14 / 129
双葉のクローバー
二人の野次馬根性
しおりを挟む
いつからだろうか、「病院」という場所がもう一つの我が家になっていたのは。問題があればナースコールを押せば数分、運が良ければ数秒で看護師さんが来てくれて、数日に一回は担当医の方が来てくれる。そして何かあった時はとても安心できる。なぜならそこは「病院」だからだ。
しかし、「入院」があれば「退院」があるのであり、病院にも規則のようなものがある。それは患者が「生きていよう」が「死んでいよう」が関係はない。病院的にも軽症患者ではない分、退院してもらうのに気がひけてしまうのは分かる。でも、もう少し居させてくれても良いじゃないか!いや、ここは「病院」。家でできないような治療ができる場所。
(母の病は良くなりつつあり、家でも治療ができる状態に良くなりつつあるから「退院」させようとしてるのか?)
しかし、必死に良い方へ良い方へ解釈するがだめだった。
(仮に「退院」の方向へと持って行くなら、家より病院でもっと良く治療してもらって、完治に近い状態で「退院」させた方がいいのではないか?「退院」して家で病状が酷くなる可能性や万が一の事が起きたらどうする!?分かってる、分かってるんだ。向こうにも事情があるって。でも……でも……)
一人で葛藤していると頭の中からもう一人の僕が現れ、耳元で更に僕を混乱させる。
「本当は家で介護できる自信がないんじゃないの?よくテレビで介護疲れで殺人ってあるよね?ボクはどうかな?可能性は?なくはないよね?いつまでもつんだろうね?というよりいつまで続くんだろうね?ね、ボク?親父や兄貴がいるとはいえ、キミは見えない三等分の負担を分担できるのかな?無理だね。ボクの性格だ。自分より他人の粗に目がいき易くなって口煩くなるんじゃない?やれる?ボク?ねぇ、自分の事ばかり考えてるけど親父や兄貴は持つかな?ね?ね?ボク?ね?ボク………ねぇ……?)
「やるしかない」という至極明確な回答が僕の喉元に刃となって突き立てる。現状よりその先々のことを考えるだけで足が竦む。顔面蒼白な僕の顔をザシコが覗き込む。それに気づいた僕は
(ああ、呆れているか怒っているのだろうな)
そう思って目を合わせると、ザシコの表情はとても柔らかく
「心配するでない」
思いがけない一言とポンっと掌を肩に当てた。あの一瞬だけは不思議とこれから何が起きても大丈夫だと思った。
病院に着くと珍しく親父が先についていた。どうやら病院側と退院に向けての話し合いのため、仕事を早退してきたみたいであった。そして、
親父(以下父)「お宅らが早く退院して欲しいってのはよく分かっておりますけど、訪問介護や、自宅で介護するために必要な機材、役所への書類提出、ヘルパーさんの手配、諸々調整段階中なのは何回も申し上げているでしょ!!」
病院(以下医)「い、いえ、別に二木様に出ていって欲しいとは……ただ入院日数に付きましてですね……」
父「だ・か・ら、そちらも言い辛いのを承知の上で退院の手続きを進めてるのでしょうが!!ただ、家内がああいう状態な以上、はい退院します!で終われないでしょうと。退院するのなら、病院までとはいかないまでも、必要最低限の設備や対応マニュアルや連絡網など必要でしょうと!何回同じこと言わせるんですか!!」
医「いえ、私はその点につきましては、私共には判断しかねると……」
父「!?じゃあ今まで何のために……」
医「ですからちゃんと伝えておきますから」
父「……どちらに伝えるんですか?」
医「え~……上に………」
父「ふざけるのもいい加減にしてくださいよぉ!!!」
廊下に響き渡る怒声。僕は
「ああ、ザシコ。やれそうにねぇ」
パイプに深く腰掛けた。そんな中、母とザシコはニヤリと笑った。
しかし、「入院」があれば「退院」があるのであり、病院にも規則のようなものがある。それは患者が「生きていよう」が「死んでいよう」が関係はない。病院的にも軽症患者ではない分、退院してもらうのに気がひけてしまうのは分かる。でも、もう少し居させてくれても良いじゃないか!いや、ここは「病院」。家でできないような治療ができる場所。
(母の病は良くなりつつあり、家でも治療ができる状態に良くなりつつあるから「退院」させようとしてるのか?)
しかし、必死に良い方へ良い方へ解釈するがだめだった。
(仮に「退院」の方向へと持って行くなら、家より病院でもっと良く治療してもらって、完治に近い状態で「退院」させた方がいいのではないか?「退院」して家で病状が酷くなる可能性や万が一の事が起きたらどうする!?分かってる、分かってるんだ。向こうにも事情があるって。でも……でも……)
一人で葛藤していると頭の中からもう一人の僕が現れ、耳元で更に僕を混乱させる。
「本当は家で介護できる自信がないんじゃないの?よくテレビで介護疲れで殺人ってあるよね?ボクはどうかな?可能性は?なくはないよね?いつまでもつんだろうね?というよりいつまで続くんだろうね?ね、ボク?親父や兄貴がいるとはいえ、キミは見えない三等分の負担を分担できるのかな?無理だね。ボクの性格だ。自分より他人の粗に目がいき易くなって口煩くなるんじゃない?やれる?ボク?ねぇ、自分の事ばかり考えてるけど親父や兄貴は持つかな?ね?ね?ボク?ね?ボク………ねぇ……?)
「やるしかない」という至極明確な回答が僕の喉元に刃となって突き立てる。現状よりその先々のことを考えるだけで足が竦む。顔面蒼白な僕の顔をザシコが覗き込む。それに気づいた僕は
(ああ、呆れているか怒っているのだろうな)
そう思って目を合わせると、ザシコの表情はとても柔らかく
「心配するでない」
思いがけない一言とポンっと掌を肩に当てた。あの一瞬だけは不思議とこれから何が起きても大丈夫だと思った。
病院に着くと珍しく親父が先についていた。どうやら病院側と退院に向けての話し合いのため、仕事を早退してきたみたいであった。そして、
親父(以下父)「お宅らが早く退院して欲しいってのはよく分かっておりますけど、訪問介護や、自宅で介護するために必要な機材、役所への書類提出、ヘルパーさんの手配、諸々調整段階中なのは何回も申し上げているでしょ!!」
病院(以下医)「い、いえ、別に二木様に出ていって欲しいとは……ただ入院日数に付きましてですね……」
父「だ・か・ら、そちらも言い辛いのを承知の上で退院の手続きを進めてるのでしょうが!!ただ、家内がああいう状態な以上、はい退院します!で終われないでしょうと。退院するのなら、病院までとはいかないまでも、必要最低限の設備や対応マニュアルや連絡網など必要でしょうと!何回同じこと言わせるんですか!!」
医「いえ、私はその点につきましては、私共には判断しかねると……」
父「!?じゃあ今まで何のために……」
医「ですからちゃんと伝えておきますから」
父「……どちらに伝えるんですか?」
医「え~……上に………」
父「ふざけるのもいい加減にしてくださいよぉ!!!」
廊下に響き渡る怒声。僕は
「ああ、ザシコ。やれそうにねぇ」
パイプに深く腰掛けた。そんな中、母とザシコはニヤリと笑った。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる