章 壊れたもの同士
第13話
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(本当に……どうしちゃったのかしら……私……)
広い浴室で湯船に浸かりながら、可憐は物思いに耽っていた。生まれて初めてオメガのフェロモンに当てられ、異様な感覚を覚えた。あのまま、宏美のフェロモンに当てられ続けたらペニスが生えたかもしれない。
(……あの感じは……そうに違いないわ)
以前、姉の薫子からアルファ女性は性的興奮を覚えたときにペニスが生えてくること、その前触れが下腹部の熱と違和感であることを教えられていたから。
(でも………ペニスが生えたら、私、お父様やお兄様やお姉様みたいになってしまうの? 相手の意志なんて関係なく、ベータをこき使って、オメガを犯して……嫌、絶対嫌!! )
可憐は自分がアルファであることに嫌悪感を持っている。それは家族をはじめとする周りのアルファの影響だ。彼らは生まれ持った恵まれた素質をまるで自分の力で手に入れたかのように振る舞い、恵まれない者を当たり前のように踏みつけるような奴らなのだ。
大抵アルファはアルファであることに誇りをもつのだが、可憐はどうしても自分がアルファであることに価値を見いだせなかった。
人を見下して、踏みにじって何が楽しいのだ。人権を取り上げられ、心が死んで抜け殻になっている性奴隷たちとセックスして何が楽しいのだ。自分の優秀な遺伝子を残すためだけにオメガを品定めして何が楽しいのだ。父たちは「ベータは私たちに使われるために生まれてきた存在だし、オメガは私たちの遺伝子を残すための産む機械であって、性処理係よ。オメガは私たちの種を欲しがるようにできてるんだから。私たちは彼らを好きなようにする権利があるのよ」などと言う。
しかし、可憐はそうは思えない。自分たちは神ではないのだ。命があり、心があり、意志がある者たちを好きにしていいわけがない。カトリックの学校で神について学んでから、よりいっそうアルファたちのしていることに嫌悪感を抱くようになった。
周りのアルファが楽しんでいること全て、可憐には苦痛なのだ。たとえ「頭がイカレている」と言われても、父たちに賛同することはできない。「イカれたアルファで結構だ」とさえ思っていた。
「父たちのようになりたくない、アルファになんて生まれたくなかった」、そんな思いが可憐のアルファとしての発育を遅らせていたのかもしれない。
父の菫子と姉の薫子のペニスが生えたきっかけが発情期のオメガと接触したことだと聞き、ひたすらオメガとの接触は避けていた。まあ、可憐は送り迎えつきで学校に行き、休日は家に引きこもりがちなので元々オメガと接触する機会はほぼないのだが。しかし、同じ屋根の下で2人きりで暮らすことを強制されたのではもう逃げ場がない。
(神様、私はどうしたらいいのですか……)
宏美に敵意を向けられるのは想定内だった。父から宏美がどんなオメガか聞かされたときから。想い人から裏切られ、ただ同じオメガを好きになったというだけで、家族から勘当され、大勢の前で集団レイプされ、目の前で想い人の首を切られたのでは、さぞかしこの世の全てが憎いだろうと。この世界の支配層にいるアルファなどまして憎いだろうと。それは自分も例外ではないはずだと。それでも自分は彼を性奴隷としてでは無く、人間として扱おうと思った。
そして、宏美と分かり合うには、彼にどんなに責められ、反抗され、攻撃されても、全て受け入れなくてはならないと思っていた。スポンジのように彼の憎しみを一心に受け止めて吸収しようと。アルファの力でもって、彼を抑えつけたり、言うことを聞かせようとしたり、反撃したりしては、彼の言う「クソアルファ」と一緒になってしまう。
しかし、先程彼のフェロモンに当てられ、自分の中のアルファの本能に気づいてしまった。
自分の中のアルファの本能が「今すぐ彼を犯したい、子種を注ぎ込みたい」と叫んでいたのだ。
(私も所詮「クソアルファ」なのかしら……)
