79 / 129
四葉のクローバー
景色は変わらない変わるのは……
しおりを挟む
今日は病院に午前中に来たはいいものの、検診の時間帯と被ってしまい、少し暇を持て余した。そこで親父は近場のホームセンターで電池などを買ってくるとスタスタと行ってしまった。僕は外は暑いから病院内をぶらぶらする事にした。ボソッと
「ザシコッ」
と呼ぶと、前の方にかけていたショルダーバッグからピョコッと
「なんじゃ」
と顔を出した。
「母さんの検診まで病院内をブラブラしようと思うんだ」
「趣味悪いぞ貴様」
「いや、外は暑いっての」
いつもは3階の病棟だから7階から行ってみようと思った。7階からの景色は、普段下から見上げた事がない建物が見えたり、すごーく綺麗には見えないけれど、一応海が見える。こんな景色でも、病院から出られない人からすると格別に見えるのだろうか。
「マコ、綺麗な景色じゃと思うか?」
ザシコは一度も顔をこちらに向ける事などなく、その景色を見ながら言った。
「綺麗だと思うよ。雨の日でも曇りの日だろうとも。なんでだろうなぁ。その時の心の余裕みたいなものもあるのかも。そして今、『一緒に見たい人』と見てるからかも!」
「そうか……。ひとりぼっちは寂しいものじゃて……。ワシも綺麗だと思うぞ?この景色」
暫く眺めた後、6階に降りた。そこは少し異質だった。目の前が何もないただの壁で、矢印の方向に「透析室」と書いてあった。
聞いた事はある。しかし実際見た事はない。本来なら興味本位で覗き見しに行ったりするのだろうが、この時は何か怖くて直ぐにエレベーターに戻った。
「今の判断、賢明じゃ」
ザシコが言うが、考えての行動というよりも、本能的にヤバいと感じたからだ。いつもの3階のボタンを押してついた瞬間ホッとした。病院に着いてホッとしたなんて感情はこれからの人生、何回感じる日が来るのだろうか。想像できなかった。
(一階のコンビニで何か買うかな)
そう思ってもう一度エレベーターに乗った。するとある事に気が付いた。一階のボタンの下にB 1Fというボタンがあった。それを押してみようとすると、ザシコが優しく制した。
「まだじゃよ。まだ」
「まだ?」
てっきり叱られると思った。でもこの時のザシコは色っぽく、それでいてとても悲しそうで儚げで。暫く固まってると一階にに着いた。
「さて、美味しそうなのでも食べさせて貰おうかのぅ」
先程とは違う。いつものザシコだ
「任せとけって!ここの自販機のヴァン○ーテンのアイスドリンクは美味いぞ~?」
「なぬ!?それはそれは」
それを購入して一口だけ貰ってザシコにあげた。うまうまとゴクゴク飲んでいたのを見て、少しホッコリした僕であった。
「ザシコッ」
と呼ぶと、前の方にかけていたショルダーバッグからピョコッと
「なんじゃ」
と顔を出した。
「母さんの検診まで病院内をブラブラしようと思うんだ」
「趣味悪いぞ貴様」
「いや、外は暑いっての」
いつもは3階の病棟だから7階から行ってみようと思った。7階からの景色は、普段下から見上げた事がない建物が見えたり、すごーく綺麗には見えないけれど、一応海が見える。こんな景色でも、病院から出られない人からすると格別に見えるのだろうか。
「マコ、綺麗な景色じゃと思うか?」
ザシコは一度も顔をこちらに向ける事などなく、その景色を見ながら言った。
「綺麗だと思うよ。雨の日でも曇りの日だろうとも。なんでだろうなぁ。その時の心の余裕みたいなものもあるのかも。そして今、『一緒に見たい人』と見てるからかも!」
「そうか……。ひとりぼっちは寂しいものじゃて……。ワシも綺麗だと思うぞ?この景色」
暫く眺めた後、6階に降りた。そこは少し異質だった。目の前が何もないただの壁で、矢印の方向に「透析室」と書いてあった。
聞いた事はある。しかし実際見た事はない。本来なら興味本位で覗き見しに行ったりするのだろうが、この時は何か怖くて直ぐにエレベーターに戻った。
「今の判断、賢明じゃ」
ザシコが言うが、考えての行動というよりも、本能的にヤバいと感じたからだ。いつもの3階のボタンを押してついた瞬間ホッとした。病院に着いてホッとしたなんて感情はこれからの人生、何回感じる日が来るのだろうか。想像できなかった。
(一階のコンビニで何か買うかな)
そう思ってもう一度エレベーターに乗った。するとある事に気が付いた。一階のボタンの下にB 1Fというボタンがあった。それを押してみようとすると、ザシコが優しく制した。
「まだじゃよ。まだ」
「まだ?」
てっきり叱られると思った。でもこの時のザシコは色っぽく、それでいてとても悲しそうで儚げで。暫く固まってると一階にに着いた。
「さて、美味しそうなのでも食べさせて貰おうかのぅ」
先程とは違う。いつものザシコだ
「任せとけって!ここの自販機のヴァン○ーテンのアイスドリンクは美味いぞ~?」
「なぬ!?それはそれは」
それを購入して一口だけ貰ってザシコにあげた。うまうまとゴクゴク飲んでいたのを見て、少しホッコリした僕であった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる