あの日の後悔と懺悔とそれと

ばってんがー森

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四葉のクローバー

11510の証

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雪見は涙声で

「これからどうしよっか?」

と空を見上げながらこれからについて尋ねてきた。僕は折りシワがついた一度も使用したことがないハンカチを雪見に渡し、

「少し考えさせて」

と猶予をもらって必死にこの空気を打開する術を考えた。

(溜まってた思いを吐き出すとやはり人は涙を流すのだろうか。なら僕は……。)

「景気づけに鶴岡八幡宮へ参拝しに行かない?二人とも厄が落ちる様にさ」

その場しのぎの提案だったが、雪見はハンカチで涙を拭いながら無言で頷いてくれた。母が元気だった頃は正月に毎回訪れていた場所なのに、今日はとても新鮮に感じた。でも、それが少し寂しかった。人も疎らでこんなにもスムーズに本殿まで行ける。階段前の規制線もない。本殿についた僕達は、とりあえずお祈りをすることに。僕は賽銭箱に「1円、1円、5円、10円」の順番で投げ入れ、鈴緒を持って鈴をガラガラ鳴らし、二礼二拍手一礼した。それを横から見ていた雪見は

「何でまとめて賽銭箱に入れなかったの?」

と質問してきたので

「いや、色々語呂合わせを考えてたんだけど、とりあえず僕だけでなく雪見、家族、友達にも良い事があればなぁって思って、『1、1、5、10でイ、イ、コ、ト』って。くだらないでしょ?笑」

僕は鎌倉に着いて初めて笑顔になった気がする。雪見は

「私はそういうの、意外と好きよ」

と笑顔を見せてくれた。やはり笑った顔は良いと思ってしまった。それから湘南の海沿いを歩いた。海は良い、でも、相模湾の海より横須賀から見る東京湾の方が良いなぁと思ったのは感性の違いか、それとも海と僕の間に砂浜があるせいなのか。

「今日は随分サーファーとかヨットが出てるみたいね」

「そうだね、気持ちよさそうだけど僕は海は怖いな笑」

「そうなの?」

「うん。基本的に山と川と海は舐めてはいけないよ。プールが一番安全!」

「何それ(笑)」

「ここは拘らせてもらうけど、『流れる』プールね!浮き輪に跨ってただ流されていたい」

「それはわかるなぁ、クラゲみたいな」

「あ~、クラゲかぁ。クラゲも良いよねぇ~。よく傷心した女性が水族館で眺めているよね(笑)」

「なにそれ!私にピッタリということ?」

「わからな~い」

「も~!あはははは」

たわいもない話が心地よいのは、隠し事がないからかもしれない。全ての隠し事を吐き出すことが良いとは思わないけど、たまには吐き出すことも重要だと川名の件と今回の雪見を見て、改めて感じた。夕方になりかける頃、雪見から

「時間大丈夫?」

と気にかけてくれたので、お言葉に甘えて帰ることにした。帰りの電車の中では程よい疲れと彼女の良い匂いで眠気が増した。雪見と別れる際、

「今日はありがとう。話というか私から一方的だけど、言えなかったことを言えて肩が軽くなった気がする。なかったことには出来ないけど、もう一度色々と見つめ直す機会をもらえた気がするの」

「そう……僕の方こそ話してくれて嬉しかった。話を聞く限り雪見は悪くないよ。優美ちゃんに話しかけたという判断をする雪見を僕は尊敬したいな。だから間違ってない」

「……あ、ありがと。も、もう行くね!」

そういうと雪見は乗り換え線へと走って行った。何か不味いことを言ってしまったかと少しばかり不安になったが、バスが直ぐ来たのでその事は忘れた。帰宅し、お母さんに「ただいま」と言った後、手摺り拭きや床拭きなどのルーティンをこなし、

「少し寝るね」

と言って二階に上がった。ベッドにはザシコが布を縫っていた。

「帰ったか!どうじゃった!チスはしたかチスは?」

「何言ってんの。とりあえず色々話してくれたよ、本当に。ありがたかった。」

「ほぅ、じゃあ聞かせてもらおうかのぅ」

「ごめん、少し寝てからで良いかな?」

「ダメじゃ!こちとら暇で暇で仕方なかったんじゃ!」

「これで許して」

そう言ってお土産の「鳥の五目ご飯のおむすび二個」と「ひじきの五目ご飯一個」を見せた。

「高かったんだぞ~?」

「む、むぅ。仕方ない、ワシの優しさに免じてこれで猶予をやろう」

「そりゃどーも……」

僕はそう言うと直ぐに深い眠りについた。ザシコはおにぎりを食べながら言った。

「ほう、上手くいったのは本当みたいじゃな。鎖が一本切れとる」
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