可憐は絶望した。自分も彼を傷つけるアルファたちの仲間入りをするのかと。
そしてもう一つ、可憐は不可解なことがあった。
『あんた、全然抵抗しないけど、まさか僕にこういうことされるのが好きなんじゃないだろうね? 』
宏美にそう言われてギクリとした。彼と信頼関係を築くために、何をされても受け止めようと思って彼の攻撃に耐えていただけ………のはずだった。
しかし、彼に酷いことをされているうちに頭の芯がじんととろけていくような気分になっていったのだ。
今まで「支配する者」として相応しいアルファになるように、と教育されてきた可憐。彼女はそれが死ぬほど嫌だったが、アルファである以上、生きている限り「支配層」としての振る舞いが求められるのだ。
だから、「支配されている」という感覚に高揚感と安心感を覚えてしまったのだ。
そして、「下の口にも色々詰め込んでやろうか」と言われたとき、確かに怖かった。しかし、同時に期待もしていた。自分をめちゃくちゃに壊して欲しいと。宏美のものにして欲しいと。
相反する2つの感覚。アルファとしての本能と被虐性欲的な何か。頭の中に「支配したい」という感情と「支配されたい」という感情が同居しているのだ。
(やっぱり私は頭がおかしいんだわ……アルファなのに、オメガの彼に支配されたいなんて……。でも……彼も興奮してた…わよね……)
確かに宏美は可憐を痛めつけてる最中、通常よりも匂いが濃くなっていたし、息も荒かった。上に跨られていたため、彼の股間が太ももや腹部に当たっていた。宏美のそこは固くなっていて、少し湿っているようにも感じた。
『僕を犯せないの? なら、僕があんたを犯すよ? 』
(……あのまま犯されてもよかったのかも……)
こんなこと思ってはいけない。自分は彼を守る立場なのだ。そのつもりで迎えたのだ。犯したいだの犯されたいだの妙な劣情を抱いてはいけない。可憐はそう自分に言い聞かせた。だが、生まれて初めての感覚に体が痺れてくる。
……気がつけば、 秘部に手が伸びていた。このぬめった感触はお湯ではない。実は宏美に痛めつけられている最中もここから愛液が溢れ出してくるのを感じていた。
(……何をしているの……こんなこと汚らわしい……)
性に対しては潔癖なところがある可憐。自慰なんてしたことがなかった。だが、宏美がこの家に来てからというもの、彼の匂いを嗅いでいると少し変な気分になって、それを宥めるために自分を慰めていた。
陰核はあんまり触り続けるとペニスが生えてきそうなのであまり触らなかった。主に弄るのは膣の方だった。アルファ女性にとって膣はベータで言うとアナルのようなものだ。あまり挿入されることを想定されていないので、ベータ女性よりも濡れにくく、ほぐれにくい。だからスムーズに挿入できるようにするにはベータ女性の倍の時間が必要だった。
(……大分ほぐれてきたみたい……)
ここ最近、毎日のように指を入れていたからだろうか。かなり濡れがよくなり、指も2本までなら入るようになった。
(こんなところ、宏美に見られたら何て言われるかしら……)
きっと「卑しいアルファだな。そんなところいじって悦ぶなんて」などと言うに違いない。自分を罵る宏美を想像するとぞくぞくしてきてしまう。
(ああ、宏美、私を犯して、めちゃくちゃにして……)
妖艶で、残酷で、嗜虐的だった先程の宏美を思い出す。自分の舌を引っ張り出したあの白く細く美しい指で掻き回して欲しい。あの固いモノで貫いて欲しい。
(……なにこれ……なにかきちゃう……きちゃう……)
「あっ……!! 」
可憐は華奢な体を軽く痙攣させて達した。
「はぁ………はぁ……」
生まれて初めての絶頂感だった。
(なんてことしてしまったの……私………)
このままお湯に沈んで死にたいくらいの罪悪感。
だが、下腹部がまた熱くなってきてしまった。そしてさっきまで指を入れていたところとは違う場所を弄りたくなる。
(……だめよ、そんなことしたら、生えてきてしまうわ。彼を傷つける「クソアルファ」になってしまうわ)
