20 / 22
憤る神々の神託
しおりを挟む
この世界の創造主である主神の創造神は、憤っていた。
創造神だけでなく、この世界のすべての神々が、禁忌とされている異世界の邪神の力による聖女召喚を行ったバラライド国に、憤っていた。
バラライド国に聖女として召喚されたのは、神々のお気に入りの国、異世界の日本という国の少女だった。
禁忌を犯して、多くの愛し子たちを犠牲にして召喚した少女。
にも拘らず、少女のステータスを鑑定し、少女が聖女でなかったから、少女の魔力が0だったから、たったそれだけの理由で、少女を殺せと、バラライド国の国王は命じた。
その命を受けた人間たちの企みも、非道なものであった。
神々の堪忍袋の緒が切れた。
バラライド国には強風が吹き荒れ、地面は揺れ続けていた。
正しい手順を踏んで聖女召喚を行えば、望む聖女の力を持って、この世界に順応できる聖女が召喚されたであろうに、異世界の邪神の力による聖女召喚を行ったため、少女は元の世界で作られた肉体のまま、この世界に召喚されてしまった。
魔法の存在しない世界から来たのだ。
魔力など、持ち合わせているはずがない。
召喚を行うために必要な知識すら学ばず、禁術に手を出した愚かな人間の国。
神々は、バラライド国を見捨てることを決断した。
その日、運命神は、バラライド国に生きる、すべての生きとし生けるものに、神託を下した。
『これは神託である。』
『愚かで邪悪な心を持ったバラライド国の人間たちにより、バラライド国はすべての神々の怒りを買った。』
『我ら神は、バラライド国を見限った。』
『バラライド国は衰退の一途を辿り、魔の森に飲み込まれていくであろう。』
『最後の慈悲である。』
『善人であれば、無事魔の森を抜けることができる。』
『この国を出て生き延びたい者は、すぐに出発せよ。』
魔の森を抜けられるのは、先着順ではない。
人数制限もない。
神託すら正しく理解しようとせず、我先にと移動手段である馬車や馬を奪い合い、殺し合う人々。
魔の森に入ろうとする人々を襲い、物資を奪う人々。
老若男女問わず、醜い争いを繰り広げていた。
醜く争う人々を横目に、国内に生息していた野生の動物や鳥、虫や家畜たちが、魔の森を悠然と抜けていく。
時折、醜く争う大人の側で火が付いたように泣いている赤ん坊を、動物たちが親から奪い去り、咥えたまま魔の森を進んだ。
動物たちは、神託を正しく理解していた。
本来であれば魔の森を抜けることができたであろう人々は、争いに巻き込まれ、命を落とした。
邪悪な心を持った人々は、魔物にその命を狩られた。
人口60万人のバラライド国から逃げ出せた人族は、動物たちが連れて逃げた、僅かな幼子たちだけであった。
創造神だけでなく、この世界のすべての神々が、禁忌とされている異世界の邪神の力による聖女召喚を行ったバラライド国に、憤っていた。
バラライド国に聖女として召喚されたのは、神々のお気に入りの国、異世界の日本という国の少女だった。
禁忌を犯して、多くの愛し子たちを犠牲にして召喚した少女。
にも拘らず、少女のステータスを鑑定し、少女が聖女でなかったから、少女の魔力が0だったから、たったそれだけの理由で、少女を殺せと、バラライド国の国王は命じた。
その命を受けた人間たちの企みも、非道なものであった。
神々の堪忍袋の緒が切れた。
バラライド国には強風が吹き荒れ、地面は揺れ続けていた。
正しい手順を踏んで聖女召喚を行えば、望む聖女の力を持って、この世界に順応できる聖女が召喚されたであろうに、異世界の邪神の力による聖女召喚を行ったため、少女は元の世界で作られた肉体のまま、この世界に召喚されてしまった。
魔法の存在しない世界から来たのだ。
魔力など、持ち合わせているはずがない。
召喚を行うために必要な知識すら学ばず、禁術に手を出した愚かな人間の国。
神々は、バラライド国を見捨てることを決断した。
その日、運命神は、バラライド国に生きる、すべての生きとし生けるものに、神託を下した。
『これは神託である。』
『愚かで邪悪な心を持ったバラライド国の人間たちにより、バラライド国はすべての神々の怒りを買った。』
『我ら神は、バラライド国を見限った。』
『バラライド国は衰退の一途を辿り、魔の森に飲み込まれていくであろう。』
『最後の慈悲である。』
『善人であれば、無事魔の森を抜けることができる。』
『この国を出て生き延びたい者は、すぐに出発せよ。』
魔の森を抜けられるのは、先着順ではない。
人数制限もない。
神託すら正しく理解しようとせず、我先にと移動手段である馬車や馬を奪い合い、殺し合う人々。
魔の森に入ろうとする人々を襲い、物資を奪う人々。
老若男女問わず、醜い争いを繰り広げていた。
醜く争う人々を横目に、国内に生息していた野生の動物や鳥、虫や家畜たちが、魔の森を悠然と抜けていく。
時折、醜く争う大人の側で火が付いたように泣いている赤ん坊を、動物たちが親から奪い去り、咥えたまま魔の森を進んだ。
動物たちは、神託を正しく理解していた。
本来であれば魔の森を抜けることができたであろう人々は、争いに巻き込まれ、命を落とした。
邪悪な心を持った人々は、魔物にその命を狩られた。
人口60万人のバラライド国から逃げ出せた人族は、動物たちが連れて逃げた、僅かな幼子たちだけであった。
0
お気に入りに追加
248
あなたにおすすめの小説

異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

神によって転移すると思ったら異世界人に召喚されたので好きに生きます。
SaToo
ファンタジー
仕事帰りの満員電車に揺られていたサト。気がつくと一面が真っ白な空間に。そこで神に異世界に行く話を聞く。異世界に行く準備をしている最中突然体が光だした。そしてサトは異世界へと召喚された。神ではなく、異世界人によって。しかも召喚されたのは2人。面食いの国王はとっととサトを城から追い出した。いや、自ら望んで出て行った。そうして神から授かったチート能力を存分に発揮し、異世界では自分の好きなように暮らしていく。
サトの一言「異世界のイケメン比率高っ。」

私は聖女(ヒロイン)のおまけ
音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女
100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女
しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。
「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」
と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。

だって私、悪役令嬢なんですもの(笑)
みなせ
ファンタジー
転生先は、ゲーム由来の異世界。
ヒロインの意地悪な姉役だったわ。
でも、私、お約束のチートを手に入れましたの。
ヒロインの邪魔をせず、
とっとと舞台から退場……の筈だったのに……
なかなか家から離れられないし、
せっかくのチートを使いたいのに、
使う暇も無い。
これどうしたらいいのかしら?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる