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証拠隠滅 8
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道が悪いのか、馬車は跳ねながら、ゆっくりと進む。
何かに掴まっていないと、体が馬車の中を転げ回ってしまいそうだ。
必死に体勢を整えようとしている私を見て、トーマスとゲイルが顔を見合わせ、嫌らしい笑みを深くして、立ち上がった。
( やばいっ!!)
「トーマスとゲイルを昏睡させて!!!!!!!!!!!!!!!」
『ピロン♪』
『闇魔法を取得しました。』
トーマスとゲイルが崩れるように倒れ、馬車の中を転がり始めた。
( 効いた!これで身の安全は確保された!気持ち悪かった!!)
「うわぁ、転がってこっちに来ないで!気持ち悪い!!」
私と2人の間に、半透明の壁が現れた。
『ピロン♪』
『スキル空間操作を取得しました。』
『よく頑張りましたね、ニナ様。』
( うん、頑張った。)
涙が出そうになるけれど、これからが本番だ。
ナビちゃんは魔物を呼び寄せると言っていたけれど、魔物なんて見たこともない私には、なにが起こるか想像すらできない。
そもそも、魔物を自由に操れるナビちゃんて、何者なんだろう?
馬車の側面に背を預け、足を前に投げ出す。
先程取得した空間操作で体が動かないようにして、一息つく。
「喉乾いたなぁ。」
『ピロン♪』
『生活魔法を取得しました。』
( ん?生活魔法?)
両手を合わせて、水が掬えるような形にする。
「ウォーター?」
呟くと、目の前に水滴が集まり始める。
ピンポン玉ほどの大きさの水の球になったところで、それを手で受け止めて、口に運んだ。
「美味しい。」
『ピロン♪』
『スキル魔力操作を取得しました。』
( ……… )
それから3回水の球を作って飲み干して、思い切り息を吐く。
やっと、ほんの束の間だけど、一息つける。
異世界…召喚…聖女…スキル…魔力…まるでラノベの世界だ。
槙兄ちゃんと朔弥がラノベ好きで、よく2人で話をして盛り上がっていたっけ。
私はラノベは呼んだことがないけれど、最近ちょくちょくアニメ化されてたのを、時々槙兄ちゃんと朔弥に付き合って観ていた。
だからマジックバックがどういう物か知っていたし、スキルとか魔法とかの存在を、すんなり受け入れられたのかもしれない。
鑑定やヒールがどういうものか知っていたから、使えるようになったのかな。
知識が一切なかったら、どうなってたんだろ。
そう言えば、言葉が通じてるのも異常だ。
ご都合主義の言語理解とかなのかな。
取り敢えずの目先の危機が去ったことで、少しぼーっとしてしまった。
『ニナ様。間もなく魔物の群れが見張りの兵にも目視できるようになります。』
ナビちゃんの声掛けに、現実に引き戻される。
( そう言えば、透視のスキルがあったっけ。「透視」)
スキルを発動すると、馬車の幌が透けて、外が…って、真っ暗じゃん!
さっきまで出ていた月が、雲に隠れてしまったようだ。
「何にも見えない。」
『ピロン♪』
『スキル暗視を取得しました。』
ご都合主義のおかげで、馬車の外の景色がクリアになる。
「うわぁ、一面草原だ。あのお城みたいなの、こんな草原の真ん中にポツンと建ってるんだ。お城っていうより、要塞みたい。」
馬車のまわりをぐるりと見渡すと、進行方向の右斜め前方に山が見えた。
草原が続いているため、山までの距離感が掴めない。
でも、できる気がした。
『ピロン♪』
『スキル転移を取得しました。』
進行方向の左側を見ると、少し離れたところに川があった。
その川から、なにかが這い上がって、こちらに向かって来るのが見えた。
這い上がり続けるなにかは見る見るその数を増やし、近づいてくる。
徐々に、その足音(?)も聞こえてくるようになる。
足音は次第に、地響きに変わる。
数百か数千か、夥しい数のなにかが、こちらに向かってきていた。
雲の間から漏れ始めた月の光が、不気味な夥しい数のなにかを、照らし始めた。
何かに掴まっていないと、体が馬車の中を転げ回ってしまいそうだ。
必死に体勢を整えようとしている私を見て、トーマスとゲイルが顔を見合わせ、嫌らしい笑みを深くして、立ち上がった。
( やばいっ!!)
「トーマスとゲイルを昏睡させて!!!!!!!!!!!!!!!」
『ピロン♪』
『闇魔法を取得しました。』
トーマスとゲイルが崩れるように倒れ、馬車の中を転がり始めた。
( 効いた!これで身の安全は確保された!気持ち悪かった!!)
「うわぁ、転がってこっちに来ないで!気持ち悪い!!」
私と2人の間に、半透明の壁が現れた。
『ピロン♪』
『スキル空間操作を取得しました。』
『よく頑張りましたね、ニナ様。』
( うん、頑張った。)
涙が出そうになるけれど、これからが本番だ。
ナビちゃんは魔物を呼び寄せると言っていたけれど、魔物なんて見たこともない私には、なにが起こるか想像すらできない。
そもそも、魔物を自由に操れるナビちゃんて、何者なんだろう?
馬車の側面に背を預け、足を前に投げ出す。
先程取得した空間操作で体が動かないようにして、一息つく。
「喉乾いたなぁ。」
『ピロン♪』
『生活魔法を取得しました。』
( ん?生活魔法?)
両手を合わせて、水が掬えるような形にする。
「ウォーター?」
呟くと、目の前に水滴が集まり始める。
ピンポン玉ほどの大きさの水の球になったところで、それを手で受け止めて、口に運んだ。
「美味しい。」
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『スキル魔力操作を取得しました。』
( ……… )
それから3回水の球を作って飲み干して、思い切り息を吐く。
やっと、ほんの束の間だけど、一息つける。
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槙兄ちゃんと朔弥がラノベ好きで、よく2人で話をして盛り上がっていたっけ。
私はラノベは呼んだことがないけれど、最近ちょくちょくアニメ化されてたのを、時々槙兄ちゃんと朔弥に付き合って観ていた。
だからマジックバックがどういう物か知っていたし、スキルとか魔法とかの存在を、すんなり受け入れられたのかもしれない。
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知識が一切なかったら、どうなってたんだろ。
そう言えば、言葉が通じてるのも異常だ。
ご都合主義の言語理解とかなのかな。
取り敢えずの目先の危機が去ったことで、少しぼーっとしてしまった。
『ニナ様。間もなく魔物の群れが見張りの兵にも目視できるようになります。』
ナビちゃんの声掛けに、現実に引き戻される。
( そう言えば、透視のスキルがあったっけ。「透視」)
スキルを発動すると、馬車の幌が透けて、外が…って、真っ暗じゃん!
さっきまで出ていた月が、雲に隠れてしまったようだ。
「何にも見えない。」
『ピロン♪』
『スキル暗視を取得しました。』
ご都合主義のおかげで、馬車の外の景色がクリアになる。
「うわぁ、一面草原だ。あのお城みたいなの、こんな草原の真ん中にポツンと建ってるんだ。お城っていうより、要塞みたい。」
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草原が続いているため、山までの距離感が掴めない。
でも、できる気がした。
『ピロン♪』
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進行方向の左側を見ると、少し離れたところに川があった。
その川から、なにかが這い上がって、こちらに向かって来るのが見えた。
這い上がり続けるなにかは見る見るその数を増やし、近づいてくる。
徐々に、その足音(?)も聞こえてくるようになる。
足音は次第に、地響きに変わる。
数百か数千か、夥しい数のなにかが、こちらに向かってきていた。
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