My destiny

泉 沙羅

文字の大きさ
上 下
5 / 18

第3話

しおりを挟む
(そろそろ来るな……)
真琴は部屋でパソコンに向かいながら、発情期の訪れが近いことを感じていた。
真琴の職業はフリーのライターだ。この国に逃げてくるまで社会経験などなかった。その上、明日果もまだ小さいので、会社勤めなどできないと思い、フリーランスで出来る仕事を選んだ。
(……また周期が狭まってきてる気がする……僕どうなっちゃうんだろう……)
ここ最近発情期の周期が乱れてきている。通常3ヶ月に1回のはずの発情期が2ヶ月に1回、酷い時は1ヶ月に1回くる。理由はわかっている。何年も番を受け入れてないからだ。一種の禁断症状なのだ。こうなると抑制剤の効きも悪くなっていく。医者にも相談したが、こうしたケースは非常に稀なため、特効薬はなく、とりあえず色んな抑制剤を試すしかないらしい。
だが、どれも効果はイマイチだ。
シングルマザー、尚且つ母親がオメガの場合、親が発情期の間は子どもは学校に泊まれることになっている。この頃、発情期不順を起こしている真琴は、頻繁に明日果を学校に泊まらせることが多いので、そのことも明日果の情緒不安定の原因になっている。
今回はこないだのショック療法のおかげもあって大人しく泊まりにいってくれたが、1ヶ月前は「発情期なんて嘘!! ママは私が鬱陶しいだけなんだ!! 」と暴れるわ、手首を切るわで大変だった。なんとかリタたちが宥めてくれたが。
(……千歳ちゃん………一体今頃どうしているの? )
元いた国ではもうFの制度はなくなり、F関連で刑務所行きになった受刑者たちも釈放されたとニュースで知った。……ならきっと千歳も釈放されたはず。自分たちを探し出してくれるはず。
真琴は彼女の母が持ってきてくれた千歳の写真を机の引き出しから取り出した。
千歳の母は心労が祟って5年前に亡くなった。ここに来た時にはほとんど正気を失っていたが、最期にほんの一瞬だけ正気に戻り、枕元に真琴を呼び寄せた。
『真琴さん……私もかつてはあなた達みたいに愛の力を信じていたわ。愛があればなんでも乗り越えられるって思ってた。けど、いつの間にかそんなの綺麗事に過ぎないって思うようになってしまったの。それはきっと自分が愛を失ったからなのよ。だから……あなた達のことわかってあげられなかったの……』
それが最後の言葉だった。
千歳の母が千歳の父からお腹にいた娘ごと捨てられたことを真琴は知っていた。千歳から聞いていたから。
アルファとベータ女性では番になることはできない。子どももだいたいベータで、アルファが生まれてきたとしてもかつての千歳のような能力の低いアルファしか生まれない。だから、アルファがベータを伴侶に選ぶことは稀だ。
それでも千歳の母は千歳の父を愛し、添い遂げようと思っていた。どんなに周りから反対されても。
ところが、現実は残酷だった。
……真琴は千歳の母から「馬の骨」だの「訳の分からないやつ」だの散々言われたが、ちっとも反感をもってなかった。
彼女がそんな考えを持つ背景を知っていたし、千歳を産んでくれたことに感謝してもいた。
最期は彼女を庭に咲いていた白い薔薇で埋め、送り出してあげた。

(千歳ちゃん……早く僕を犯しに来て……もう限界だよ、ここが疼いて仕方ない……)

