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本編

婚約破棄 ~ side マリア ~

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「エレノア・ベイリンガル!貴様との婚約を破棄する!!」

ゲイル様が宣言した。
白馬の王子様ほどではないけれど、金髪碧眼のまぁまぁのイケメン。
なにより、今の国王が死ねば、国王になる人。
贅沢し放題!
超玉の輿!!

「俺を立てることもできないお前のような不出来な女は、国母に相応しくない!」

そう言って、ゲイル様が私の腰を抱いて引き寄せたわ。
美男美女、お似合いでしょう?
婚約破棄を言い渡されたエレノアとかいう女が、悲しそうにこちらを見ているわ。
ふふんっ、いい気味。
ゲイル様は聖女である私を選んだのよ!
侯爵がどんだけ偉いかしらないけど、あんたは私に負けたのよ!

「俺は真実の愛を見つけた!皆の者、聞いて驚け!このマリアは、異世界から転移してきた聖女なのだ!!!」

会場がざわつき始める。

そうよ、私は異世界から転移してきた聖女。
平伏しなさい!
って、なんで誰も私を敬わないのよ。
あぁ、まずはこの無様な女の行く末を楽しみにしているのね。
しょうがないわ!
こんな一生に一度見られるかどうかのイベント、私もと~っても楽しみですもの!
この婚約破棄ざまぁイベントが終わったら、みんな私に平伏すのよ!!

ゲイル様も興奮しすぎよ!
ふふふっ、ゲームでも楽しかった乙女ゲームの断罪イベントが実際に経験できるなんて、楽しいわっ!!

「あの!伝説の!『異世界から転移してきた聖女』だ!異世界の聖女が現れた国は、あらゆる外敵から守られ、栄えて金持ちになると言う、あの伝説の異世界の聖女なのだ!!マリアがいればこの国は栄え、贅沢の限りを尽くすことができるのだ!!」

ええ、ええ、贅沢の限りがつくせるのよ!!

私は嬉しくて、ゲイル様の腕に自分の腕を絡ませて、肩に頭を摺り寄せる。
仲の良さをエレノアに見せつけて、その顔が歪むのを楽しむのだ。

「マリアこそ、国王たる俺に相応しい!!!」

国王の妻…つまり、私は女王!!

「エレノア・ベイリンガル!貴様は国外追放だ!」

ゲイル様が、エレノアに向けてびしっと指を指しながら言った。
これが、あの、婚約破棄からの国外追放イベント!

お・も・し・ろ・す・ぎ・る!!

少し距離はあるけれど、エレノアが泣いた!
ぷぷっ、ざまぁ!!

「お父様、お母様、お兄様!」
「「「「「エレノア!」」」」」

なんか家族で抱き合ってるよ、みっともない。
でも、お兄様と呼ばれた人たちはイケメンね。
ハーレムに入れてあげてもいいわ!

暫く抱き合っていた6人が離れた。
あ~あ、おばさん、ショックで座り込んじゃったよ。
これ、侯爵家から除籍されて平民にってパターンにはならないかも?ざぁ~んねぇ~ん!

階段上からゲイル様と見るエレノアは、無様で哀れだわ!
気持ちいい!!

「元婚約者、詐欺師エレノア!貴様は早くこの国から出ていけ!!そして聖女であると長年王族である俺を騙していた罪で、ベイリンガル侯爵家は、取り潰しだ!!!」

ゲイル様が私の腰を強く抱きながら宣言したわ!
除籍じゃなくて、家ごと取り潰しね!素敵!!

「畏まりました!失礼いたします!!」

ダダダダダッ
エレノアが凄い足音をさせながら、会場から走り去ったわ!
そんなに悔しかったのね!!

「謹んで承りました!長年この国に仕えさせていただいたこと、身に余る光栄でございました!!失礼いたします!!!」

ダダダダダッ!!!!
バビュンッ!!!!

ああっ!
あのイケメン兄弟は残っても良かったのに!
後でゲイル様にお願いして、私の護衛に加えてもらいましょう!

会場が騒がしくなってきたわ。
みんながこのイベントを楽しんでいるのかと思ったら…

「エレノア様が聖女?」
「どういうことだ。」
「誰か、事実を知っている者はいないか?」
「16歳のエレノア様が聖女なら、16年前からのこの国の繁栄も納得できる。」
「確かに。」
「待てよ、聖女のエレノア様がこの国から追放されたということは、この国はどうなるんだ?」

会場からそんな声が聞こえてきたわ。

失礼な!
私が伝説の『異世界から転移してきた聖女』なんだから、国は栄えるに決まっているでしょっ!!
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