封印少女 かぎね!

小学生の頃、無性に鍵が欲しかった。何故かと言われると答えに詰まるが、今思い返してみると「カッコいいから」だ。鈍い金属の歪な輝きと、鍵一つで開けられない扉を開けることができる、なんとも不思議な物。更に輪をかけるように、決まって女子生徒の胸元からするりと取り出す魔法の物。性の芽生えはまだなかったが、予想だにしないところから出てくるものに対して憧れを持った。

しかし、中には例外もいる。後から分かったことなのだが、こやつらを「鍵っ子」と言うらしい。「鍵っ子」の子は両親共働きなせいで、彼ら彼女ら自身余り良くは思ってなかったそうなのだが、僕にとってはとても眩しく見えた。

「鍵っ子なんて良いもんじゃないよ。家に帰っても誰もいないし。」

とある友達がそう呟いた。確かに彼は毎日のように放課後遅くまで遊んでいた。

「ほう、鍵っ子には鍵っ子の悩みがあるのか。体験してみたい。」

小学生の僕にはそう解釈してしまった。早速母親におねだりをする。

「鍵が欲しい」

「なんで」

「ドアを開けたい」

「私が家にいるじゃない」

「違うんだよ、自分の力でこう……開けたいんだよ!!」

「いや、鍵無くしたらシャレになんないし」

「無くさないから」

「へぇ〜、この前トイレでカバン忘れてゲーム●ーイアドバンス無くしたの誰だっけ??」

「あ、あれは取るやつがいかんたい!」

「忘れなきゃとられなかったのでは?」

「ぐぬぬ」


こうして第一次鍵おねだり作戦は失敗したのである。



数年後、鍵のことをすっかり忘れた僕は意気揚々と家に帰った。すると母が

「ほら、6年生になったから『鍵』、無くさないようにね!」

「あ………ああああああ、鍵が……鍵が手に入ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「無くしたら小遣い一生抜きだからね!!」

「はい!お母た……ま……?このひとつだけ水色の物体は??」

「あぁ、鍵穴二つあるでしょ!普通のやつが上で、水色の奴が下ね!分かりやすいでしょ!!」

「Nooooo!!!!!! な、なんなんだこのかっちょ悪いのは!恥ずかしくて友達に自慢できん!(今は区別しやすくて重宝してます)」

「少し高かったんだから〜(ドヤッ)」

「何故……何故大人はいつも余計なことをするんだ……パンツ裏に名前を書えたり、傘がダサかったり、雨の日に長靴用意したり、鉛筆一本一本名前を書いたり、消しゴムの裏に名前を書えたり、進研●ミの答えを隠したり……(今となってはいい思い出です。名前を書くことは所有物としての証なので、親が正しい)」





ここから僕の鍵とゲートの日々が始まる事を、未来の僕以外知らなかった……
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