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恋人
しおりを挟む彼女との関係は続いている。
俺の中では順調だと感じていた。
しかし、彼女から誘われた事は無く、でも俺からの誘いは断らない。
身体も何度も重ねているし、それも断る事はない。
嫌がりもしない…。
考えれば、俺の一方通行の様な気もしてくる。
彼女の気持ちが本当は何処にあるのか、どう思っているのか理解出来ていないのだ。
確認…しないと?
彼女の気持ちを…知りたい。
彼女の仕事が終わった頃、連絡を入れる。
俺の方が早く終業だった為、一旦自宅へ帰宅していた。
彼女と連絡が取れると、彼女が俺のマンションへ来る事に決まった。
しばらくして、彼女が玄関のチャイムを鳴らした為迎え入れる。
いつもの様に、リビングのソファに二人で座る。
軽くキスをして彼女を肩に引き寄せる。
「奨瑚さん……どうしたんですか?」
何時もと違う俺の仕草に、彼女が尋ねてくる。
「鈴音からは、誘われた事ないなって思って…」
その言葉に彼女が固まったのが分かった。
「…………」
返事が無い為、彼女と視線を合わせ表情を窺う。
「鈴音…?」
俺と見つめ合っていると、彼女の瞳が濡れていく。
状況が掴めず彼女の目尻に触れる。
「私…からは…誘えない…です」
彼女の言葉の意図が理解出来ない。
「どうして?」
「奨瑚さん…他に本命いるんじゃ…ないんですか…?」
何故、そう言う話に……?
「本命って…いないけど?」
「奨瑚さん……新山さんと…」
やっぱり新山か…。
心当たりがあるせいか嫌な予感しかない。
「何か言われたりした?」
静かに頷いた彼女。
新山…拗らせやがって。
もう、新山の誘いには乗らないと心に誓う。
「奨瑚さんと食事したとか、送ってもらったとか…。他にも、色々と嬉しそうに話して来るので…本当は奨瑚さんは新山さんの方がいいのかと思って……それに、奨瑚さんから好きって言われた事も…………無いから…」
その続きを声に出来ず、彼女は涙を流している。
俺が、はっきり言えなかったから…不安にさせてしまっていた。
俺が悪かったのに、彼女を疑ってしまった事で俺自身が許せない。
「鈴音以外にって事は…絶対に無い。俺が好きなのは鈴音だけだし、大切にしたいのも鈴音だけだよ。信じて欲しい」
今まで素直に言えなかったから、此処まで彼女を追い詰めてしまった。
今、言っても信じて貰えないかも知れないが…今後は、何度でも伝えていけばいい。
「好き…?」
「好きだよ」
俺は彼女の瞼に口付ける。
「泣かなくてもいいし、鈴音は俺にもっと言いたい事言っていいんだよ」
彼女が俺の胸に顔を押し付けて来る。
「俺は、恋人だと思ってたよ?鈴音は俺が一度に何人もと遊んでるとか思ってたなんて……傷つくな…」
慌てて顔を上げる彼女。
「傷ついたって所は、冗談だよ。俺がはっきり言わなかったのが悪いんだから……ごめんな…鈴音、愛してる」
また涙を流してしまった……。
そんな彼女に気持ちが伝わるよう…彼女の唇に俺のを重ねる。
そして、本当の意味で恋人になった二人は……。
**********************
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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