召喚され、あっという間に殺されることになった魔力ゼロの聖女。チート無双もできるけど、のんびり異世界で暮らすことにした。

SHEILA

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証拠隠滅 10

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GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAO!!!!!!!

飛んでいるのはジャンボジェット機より大きな、黒いドラゴンだった。

ドラゴンは草原の上空を悠々と旋回し、位置取りをした、ように見えた。
ホバリングしながら、ドラゴンは城門を正面に見据え、口を大きく開ける。
そこに光の粒が集まっていく。光の粒はとても美しく、幻想的な光景だった。
白い光の粒は、その塊が大きくなるにつれ色を変え、真っ赤に燃える火の玉になった。

( ブレスだ。)

『ニナ様、ブレスです。目を閉じてください。』

( ……私がこんな状況なのはスルーなんだ…痛い…苦しい… )

助言を無視して、ドラゴンを見続ける。

カッと辺りが真昼のように一瞬明るくなり、直後、ブレスが城門に向かって吐き出された。

ブレスは城門にぶつかって、爆ぜた。
城門や跳ね橋はところどころ燃えているけれど、城壁は壊れていない。
想像していたより、威力が弱い。

( 私を助けるのが目的だから…?あんなに大きなドラゴンが本気を出したら…この辺り一帯…消し飛びそうなのに……)

爆ぜた炎は城門前の草原に、無数の小さな火の塊となって降り注ぎ、大地が燃え始めた。
そして、私のまわりにも、火の塊は無数に落ちてきた。

( こっちは動けないっていうのに…なんてことをしてくれるの… )

私はさっき馬車から投げ出された時に、地面にあった岩に強かに体を打ち付けて、大怪我を負っていた。
身動きが取れないほどの。

( …やばい…肋骨と左手と左足、折れてるかも……呼吸もしにくい…肺も潰れてるかも……痛くて気を失いそう…そして熱い……怪我で死ぬのが先か、焼け死ぬのが先か………逃げ出すどころじゃなくなちゃったよ… )

『ピロン♪』
『スキル自動防御結界を取得しました。』
『スキル物理攻撃無効を取得しました。』
『スキル魔法攻撃無効を取得しました。』

( あれ…?急に熱くなくなった…?…そうだ…魔法がある世界だ……頑張れば助かるかもしれない…えっと…こういう時は…治癒魔法…? )

『ピロン♪』
『聖魔法を取得しました。』

「私にヒールぅぅぅ……」

発光とともに、体中から痛みが消えていく。

ゆっくりと上体を起こし、両手をぐーぱーしてみる。
( うん、ちゃんと動く。)
体の感覚を確かめながら、慎重に立ち上がる。
何回か足踏みをしてから、屈伸をしてみる。
( よし、動ける。)

背筋を伸ばして、自分のまわりを見渡す。
私は自分の膝下くらいの高さの燃え盛る炎に囲まれていた。
逃げ道は、無い。
が、熱くない。
じっと目を凝らして見ると、自分のまわりに壁のようなものが見えた。
( これが自動防御結界かな。)

『ピロン♪』
『スキル真実の目を取得しました。』

辺りは燃え盛る炎のせいで、まるで昼間のように明るい。
スキル遠見を使うと、城壁の上の兵士たちの表情まで見える。
念のため鑑定してみると、スキル遠見持ちの兵士がちらほらいた。
ということは、向こうからも同じくらい鮮明にこちらが見えているということだ。

視線を感じて、空を見上げる。

ドラゴンと目が合った気がした。
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