真琴はベッドに横たわり、千歳の写真を傍らに置くと、慌ただしい手つきでスラックスと下着を脱いだ。そしてもう既に愛液でドロドロにぬめっている後孔に手を伸ばした。
写真の中の千歳はまだ出会った頃の女子高生のままだった。長い黒髪をお下げにし、清楚に制服を着こなし、凛とした眼差しをこちらに投げかけている。
生きていれば彼女も、もう27歳。どんな大人の女性になっているのだろうか。きっと美しさに磨きがかかっていることだろう。
大人になった彼女を想像して、指の動きが速くなる。ぐちゃぐちゃと卑猥な音が立つ。真琴の指は長いため、欲しい部分にすぐ届くが、やはり千歳自身には敵わない。だが、もうあの狂おしいほどの快楽をもたらしてくれた彼女の熱の記憶も色あせつつあった。それでもなんとか記憶の彼方からその感覚を呼び戻そうとする。
「ひぃ……っ…んっ!! 」
声を出すわけにはいかないと、手で口をふさぐ。隣にいる宏美に聞かれたら後でなんと言われるか。
ハンカチを咥えて喘ぎ声を抑え、自身にも手を添えて擦りあげる。
「んんっ……!! 」
発情期のオメガの体はとても敏感だ。開始1分足らずで達してしまった。
「ふっ……ぐっ……」
自身から透明な液体がポタポタと滴っていた。オメガ男性の体ではほとんど精子が作られない。
発情期のオメガは快楽に貪欲であるから、たった1回達しただけで収まるわけはない。まだ自身は堅さを保っており、後孔の疼きも収まる気配はない。
……発情期だからか? それだけか?
……違う。千歳への想いは「発情期以外マグロ」と言われるほど淡泊だった真琴を淫乱にした。あの修道院の旧聖堂で彼女と出会ってから、発情期以外のときも毎晩のように自分を慰め、何回も果てた。彼女に犯される自分を想像しながら。
そして終わった後は「綺麗な彼女を妄想で汚すなんて最低だ」と自己嫌悪に陥っていた。
彼女と番になった今では違う意味で似たような感情を持っている。
彼女は今、危険な目に合ってるかもしれないし、刑務所で迫害されて傷ついてるかもしれないのに。愛しているならただただ、彼女の身を案じてさえいればいいのに、こんな劣情まで抱くなんて不謹慎ではないかと。
だが、体は彼女を求めて求めて止まらない。
達したばかりだというのにまた手を動かし始める。
シーツをドロドロに汚すほど溢れている体液を1度拭うくらいすればいいものを、そんな余裕もないらしい。
「んんっ………!! 」
1度達すると、2度目からは絶頂までの間隔が、短くなっていく。今度は30秒ほどで達した。
まだまだ疼きは収まらない。後孔の入れた指を2本から3本に増やし、強めにガツガツと動かす。自身を握っている手にもより力を入れて擦る。
「ふっ……!! 」
(もうダメ……出る……出ちゃう!! ああ、千歳ちゃん……)
2回目までとはレベルの違う絶頂感に真琴はその華奢な体を引き攣らせる。色んな意味のこもった涙が溢れ出す。
「んっ……っ!!! 」
次の瞬間、自身から先程までとは違ったサラサラとした液体を勢いよく吹き出していた。ぴしゃぴしゃとシーツの上に零れ落ちる。
全てを出し切った脱力感に真琴はぐったりとなった。口に突っ込んでいたハンカチも取り出す。
「はあ……はあ……はあ……」
自身は「もう何も出ません」と訴えているのに、まだ後孔の疼きは収まらない。これは多分ここにモノを受けいれるまで収まらないのではないか。発情期の周期が短くなっているのに加えて症状もどんどん激しくなってきている。このままだとどうなるのか。死ぬのか。
(もう……やんなっちゃうよ……苦しいよ……)
さすがに自分の体が鬱陶しくなってくる。
そのとき、ドアをノックする音が聞こえた。
「頑張ってるねー、でもまだ足りないでしょ?
手伝ってあげるよ? 」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

AV研は今日もハレンチ

楠富 つかさ
キャラ文芸
あなたが好きなAVはAudioVisual? それともAdultVideo? AV研はオーディオヴィジュアル研究会の略称で、音楽や動画などメディア媒体の歴史を研究する集まり……というのは建前で、実はとんでもないものを研究していて―― 薄暗い過去をちょっとショッキングなピンクで塗りつぶしていくネジの足りない群像劇、ここに開演!!

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

処理中です...