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双葉のクローバー
歪
しおりを挟む(正直、嫌な予感しかしない。関わったら面倒だ。そして、今の僕の現状からして、明らかにキャパを超えている……)
僕の顔が曇った事を察知したのか、雪見は少しだけ俯いた。しかし、すぐさま顔を上げ、僕の手を掴みこう言った。
「どうしてもお礼がしたいの!」
僕は
(いや……もう手を握って貰っただけでご褒美です、はい。なのでお礼増し増しは…)
そう思いっていると、ザシコがまた服を引っ張る。
(何だよこの変な板挟みは……。というより彼女の顔はどう見たって『お礼』をしたいという顔ではないだろう。しかも段々手を握る力が強くなっている気がするし。)
するとまたトンネルに差し掛かった。やはり見えるのは大人びた雪見である。電車は快特。止まる駅までのスパンが長い。うまく回避する様な言葉が出てこず、沈黙をしていると
「お願いです!!」
車内に響き渡る雪見の声。
「なんだなんだ!」
「痴話喧嘩か?」
「いや、手を握ってるし告白っぽくね?てかあの子可愛いな」
周囲からの注目が集まり始めた。状況は益々悪くなる一方である。周りからは、この結末がどうなるか固唾を飲む様な視線を浴びせられ、しかも可愛い女の子を振るのか!!みたいな空気を醸し出されている気がする。さっきから続いているザシコが『僕の服を引っ張る』という意味が「お礼を受け取っとけ!」なのか「断れ!」なのか。
(早くこんな場から逃げ出したい!死にたいくらい恥ずかしい……)
そんな状況下で僕が出した結論は
「じゃあ……ま、まず正しいメールアドレスを登録しない?」
だった。彼女の顔はとても嬉しそうだった。彼女はすぐさま正しいメールアドレスを登録して僕の携帯に送った。そしてもちろん届いた。するとザシコがまた服を引っ張った。この時、僕はハッと気づいた。ザシコが服を引っ張ったのは「断れ」と言う意味だったのだと……。そして、まるで水面からゆっくりと上がってくるかの様に、僕と雪見の腕に、重く冷たい鋼の鎖が絡み付いているのが……『視えた』。
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