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41章 オーガ
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41章 オーガ
翌朝、空は晴れ渡っていた、
しかし、大変な報告が入った。 ニバール国に行く道が土砂崩れで通行止めになっているという。
「帰る道があるにはあるのですが······」
ナックルは顔を引きつらせて言う。
「牛車が通れないのですか?」
「いいえシーク様。 確かにこちらの道よりは整備されていませんが、通れない事はない···のですが······」
なんだか歯切れが悪い。
「あの高い三連の山の辺りは魔物の巣窟になっておりまして······」
巣窟? どんな魔物がいるのだろう? しかし、俺はどんな魔物が来ようと負ける気はしなかった。
「そうですか。 でも俺とフェンリルやスーガもいるので大丈夫でしょう。 必ず護りますから」
それよりも、アンドゥイ国王から預かった書簡を早くガドルに渡したかった。
「そこまでおっしゃるのであれば、お願いします」
商隊は東寄りの三連の山の前を通る地図に載っていないコースを取った。
確かに道は良いとは言えないが、通れなくはない。 このまま問題なく着くのではないかとも思われた。
翌日の昼過ぎ、森の中を進んでいると、遠くで何かが争っている声がする。
「ナックルさん、ちょっと見てきます。 とりあえず結界を張っていきますのでここでしばらく休んでいてください。 スーガも来てくれ!」
結界を張って、俺たちは声がする方に急いだ。 何かブオォォォンという低い振動音が聞こえてきた。
「な···なんだあれは?!」
大きさが3メルクほどある巨大な蜂が100匹近くの群れで人を襲っている。 その人達も果敢に戦っているが、数が違いすぎる。今まさに2人が蜂につかまって連れさられていくところだった。
『風カッター!!』
飛んでいる蜂2匹を風カッターで斬ると、人をつかんだまま地面に落ちてった。
先に下で戦っている人たちの周りに結界を張った。 これであの人達が蜂に襲われる心配はなくなった。
十数人いる。 突然結界を張られて戸惑っているようだが俺には気にする余裕はない。
「スーガ、蜂を竜巻で纏められるか?」
「やってみる! キリル、手伝ってくれ」
「了解!」
スーガの手元で風が渦巻き始めたかと思うと、次第に大きくなってきた竜巻が巨大蜂に向かって飛んでいき、益々大きくなりながら巨大蜂を次々に呑み込んでいく。
木々が邪魔をして、なかなか捕まえられないようだが、小さな竜巻を作って大きな竜巻に運んでいる。 なかなか考えている。
その間にも巨大化したフェンリルは離れた蜂たちを次々に攻撃している。
先ほど蜂と共に落ちて行った人の所へ急いだ。
まだ竜巻に捕まっていない巨大蜂がこちらに向かってくるが、巨大化したフェンリルが倒してくれるので周りを気にせずに落ちた人の所へ駆けつける事ができた。
まだヒクヒクしている巨大蜂にとどめを刺してからその人を見ると······
えっ?···角がある?
人ではなかった。 鬼?······オーガだ!
