聖女を隷属させてこき使う国は捨てちゃいます!

SHEILA

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魔獣 3

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ハロルドとブルネッタは、機嫌の悪いバーバラを連れ、馬車で奴隷商に向かう。
王都には正規の奴隷商は2店、非正規の奴隷商が1店あった。

正規の奴隷商にも魔獣はいたが、契約の主が6歳のバーバラだと分かると、取引を断られた。
善悪の判断がつかない子供に、バーバラが希望する危険度が高い魔獣との主従関係を結ばせるのは、危険すぎるとの理由からだった。
この2店の店主にも、この男爵家とバーバラの噂は届いていたので、例えバーバラが成人していたとしても、何かしらの理由を付けて、この男爵家との取引は断っていただろう。

3人は非正規の奴隷商を訪れることになった。
非正規の奴隷商が扱う商品は種類が多く、どんなニーズにも答えてくれる代わりに、非常に値段が高かった。

「いるじゃない!私にぴったりの魔獣!!」

大人よりも目線が高い、大きな黒い狼だった。
金色の瞳には知性が感じられる気もする。

「これはいくらだ?」

「はい。こちらは珍しいブラックフォレストウルフの雌になります。まだ若く繁殖に使うこともできるため、白金貨80枚となります。」

「高すぎるだろう!!」

「…。ご予算は如何ほどで?」

ハロルドは店主をバーバラとブルネッタから離れた場所に連れて行き、小声で話し始める。

「金貨100枚、白金貨1枚までだ。」

「では、こちらの雄の狼はいかがでしょう。」

店主はバーバラたちから死角になる通路を進んで行き、ドアを開ける。

「傷が多く、年を取っていますが、近くで見なければ立派なカッコいい狼ですよ。」

この店主もまた、子爵令嬢の誕生日パーティーでの出来事を知っていた。

部屋の中にいたのは、ブラックフォレストウルフより一回り小さな黒い狼で、所々深い傷のため毛が無く肌が露出していた。
尾が半分千切れているし、手足は細く、体はガリガリだ。
だが、黙って座っていれば、遠目には立派な狼に見える。

「バーバラ、ちょっとこっちにおいで。この狼を買ってやろう。」

「えー!?なんか汚れてるじゃない。痩せてるし!!」

「綺麗に洗って、餌をたっぷり食べさせてやればいい。こっちは雄だから、少し手間をかければ、さっきの狼より立派な狼になるぞ。」

「むぅー。じゃあ、立派な狼になるまで、お父様が世話をしてよね!!綺麗になったら、お披露目会をするわ!!」

なんとかバーバラの許可が出て、ハロルドはほっとする。

「では、主従の隷属契約はどなたがされますか?」

「私に決まってるでしょ!!」

得意げにバーバラが答える。

「お嬢様、お嬢様は今、この狼が立派になるまではお父様がお世話されるようにおっしゃいましたよね?主従関係が無い者がお世話するのは、少し危険なのですが。」

「問題ないわ!!」

自信たっぷりにバーバラが答える。

「娘の希望通りに。」

ハロルドが答える。

「先ほども申し上げましたが、主従関係が無い者が世話をするのは、危険が伴いますよ?何が起こっても我々は責任を負いません。我々は説明責任を果たし、貴家はそれを了承された。その旨を記載した契約書類にご署名いただきますが、よろしいですね?」

「問題ない。」

ハロルドが答えた。
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