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本編
婚約破棄 ~ side エレノア ~
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「エレノア・ベイリンガル!貴様との婚約を破棄する!!」
豊穣の宴。
この国では同様の宴が、年に4回開かれる。
国内で領地を持つすべての貴族の代表が、その季節に生産されている収穫物の初物を持参して王城に登城し、今期の予測収穫高を報告する。
登城した人々は、各地の収穫物の出来具合を見て、王城の役人と相談しながら各領地での取引量と値段を決めて契約をする。
災害らしい災害はここ16年起こっていないが、自然災害や魔物被害により収穫量が減った領地の分は、一旦国が買い上げた他の領地の収穫物を、被害を受けた領地の財政に沿った価格で販売する。
国内のすべての国民が飢えることなく安心して暮らせるように、各領地の代表は、どんなに忙しくても決められた日に登城してくる。
豊穣の宴は、そんな彼らの旅の疲れを労う意味もあり、領主や領主代行の重鎮たちが寛ぎながら各領地間の情報交換をする、大切な社交の場でもあった。
そんな大切意味合いを持つ、国中の領地持ちの貴族が集まる豊穣の宴の席での、第一王子の突然の発言だった。
「俺を立てることもできないお前のような不出来な女は、国母に相応しくない!」
そう言って、第一王子ゲイルが、明らかに日本人顔の女の腰を抱いて引き寄せる。
化粧が濃すぎて年齢が微妙だけれど、恐らく20歳前後。
茶色の髪に黒い目。その茶色の髪の生え際は黒く、プリン状態だ。
体のラインがまったく想像できない程フリルだらけの、目に眩しいピンクのドレスを着て笑っている。微笑んでいるのではない。ドヤ顔で笑っているのだ。
「俺は真実の愛を見つけた!皆の者、聞いて驚け!このマリアは、異世界から転移してきた聖女なのだ!!!」
会場がざわつき始める。
信用の無い第一王子の言葉を鵜呑みにする者は、ここにはいない。
だいたい、聖女と認定するのは教会である。
公明正大を謳う教会は、聖女に認定された者が現れると、きちんと国内に発表する。
聖女を取り込んで利益を貪る、なんてことは絶対にしない。
今日の宴には、教会関係者は参加していない。
そこをついてきたつもりなの?
バレないと本気で思ってるの?
馬鹿なの?
あ、出会った頃には馬鹿だった。
ゲイルは興奮していて、自分に酔っているのが丸分かりだ。
「あの!伝説の!『異世界から転移してきた聖女』だ!異世界の聖女が現れた国は、あらゆる外敵から守られ、栄えて金持ちになると言う、あの伝説の異世界の聖女なのだ!!マリアがいればこの国は栄え、贅沢の限りを尽くすことができるのだ!!」
いやいやいやいや。この国はすっごく平和だし、他国と比べものにならないくらい繁栄してるでしょ。
ここに異世界から転生してきた大聖女がいるんだから。
これ以上何を望むのよ。
あ、自分が1秒も働かずに贅沢したいと思っているのか。
マリアと呼ばれた女が、ゲイルの腕に腕を絡ませ、肩に頭を摺り寄せる。
その視線は、私をロックオンしている。
「マリアこそ、国王たる俺に相応しい!!!」
ゲイルとマリアを除いた会場内のすべての人々の心が一つになった。
( いつからお前が国王になったんだ!?)
豊穣の宴。
この国では同様の宴が、年に4回開かれる。
国内で領地を持つすべての貴族の代表が、その季節に生産されている収穫物の初物を持参して王城に登城し、今期の予測収穫高を報告する。
登城した人々は、各地の収穫物の出来具合を見て、王城の役人と相談しながら各領地での取引量と値段を決めて契約をする。
災害らしい災害はここ16年起こっていないが、自然災害や魔物被害により収穫量が減った領地の分は、一旦国が買い上げた他の領地の収穫物を、被害を受けた領地の財政に沿った価格で販売する。
国内のすべての国民が飢えることなく安心して暮らせるように、各領地の代表は、どんなに忙しくても決められた日に登城してくる。
豊穣の宴は、そんな彼らの旅の疲れを労う意味もあり、領主や領主代行の重鎮たちが寛ぎながら各領地間の情報交換をする、大切な社交の場でもあった。
そんな大切意味合いを持つ、国中の領地持ちの貴族が集まる豊穣の宴の席での、第一王子の突然の発言だった。
「俺を立てることもできないお前のような不出来な女は、国母に相応しくない!」
そう言って、第一王子ゲイルが、明らかに日本人顔の女の腰を抱いて引き寄せる。
化粧が濃すぎて年齢が微妙だけれど、恐らく20歳前後。
茶色の髪に黒い目。その茶色の髪の生え際は黒く、プリン状態だ。
体のラインがまったく想像できない程フリルだらけの、目に眩しいピンクのドレスを着て笑っている。微笑んでいるのではない。ドヤ顔で笑っているのだ。
「俺は真実の愛を見つけた!皆の者、聞いて驚け!このマリアは、異世界から転移してきた聖女なのだ!!!」
会場がざわつき始める。
信用の無い第一王子の言葉を鵜呑みにする者は、ここにはいない。
だいたい、聖女と認定するのは教会である。
公明正大を謳う教会は、聖女に認定された者が現れると、きちんと国内に発表する。
聖女を取り込んで利益を貪る、なんてことは絶対にしない。
今日の宴には、教会関係者は参加していない。
そこをついてきたつもりなの?
バレないと本気で思ってるの?
馬鹿なの?
あ、出会った頃には馬鹿だった。
ゲイルは興奮していて、自分に酔っているのが丸分かりだ。
「あの!伝説の!『異世界から転移してきた聖女』だ!異世界の聖女が現れた国は、あらゆる外敵から守られ、栄えて金持ちになると言う、あの伝説の異世界の聖女なのだ!!マリアがいればこの国は栄え、贅沢の限りを尽くすことができるのだ!!」
いやいやいやいや。この国はすっごく平和だし、他国と比べものにならないくらい繁栄してるでしょ。
ここに異世界から転生してきた大聖女がいるんだから。
これ以上何を望むのよ。
あ、自分が1秒も働かずに贅沢したいと思っているのか。
マリアと呼ばれた女が、ゲイルの腕に腕を絡ませ、肩に頭を摺り寄せる。
その視線は、私をロックオンしている。
「マリアこそ、国王たる俺に相応しい!!!」
ゲイルとマリアを除いた会場内のすべての人々の心が一つになった。
( いつからお前が国王になったんだ!?)
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