体がホグスよりもデカいように思える。
とにかく、二人とも息があるので回復をする。
その時、目の前の草むらからガサガサと音がした。 顔を上げるとバカでかいムカデの大きな複眼と目が合った。
「わぁ! 岩の剣!」
頭部だけで1メルクほどありそうな巨大ムカデの頭を岩の剣で串刺しにして地面に縫い付けた。 不気味で真っ赤な節のある体と何本も規則的に並ぶ足をうねるように動かし、地面に縫い付けた剣から逃れようとあがく。
俺の岩魔法の強度はかなり上がっていて、今では鋼より硬くすることができる。 要するに、普通の剣ならこの岩の剣で斬ることができるほどだ。
「蜂だけじゃないのかよ······」
冷汗を拭い、再び回復を始めた時「シーク! 危ない!!」という声が聞こえた。
顔を上げると、ムカデの毒がある巨大な尻尾が反り返って俺の目の前にあったのだ。
「あっ!」
その時、銀色の影が前を横切り、毒のある尻尾と共に視界から消えた。
「フェンリル!」
「お前は油断する事しか知らんのか!!」
食いちぎった尻尾を投げ捨てるように吐き出しながら怒鳴る。
「助かった」
「油断するなよ! レイ! お前がしっかり見張っておけ!!」
「う···うん」
そう言うとまた蜂の所に走っていった。
しかしゆっくりしている暇はない。 ある程度の回復をしてから二人を他の人···いや···オーガがいる結界まで運ぶ事にした。
もちろんこんなでかい奴を担ぐことはできないが、俺には重力操作魔法がある。
2人の腕をつかんで重力操作魔法をかけると、重さを感じずに持ち上がる。
二人を抱えて···というより掴んで結界に中に入ると、俺に向かって中のオーガたちが構える。
みんなが2メルク以上の巨漢で、女もいるのだが、俺よりデカい。 みんなガッチリしていて、驚くほど引き締まっている。 女も筋肉質だが、かなり大きめのバストをしていた。
自然とそこに目が行ってしまう······つい······
1本から3本の角が頭に生えていて、みんなが長い髪を後ろで纏め、キレイな鳥の羽飾りを付けていた。
男は獣の皮を腰に巻いていて、女はそれと胸にも皮を巻いている。
弓を持っている者もいるが、全員が大きめの剣を携帯していた。
それを俺に向かって構えている。
怖いからやめてくれよ。
しかし今は彼らにかまっている暇はない。 すぐに結界から出てスーガの元に急ぐと、ほぼ全ての巨大蜂が竜巻に閉じ込められていた。
フェンリルも戻ってきた。
「そこの中にいる奴ら以外はすべて倒した」
「わかった。 スーガ、竜巻を高く少し離れた所まで上げてくれ」
巨大な竜巻が高く上がっていく。 100メルク以上ある竜巻の中では巨大蜂が風に巻かれて成すすべなく回っている。
「その辺でいいか。 スーガ、解いていいぞ」
スーガが竜巻を止めると同時に巨大蜂たちを大きな結界に閉じ込め、『爆雷』と唱えると、結界の中でもの凄い轟音と目を開けていられないほどの閃光が起こった。
ズドドドドドォォォ!!
目を開けると、結界を解いた場所から、巨大蜂が粉々の炭になって降ってきた。
「よし!」
翌朝、空は晴れ渡っていた、
しかし、大変な報告が入った。 ニバール国に行く道が土砂崩れで通行止めになっているという。
「帰る道があるにはあるのですが······」
ナックルは顔を引きつらせて言う。
「牛車が通れないのですか?」
「いいえシーク様。 確かにこちらの道よりは整備されていませんが、通れない事はない···のですが······」
なんだか歯切れが悪い。
「あの高い三連の山の辺りは魔物の巣窟になっておりまして······」
巣窟? どんな魔物がいるのだろう? しかし、俺はどんな魔物が来ようと負ける気はしなかった。
「そうですか。 でも俺とフェンリルやスーガもいるので大丈夫でしょう。 必ず護りますから」
それよりも、アンドゥイ国王から預かった書簡を早くガドルに渡したかった。
「そこまでおっしゃるのであれば、お願いします」
商隊は東寄りの三連の山の前を通る地図に載っていないコースを取った。
確かに道は良いとは言えないが、通れなくはない。 このまま問題なく着くのではないかとも思われた。
翌日の昼過ぎ、森の中を進んでいると、遠くで何かが争っている声がする。
「ナックルさん、ちょっと見てきます。 とりあえず結界を張っていきますのでここでしばらく休んでいてください。 スーガも来てくれ!」
結界を張って、俺たちは声がする方に急いだ。 何かブオォォォンという低い振動音が聞こえてきた。
「な···なんだあれは?!」
大きさが3メルクほどある巨大な蜂が100匹近くの群れで人を襲っている。 その人達も果敢に戦っているが、数が違いすぎる。今まさに2人が蜂につかまって連れさられていくところだった。
『風カッター!!』
飛んでいる蜂2匹を風カッターで斬ると、人をつかんだまま地面に落ちてった。
先に下で戦っている人たちの周りに結界を張った。 これであの人達が蜂に襲われる心配はなくなった。
十数人いる。 突然結界を張られて戸惑っているようだが俺には気にする余裕はない。
「スーガ、蜂を竜巻で纏められるか?」
「やってみる! キリル、手伝ってくれ」
「了解!」
スーガの手元で風が渦巻き始めたかと思うと、次第に大きくなってきた竜巻が巨大蜂に向かって飛んでいき、益々大きくなりながら巨大蜂を次々に呑み込んでいく。
木々が邪魔をして、なかなか捕まえられないようだが、小さな竜巻を作って大きな竜巻に運んでいる。 なかなか考えている。
その間にも巨大化したフェンリルは離れた蜂たちを次々に攻撃している。
先ほど蜂と共に落ちて行った人の所へ急いだ。
まだ竜巻に捕まっていない巨大蜂がこちらに向かってくるが、巨大化したフェンリルが倒してくれるので周りを気にせずに落ちた人の所へ駆けつける事ができた。
まだヒクヒクしている巨大蜂にとどめを刺してからその人を見ると······
えっ?···角がある?
