あの日の後悔と懺悔とそれと

ばってんがー森

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四葉のクローバー

長考

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母の検査の結果は軽い肺炎だった。家族全員肩の荷が降りた気がした。しかし、持病プラス肺炎だ。軽視はできない。診断結果は分かっても、母自身が息苦しいのは変わらないのが、僕には心苦しかった。その日は閉館まで親父、兄貴、僕とザシコの四人がいた。やはり病院というものは負のオーラが漂っているらしく、目に見えない分、不気味にも感じた。

「母さん、今日はもう閉館だから明日また早めに来るから」

親父が優しく言う。本当に自衛官かと言うくらい優しく。

「あ~、俺は明後日来れたらなるべく来る」

兄貴がボケーっとしながら言う。あぁ、一度くらい埋めてやっても良いのかな?でも、今日、真っ先に駆け付けてたのは兄貴だったのだ。こういうツンデレな感じがモテる要素なのだろう。クソが。

「明日も来るから!」

あぁ、何という端的で力強い言葉なのだろうか。自画自賛してしまう。しかし母は息苦しそうにしながらこう言った。

「当たり……前でしょ」

僕は岩石のように砕け散った。まぁ、何と言われようと来ることには変わりない。笑顔でその場で乗り切った。

兄貴を駅まで送り届けた後、コンビニで弁当を買い、家で食べながら早めに就寝した。親父には親父の。僕にはやることがある。

ザシコとの作戦会議は困難を極めた。しばらくすると、僕はザシコの微妙な後ろめたさというか、何か言い辛そうな雰囲気があった。とても質問したい衝動に駆られたが、そこはグッと堪えた。人の心にズカズカと土足で踏み躙るのは嫌いだからだ。とはいえ、このままでは何も進まない。その時ザシコが重い口を開いた。

「踏み入れたら戻れる保証はない。もちろん全員。そんな賭けをする勇気があるか。その場での勢いでの賛成、否定ではなく、良く考えての結論でじゃ」

いつになくザシコは険しい顔をしているが、どことなく儚く見えた。

「内容によるんじゃないかな?」

僕がそう言った直後、ザシコは

「時間がないのじゃ!ここでじゃ!ここで決めるのじゃ!!今、ここで……でないと……」

僕はザシコがこの場面で怒鳴り声を上げることなど想像していなかった。彼女なりに覚悟のある発言をしていたというのは後から分かった。

「ザシコが何を考えているのか分からないけど、僕の無茶に疑わずついてきてくれたんだ。乗るよ。その賭けに」

ザシコは後ろを向き裾で目を擦ってるように見えた。だから気を利かせて僕は

「ザーシコッ」

と言ってきなきな粉味の麩菓子を渡した。

「こ、これは……?」

「食べてみんしゃい」

「グスッ、では遠慮なく。モグモグ。こ、これはサクサクとは違うサクサクじゃ!しかも、直ぐとろけてしまう!まだ無いのか!」

「ほれ、『一緒』に食べよう?」

「し、仕方がないのぅ」

ツンデレも案外可愛いものだと思う、僕なのであった。全く、先程のシリアスさはどこへやら。
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