可憐は何かを振り切るように湯船から出た。
広い浴室で湯船に浸かりながら、可憐は物思いに耽っていた。生まれて初めてオメガのフェロモンに当てられ、異様な感覚を覚えた。あのまま、宏美のフェロモンに当てられ続けたらペニスが生えたかもしれない。
(……あの感じは……そうに違いないわ)
以前、姉の薫子からアルファ女性は性的興奮を覚えたときにペニスが生えてくること、その前触れが下腹部の熱と違和感であることを教えられていたから。
(でも………ペニスが生えたら、私、お父様やお兄様やお姉様みたいになってしまうの? 相手の意志なんて関係なく、ベータをこき使って、オメガを犯して……嫌、絶対嫌!! )
可憐は自分がアルファであることに嫌悪感を持っている。それは家族をはじめとする周りのアルファの影響だ。彼らは生まれ持った恵まれた素質をまるで自分の力で手に入れたかのように振る舞い、恵まれない者を当たり前のように踏みつけるような奴らなのだ。
大抵アルファはアルファであることに誇りをもつのだが、可憐はどうしても自分がアルファであることに価値を見いだせなかった。
人を見下して、踏みにじって何が楽しいのだ。人権を取り上げられ、心が死んで抜け殻になっている性奴隷たちとセックスして何が楽しいのだ。自分の優秀な遺伝子を残すためだけにオメガを品定めして何が楽しいのだ。父たちは「ベータは私たちに使われるために生まれてきた存在だし、オメガは私たちの遺伝子を残すための産む機械であって、性処理係よ。オメガは私たちの種を欲しがるようにできてるんだから。私たちは彼らを好きなようにする権利があるのよ」などと言う。
しかし、可憐はそうは思えない。自分たちは神ではないのだ。命があり、心があり、意志がある者たちを好きにしていいわけがない。カトリックの学校で神について学んでから、よりいっそうアルファたちのしていることに嫌悪感を抱くようになった。
周りのアルファが楽しんでいること全て、可憐には苦痛なのだ。たとえ「頭がイカレている」と言われても、父たちに賛同することはできない。「イカれたアルファで結構だ」とさえ思っていた。
「父たちのようになりたくない、アルファになんて生まれたくなかった」、そんな思いが可憐のアルファとしての発育を遅らせていたのかもしれない。
父の菫子と姉の薫子のペニスが生えたきっかけが発情期のオメガと接触したことだと聞き、ひたすらオメガとの接触は避けていた。まあ、可憐は送り迎えつきで学校に行き、休日は家に引きこもりがちなので元々オメガと接触する機会はほぼないのだが。しかし、同じ屋根の下で2人きりで暮らすことを強制されたのではもう逃げ場がない。
(神様、私はどうしたらいいのですか……)
宏美に敵意を向けられるのは想定内だった。父から宏美がどんなオメガか聞かされたときから。想い人から裏切られ、ただ同じオメガを好きになったというだけで、家族から勘当され、大勢の前で集団レイプされ、目の前で想い人の首を切られたのでは、さぞかしこの世の全てが憎いだろうと。この世界の支配層にいるアルファなどまして憎いだろうと。それは自分も例外ではないはずだと。それでも自分は彼を性奴隷としてでは無く、人間として扱おうと思った。
そして、宏美と分かり合うには、彼にどんなに責められ、反抗され、攻撃されても、全て受け入れなくてはならないと思っていた。スポンジのように彼の憎しみを一心に受け止めて吸収しようと。アルファの力でもって、彼を抑えつけたり、言うことを聞かせようとしたり、反撃したりしては、彼の言う「クソアルファ」と一緒になってしまう。
しかし、先程彼のフェロモンに当てられ、自分の中のアルファの本能に気づいてしまった。
自分の中のアルファの本能が「今すぐ彼を犯したい、子種を注ぎ込みたい」と叫んでいたのだ。
(私も所詮「クソアルファ」なのかしら……)
可憐は絶望した。自分も彼を傷つけるアルファたちの仲間入りをするのかと。
そしてもう一つ、可憐は不可解なことがあった。
『あんた、全然抵抗しないけど、まさか僕にこういうことされるのが好きなんじゃないだろうね? 』
宏美にそう言われてギクリとした。彼と信頼関係を築くために、何をされても受け止めようと思って彼の攻撃に耐えていただけ………のはずだった。
しかし、彼に酷いことをされているうちに頭の芯がじんととろけていくような気分になっていったのだ。
今まで「支配する者」として相応しいアルファになるように、と教育されてきた可憐。彼女はそれが死ぬほど嫌だったが、アルファである以上、生きている限り「支配層」としての振る舞いが求められるのだ。
だから、「支配されている」という感覚に高揚感と安心感を覚えてしまったのだ。
そして、「下の口にも色々詰め込んでやろうか」と言われたとき、確かに怖かった。しかし、同時に期待もしていた。自分をめちゃくちゃに壊して欲しいと。宏美のものにして欲しいと。
相反する2つの感覚。アルファとしての本能と被虐性欲的な何か。頭の中に「支配したい」という感情と「支配されたい」という感情が同居しているのだ。
(やっぱり私は頭がおかしいんだわ……アルファなのに、オメガの彼に支配されたいなんて……。でも……彼も興奮してた…わよね……)
確かに宏美は可憐を痛めつけてる最中、通常よりも匂いが濃くなっていたし、息も荒かった。上に跨られていたため、彼の股間が太ももや腹部に当たっていた。宏美のそこは固くなっていて、少し湿っているようにも感じた。
『僕を犯せないの? なら、僕があんたを犯すよ? 』
(……あのまま犯されてもよかったのかも……)
こんなこと思ってはいけない。自分は彼を守る立場なのだ。そのつもりで迎えたのだ。犯したいだの犯されたいだの妙な劣情を抱いてはいけない。可憐はそう自分に言い聞かせた。だが、生まれて初めての感覚に体が痺れてくる。
……気がつけば、 秘部に手が伸びていた。このぬめった感触はお湯ではない。実は宏美に痛めつけられている最中もここから愛液が溢れ出してくるのを感じていた。
(……何をしているの……こんなこと汚らわしい……)
性に対しては潔癖なところがある可憐。自慰なんてしたことがなかった。だが、宏美がこの家に来てからというもの、彼の匂いを嗅いでいると少し変な気分になって、それを宥めるために自分を慰めていた。
陰核はあんまり触り続けるとペニスが生えてきそうなのであまり触らなかった。主に弄るのは膣の方だった。アルファ女性にとって膣はベータで言うとアナルのようなものだ。あまり挿入されることを想定されていないので、ベータ女性よりも濡れにくく、ほぐれにくい。だからスムーズに挿入できるようにするにはベータ女性の倍の時間が必要だった。
(……大分ほぐれてきたみたい……)
ここ最近、毎日のように指を入れていたからだろうか。かなり濡れがよくなり、指も2本までなら入るようになった。
(こんなところ、宏美に見られたら何て言われるかしら……)
きっと「卑しいアルファだな。そんなところいじって悦ぶなんて」などと言うに違いない。自分を罵る宏美を想像するとぞくぞくしてきてしまう。
(ああ、宏美、私を犯して、めちゃくちゃにして……)
妖艶で、残酷で、嗜虐的だった先程の宏美を思い出す。自分の舌を引っ張り出したあの白く細く美しい指で掻き回して欲しい。あの固いモノで貫いて欲しい。
(……なにこれ……なにかきちゃう……きちゃう……)
「あっ……!! 」
可憐は華奢な体を軽く痙攣させて達した。
「はぁ………はぁ……」
生まれて初めての絶頂感だった。
(なんてことしてしまったの……私………)
このままお湯に沈んで死にたいくらいの罪悪感。
だが、下腹部がまた熱くなってきてしまった。そしてさっきまで指を入れていたところとは違う場所を弄りたくなる。
(……だめよ、そんなことしたら、生えてきてしまうわ。彼を傷つける「クソアルファ」になってしまうわ)
可憐は何かを振り切るように湯船から出た。
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