人ではなかった。 鬼?······オーガだ!
体がホグスよりもデカいように思える。
とにかく、二人とも息があるので回復をする。
その時、目の前の草むらからガサガサと音がした。 顔を上げるとバカでかいムカデの大きな複眼と目が合った。
「わぁ! 岩の剣!」
頭部だけで1メルクほどありそうな巨大ムカデの頭を岩の剣で串刺しにして地面に縫い付けた。 不気味で真っ赤な節のある体と何本も規則的に並ぶ足をうねるように動かし、地面に縫い付けた剣から逃れようとあがく。
俺の岩魔法の強度はかなり上がっていて、今では鋼より硬くすることができる。 要するに、普通の剣ならこの岩の剣で斬ることができるほどだ。
「蜂だけじゃないのかよ······」
冷汗を拭い、再び回復を始めた時「シーク! 危ない!!」という声が聞こえた。
顔を上げると、ムカデの毒がある巨大な尻尾が反り返って俺の目の前にあったのだ。
「あっ!」
その時、銀色の影が前を横切り、毒のある尻尾と共に視界から消えた。
「フェンリル!」
「お前は油断する事しか知らんのか!!」
食いちぎった尻尾を投げ捨てるように吐き出しながら怒鳴る。
「助かった」
「油断するなよ! レイ! お前がしっかり見張っておけ!!」
「う···うん」
そう言うとまた蜂の所に走っていった。
しかしゆっくりしている暇はない。 ある程度の回復をしてから二人を他の人···いや···オーガがいる結界まで運ぶ事にした。
もちろんこんなでかい奴を担ぐことはできないが、俺には重力操作魔法がある。
2人の腕をつかんで重力操作魔法をかけると、重さを感じずに持ち上がる。
二人を抱えて···というより掴んで結界に中に入ると、俺に向かって中のオーガたちが構える。
みんなが2メルク以上の巨漢で、女もいるのだが、俺よりデカい。 みんなガッチリしていて、驚くほど引き締まっている。 女も筋肉質だが、かなり大きめのバストをしていた。
自然とそこに目が行ってしまう······つい······
1本から3本の角が頭に生えていて、みんなが長い髪を後ろで纏め、キレイな鳥の羽飾りを付けていた。
男は獣の皮を腰に巻いていて、女はそれと胸にも皮を巻いている。
弓を持っている者もいるが、全員が大きめの剣を携帯していた。
それを俺に向かって構えている。
怖いからやめてくれよ。
しかし今は彼らにかまっている暇はない。 すぐに結界から出てスーガの元に急ぐと、ほぼ全ての巨大蜂が竜巻に閉じ込められていた。
フェンリルも戻ってきた。
「そこの中にいる奴ら以外はすべて倒した」
「わかった。 スーガ、竜巻を高く少し離れた所まで上げてくれ」
巨大な竜巻が高く上がっていく。 100メルク以上ある竜巻の中では巨大蜂が風に巻かれて成すすべなく回っている。
「その辺でいいか。 スーガ、解いていいぞ」
スーガが竜巻を止めると同時に巨大蜂たちを大きな結界に閉じ込め、『爆雷』と唱えると、結界の中でもの凄い轟音と目を開けていられないほどの閃光が起こった。
ズドドドドドォォォ!!
目を開けると、結界を解いた場所から、巨大蜂が粉々の炭になって降ってきた。
「よし!」
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