あの日の後悔と懺悔とそれと

ばってんがー森

文字の大きさ
上 下
48 / 129
三つ葉クローバー

先手

しおりを挟む
次の日、前回と同じ時間、同じ場所に集まることにした。するとこれまた前回と同様お互い一時間早く来てしまった。しかし違っていたのは雪見の服装だった。制服だった。

「場所はどこにする?」

と聞かれたので

「どうしようか~」

とわざとらしい演技で悩むフリをしていた。すると雪見から

「じゃあ……鎌倉、行こうか!」

との提案があった。僕は不意をつかれた気分だった。こちらから提案する手筈が、まさか向こうから誘ってくるとは……それに制服……。ここにはザシコはいない、自分だけなんだ!と自分に言い聞かせ、

「よし、鎌倉に行こうか!」

と元気よく返した。

鎌倉への路線は横須賀線で、J○を使う。あまり慣れてないせいか若干ソワソワする。しかし、未知なる世界に来たかの様なワクワク感もあるのもまた事実。電車が来て、乗車すると雪見は

「この感じ、久しぶりだなあ」

と脇が見えそうになるくらいまで背伸びした。

「そんなに乗ってなかと?」

「うん……」

雪見は懐かしそうに、でも寂しそうな表情で顔を俯けた。すかさず僕は、

「率直に聞きたい。雪見、君の親友は『自殺』してしまったんだね?」

静かな空気が流れる。電車の軋む音と遠くから人の咳払いしか聞こえなかった。数分後雪見は顔を上げて

「うん……私の親友は死んでしまったの。みんな私のせいじゃないと言うけど、私のせいなの!私が彼女を追い詰めてしまったのよ!絶対に……」

鬼気迫る告白だったが、僕は冷静でいられた。それも想定の範囲内だったからだ。でなきゃ『鎖』なんて普通現れんて。まもなく鎌倉に着きそうだったので、ここからは軽い散歩をしながら話をしようと提案し、彼女はそれに乗ってくれた。

「先に僕の事を話させてもらうね」

そう言うと雪見は少し緊張した面持ちをした。僕は川名の時と同じ様な内容を話した。雪見は

「そう……」

とだけしか言葉が出てこなかった。雪見は恐らくこれから色々言葉を選びながら語るつもりだったのだろう。自分のペースで話すつもりが、僕の曝露話でペースどころではなくなってしまったのだ。言葉を失ってしまうのも無理はない。僕は最後に

「雪見だけ辛い事を話すのは……なんかこう……フェアじゃない気がしてさ。隠すつもりもないしかと言って言わなきゃいけない話でもない。ただ、バラされると色々気を使ったりギスギスするかもしれないし、そういうのが嫌だという点ではこの話は僕にとってリスキーなんだよ」

と汗がダラダラと流れながらも雪見の目をまっすぐ見て言った。

雪見はフフッと笑って

「余計惚れそうだわ」

と小さな声で言った。

そして雪見は過去の話を話し始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

秘密のキス

廣瀬純一
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ルテニアR(スパイ会議)

門松一里
ライト文芸
日本の神戸市で各国のスパイが集まって戦争回避をするのですが、話し合いになるはずもなく、会議は踊り続けるのでした。#blackjoke #小説 平和を祈ります

処理中です...