私の好きな人は、どうやら想い人がいるようです。

気まずい関係

俊樹と出来るだけ顔を合わさないようにしたかったが、バイト先のシフトが重なっていれば、どうにもならず…。
二人きりには、ならないように心掛け生活した。


あの後は…直ぐに俊樹の家を出て帰宅した。
俊樹に家迄送ると言われたが、強く断った。

それからは、話していない。
俊樹の行動に意味があったのかも解らず、聞くのも怖い。


樹杞からは何度かあの後の事を訊かれたが、真実は話せないので…少し休ませて貰った…とだけ話していた。
樹杞から詳しく訊かれるのも困る為、暫くカフェのお誘いも断っていた。



そんな時、由希から声を掛けられる。
「楓ちゃん。最近見ないからどうしてたのかと思って」
由希が心配そうに様子を伺ってくる。

「最近、課題の方が大変で…余り時間が取れない感じですね」
実際、課題の量も多かった為、嘘ではない。

「俊樹とケンカでもしたのかと思ったんだけど、そうでも無いのかな？最近、俊樹と樹杞…二人と一緒にいない様だから心配で…」
「ケンカとかは…無いです。ただ、忙しくしていただけで、そのうち課題の方も落ち着くと思います」

「でも、俊樹とは何かあったんじゃないの？この間、俊樹の家に行った時とか？」

由希がその事を知っていた事に、胸がザワつく。
「何も、無いです。ちょっと休んで、直ぐに帰ったので…」
由希は俊樹か樹杞のどちらからか話を聞いているのだろう。
「そうならいいんだけどね」
私と俊樹の事を疑っているように見える。

当然、自分の彼と仲良くされるのは嫌なんだと思うし、俊樹との事を誤解されて二人が上手く行かなくなることを望んではいない。

「家に行ったのも、初めてで。樹杞さんと食事した時に少し飲み過ぎちゃって…一人で帰れそうになるまで休ませて貰いました」

「それで無事に帰れたなら良かったけど…樹杞が心配してたから、私も心配だったの。楓ちゃんの時間が空いたらまた、樹杞のカフェ通いに付き合ってあげてね」

言い終えると、由希はじゃあねと手を振って去って行った。