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無慈悲なゴング

傍観者の引退

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(革派の羅豪?聞いた事がない名前だ。でも菖蒲さんが問い詰めるくらいだから余程の大物だろう。それに酒菊丸って……)

豪場はニヤッと笑い

「教えるかよバーカ」

と血を菖蒲さんに吹きかけた。が、いつの間にか菖蒲さんは彼の後ろにいた。

「ダメだよ~、ただでさえ血がドバドバ出てんのに。まぁ、その反応からするに僕の考えはビンゴだったわけだ。じゃ、最後の質問、楽に逝く?苦しんで逝く?」

まさに究極の二択が菖蒲さんの口から発せられようとは!普段の温厚な彼を知ってる分、ショックは大きかった。

豪場は最後の捨て台詞をここぞとばかりに吐いた。

「俺は死なない。何故ならたくさん命を奪ってきたからだ。殺した分だけストックが貯まる。まさしく最強の宗教!クジャ鳳教は偉大だ!お前も入るといい。助けてやらせるなら紹介しよう、なあブラザー。」

「くだらねぇ」 

「あっ?」

僕は思わず口ずさんでしまった。

「テメェ、もっぺん言ってみろ!!」

「何回も言いたいのは山々だが、アンタはもうすぐ死ぬみたいだし。二度言うのも面倒。どうやらアンタは人間ではないみたいだけど、僕から見ると『命』はある。なのに『命』の大切さに気づけないアンタが堪らなく可哀想だ。誰にとってもにとって『命』ってのは尊く脆い物なんだ。不慮の事故で亡くなる方もいれば、病気で亡くなる方もいる。そうならないために日々いろんな事に気をつけて生きている。常に『命』を自分で守りながら日々を過ごす、それが『人生』なんじゃないのか!!老若男女関係ねぇ、人間舐めんなよ畜生!!!」

「だとよ、どうよ豪場」

菖蒲さんがヘラヘラしながら聞いた。

「悪いな、俺は……クジャ鳳教だ!今すぐにでもお前の心臓を突き刺してやりたいねぇ。そうすれば『命』のストックができる」

豪場はニヤけながら言った。

「まっ、と言うわけだ二木君。宗教というものは生きがいにもなっている。だから世の中争いが終わらんのよね。さてと、君はこいつの結末を見る覚悟はあるかい?」

僕は大きく頷いたが、ザシコは

「見てはならぬ!!マコ!目を閉じろ!!マコォォォォォォォ!!」


ザシコの咆哮も虚しく、菖蒲さんは豪場の首をもぎ取った。僕は一つの動作も忘れないように目に焼き付けた。


もう傍観者は嫌なんだ。その思いだけで、うつ向いた顔を上げてその光景を見ていた。


数日後、帰宅する電車の中で菖蒲さんに質問をぶつけた。

「ザシコはさ、あの場で豪場に勝ったけど、その前はボロボロだったんだ。何でだと思います?」

僕の素直な疑問だった。

『ザシコに神三体。余裕で勝てる気がするのが普通だと思う。それなのにまるで圧倒的に負けたかの様にボロボロになって帰ってきた』

その質問に対して菖蒲さんは

「『条件下』が関係してたのかもね。豪場って案外足が速くてさ。一度逃すと二木君達の元に来て危害を加える可能性がある。それを考慮して敢えてその場でやられたフリをしてたのかも。現に二木君の家を知ってたわけだし」

なるほどと思った。トンネルに入ると窓に菖蒲さんのニコッとした顔が映っていた。僕は敢えて窓に映る菖蒲さんに笑顔で応えた。
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