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カリア
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7歳で村から逃げ出したライトは、12歳の時、辺境の小さな町オルグストンに辿り着いた。
コツコツ貯めたお金で入町税を払い、冒険者ギルドで登録をした。
初心者講習で、田舎から幼馴染3人で出てきたという18歳のボルト、ルウナ、ゲオルグと一緒になった。
戦闘スキルは無いけれど採取のスキルを持っていると言うと、仲間に誘われた。
冒険者はGランクからSランクまでランクがあり、皆Gランクからのスタートだった。
Gランクの依頼は町中での雑用がほとんどであり、冒険者らしい依頼は、防壁近くの浅い森での薬草採取しかなかった。
今思えば、そこに目を付けられたのだろう。
3人とも、最初は真面目な冒険者に見えた。
実際は自意識が高く、やりたいことしかやらない、現実が見えない奴らだったが、それに気付くにはライトには対人経験が少なすぎた。
村では家族が生活するために、薬草や山菜、木の実を採取するのが子供の仕事だった。
ボルトたちの採取は・・とても雑だった。
せっかくの薬草を使い物にならなくし続けた。
3か月後、ほとんどライトが採取した薬草だけで、彼らはFランクに上がった。
孤独だったライトは、1人になるのが怖かった。
暴言を吐かれても、搾取されても、動けなくなるまで暴力をふるい続けた家族と比べたら、善人に見えた。
予知で彼らのことを視ても、自分が頑張れば変わってくれるかもしれないと、頑張り続けていた。
そんな時、親を亡くして親戚を頼ってきたという、カリアに出会った。
カリアは町で唯一の教会に併設された、孤児院のシスターの遠縁だった。
カリアは冒険者に憧れていて、回復魔法が使えるということで、ボルトたちがパーティーに誘った。
ボルトたち幼馴染組は面倒くさがりで、依頼で発生する雑用は、自然とカリアとライトがやることになった。
カリアは小さな村の出身だった。
そのまま村に残れば、40も年上の男と結婚させられるところだったという。
都会に憧れる純朴な女の子。
彼女が優しいライトに恋をするのは、あっという間だった。
カリアの両親は同い年の幼馴染だったらしく、同い年の若い男との恋愛と結婚に強い憧れがあった。
2人が13歳になった時、結婚の約束をした。
カリアはその見た目に反して計算高く、パーティー内をよく見ていた。
18歳で冒険者になって、1年経ってもまだEランクにもなれない見た目だけのボルトより、実質パーティーを支えている13歳のライトの方が将来性があると考えた。
女の感で、ライトのスキルによる貢献に、なんとなく気付いていたのだ。
カリアの回復魔法は、効果の高いものではなかった。
無茶をする3人がよくケガをして依頼を途中リタイアすることが多かったが、回復魔法が使えるカリアが入って状況が好転した、とは言い難かった。
カリアもライトと同じで役立たずと言われ、搾取されるようになってきていた。
「漆黒の闇」は一つの依頼が終わると数日から数週間活動を休む。
にも拘らず、カリアが加入してから半年でEランクに上がった。
そこから盗賊のマルクが加わり、1年後にはDランクになった。
並みの冒険者としては、順調なランクアップだったが、依頼数や達成率からすると異常なランクアップだった。
バランスの良いパーティーではあった。
性格と言動に難ありの幼馴染トリオは、前衛の剣士に火魔法使いに盾使い。
何を考えているか分からないけれど、斥候としては優秀なマルク。
いつも笑顔を絶やさず優しいカリアは、とても低レベルではあるけれど回復魔法の他にバフやデバフが使える。
依頼の下調べから様々な交渉、依頼遂行中のメンバーの食事に各種雑用。
マッピングも討伐部位や素材の納品も、戦闘以外のことすべてが戦闘のできないライトの仕事だった。
分け前はライトが一番少なかった。
カリアは夢に恋するような少女だった。
彼女の視線が、戦闘ができない平凡なライトから剣で魔物を屠るボルトを追うようになったのは、結婚の約束をして数か月しか経っていない頃だった。
ライトたちの約束を知ったボルトが、カリアに気のある素振りをみせ、優しく接し始めたのだ。
カリアは度々ボルトに誘われて外出するようになった。
外出先では、ボルトの知り合いに会うことが多かった。
そのほとんどが裕福な身なりをしていて、中には貴族もいた。
ボルトは恥ずかしそうに、
「ずっと貴族の屋敷で護衛として働いていたんだけど、小さなころから冒険者に憧れていてね。護衛対象のご子息が侯爵家に婿入りされることになって、それを機に退職させてもらったんだ。」
この告白が、カリアの心を決めた。
カリアが、自分を守ってくれる強い男と結婚する自分の夢に酔っているのが、傍目から見てもよく分かった。
そしていつものようにライトは予知を視る。
鮮明であるほど近い未来に、それらは現実になる。
ライトの予知は、対象を絞って意識して視ることもできるけれど、突然目の前にその様子が映し出されることもある。
ライトの身に危険が迫っている時や、大きな変化が選択によって訪れる時だ。
今回は後者だった。
ボルトと男女の関係になるカリアが視えた。
続けてパーティーからライトが追放される場面が視えた。
「この鮮明さだと、これが起こるまで3ヶ月あるかな。」
家族にすら愛されることのなかったライトがカリアを諦めるのは、一瞬だった。
未来を変える努力をしながらも、その未来が来た時のために、ライトは準備を始めた。
コツコツ貯めたお金で入町税を払い、冒険者ギルドで登録をした。
初心者講習で、田舎から幼馴染3人で出てきたという18歳のボルト、ルウナ、ゲオルグと一緒になった。
戦闘スキルは無いけれど採取のスキルを持っていると言うと、仲間に誘われた。
冒険者はGランクからSランクまでランクがあり、皆Gランクからのスタートだった。
Gランクの依頼は町中での雑用がほとんどであり、冒険者らしい依頼は、防壁近くの浅い森での薬草採取しかなかった。
今思えば、そこに目を付けられたのだろう。
3人とも、最初は真面目な冒険者に見えた。
実際は自意識が高く、やりたいことしかやらない、現実が見えない奴らだったが、それに気付くにはライトには対人経験が少なすぎた。
村では家族が生活するために、薬草や山菜、木の実を採取するのが子供の仕事だった。
ボルトたちの採取は・・とても雑だった。
せっかくの薬草を使い物にならなくし続けた。
3か月後、ほとんどライトが採取した薬草だけで、彼らはFランクに上がった。
孤独だったライトは、1人になるのが怖かった。
暴言を吐かれても、搾取されても、動けなくなるまで暴力をふるい続けた家族と比べたら、善人に見えた。
予知で彼らのことを視ても、自分が頑張れば変わってくれるかもしれないと、頑張り続けていた。
そんな時、親を亡くして親戚を頼ってきたという、カリアに出会った。
カリアは町で唯一の教会に併設された、孤児院のシスターの遠縁だった。
カリアは冒険者に憧れていて、回復魔法が使えるということで、ボルトたちがパーティーに誘った。
ボルトたち幼馴染組は面倒くさがりで、依頼で発生する雑用は、自然とカリアとライトがやることになった。
カリアは小さな村の出身だった。
そのまま村に残れば、40も年上の男と結婚させられるところだったという。
都会に憧れる純朴な女の子。
彼女が優しいライトに恋をするのは、あっという間だった。
カリアの両親は同い年の幼馴染だったらしく、同い年の若い男との恋愛と結婚に強い憧れがあった。
2人が13歳になった時、結婚の約束をした。
カリアはその見た目に反して計算高く、パーティー内をよく見ていた。
18歳で冒険者になって、1年経ってもまだEランクにもなれない見た目だけのボルトより、実質パーティーを支えている13歳のライトの方が将来性があると考えた。
女の感で、ライトのスキルによる貢献に、なんとなく気付いていたのだ。
カリアの回復魔法は、効果の高いものではなかった。
無茶をする3人がよくケガをして依頼を途中リタイアすることが多かったが、回復魔法が使えるカリアが入って状況が好転した、とは言い難かった。
カリアもライトと同じで役立たずと言われ、搾取されるようになってきていた。
「漆黒の闇」は一つの依頼が終わると数日から数週間活動を休む。
にも拘らず、カリアが加入してから半年でEランクに上がった。
そこから盗賊のマルクが加わり、1年後にはDランクになった。
並みの冒険者としては、順調なランクアップだったが、依頼数や達成率からすると異常なランクアップだった。
バランスの良いパーティーではあった。
性格と言動に難ありの幼馴染トリオは、前衛の剣士に火魔法使いに盾使い。
何を考えているか分からないけれど、斥候としては優秀なマルク。
いつも笑顔を絶やさず優しいカリアは、とても低レベルではあるけれど回復魔法の他にバフやデバフが使える。
依頼の下調べから様々な交渉、依頼遂行中のメンバーの食事に各種雑用。
マッピングも討伐部位や素材の納品も、戦闘以外のことすべてが戦闘のできないライトの仕事だった。
分け前はライトが一番少なかった。
カリアは夢に恋するような少女だった。
彼女の視線が、戦闘ができない平凡なライトから剣で魔物を屠るボルトを追うようになったのは、結婚の約束をして数か月しか経っていない頃だった。
ライトたちの約束を知ったボルトが、カリアに気のある素振りをみせ、優しく接し始めたのだ。
カリアは度々ボルトに誘われて外出するようになった。
外出先では、ボルトの知り合いに会うことが多かった。
そのほとんどが裕福な身なりをしていて、中には貴族もいた。
ボルトは恥ずかしそうに、
「ずっと貴族の屋敷で護衛として働いていたんだけど、小さなころから冒険者に憧れていてね。護衛対象のご子息が侯爵家に婿入りされることになって、それを機に退職させてもらったんだ。」
この告白が、カリアの心を決めた。
カリアが、自分を守ってくれる強い男と結婚する自分の夢に酔っているのが、傍目から見てもよく分かった。
そしていつものようにライトは予知を視る。
鮮明であるほど近い未来に、それらは現実になる。
ライトの予知は、対象を絞って意識して視ることもできるけれど、突然目の前にその様子が映し出されることもある。
ライトの身に危険が迫っている時や、大きな変化が選択によって訪れる時だ。
今回は後者だった。
ボルトと男女の関係になるカリアが視えた。
続けてパーティーからライトが追放される場面が視えた。
「この鮮明さだと、これが起こるまで3ヶ月あるかな。」
家族にすら愛されることのなかったライトがカリアを諦めるのは、一瞬だった。
未来を変える努力をしながらも、その未来が来た時のために、ライトは準備を始めた。
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