聖女を隷属させてこき使う国は捨てちゃいます!

SHEILA

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初めて癒しの魔法を使った日 1

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魔獣小屋から部屋に戻ったハロルドは、とても不機嫌だった。

「どうやったのか分からんが、魔獣は魔獣小屋の檻の中にいた。」
「まぁ!なんてことでしょう。あの子が噛み殺された後、バーバラが魔獣を檻に入れに行くはずでしたのに。」
「魔獣が従順になる前に終わらせなければならん。明日は魔獣小屋から鎖に繋いで庭に出せと命じよう。鎖を繋ぐ前にかみ殺されるだろう。」

その夜ララは、真冬ではないので凍え死ぬことはないだろうと、魔獣小屋の扉の前で丸まって眠った。
黒い狼の魔獣が恐ろしかったのだ。

翌朝、魔獣の餌を取りに行こうとするララの前に、ハロルドとブルネッタが立ち塞がった。

「今日は躾のために、魔獣を庭に出す。」
「バーバラの朝食が終わったら、魔獣を鎖に繋いで、庭に連れて来なさい。」

(あの魔獣を外に出すの?契約もしていない私が?)

「・・はい。」

そう答えるしか、ララにはできなかった。

(私、今日死ぬのかな…)

嫌な予感しかしなかった。



魔獣が餌を食べ終えてだいぶ経ってから、ハロルドとブルネッタとバーバラが魔獣小屋にやって来た。

「私たちは庭にいるから、直ぐに魔獣を連れて来なさい!待たせるんじゃないぞ!!」

そう言い残し、魔獣小屋から離れて行ってしまった。

ララは魔獣を見る。
お腹が膨れているからか、邪悪さは感じるが、昨日恐怖を感じた時ほどではないように見えた。
小屋の中に用意されていた首輪と鎖を、風魔法を使って魔獣に取り付ける。
ララは細かな魔力操作が得意だった。
重そうな隷属の首輪をされているのに、更に首輪と鎖を取り付けられた魔獣は不快そうだったが、その視線はララを見ていないように思えた。

そう、さっきハロルドとブルネッタとバーバラの3人が魔獣小屋を訪れてから、魔獣の視覚も嗅覚も聴覚も、3人を追っていたのだ。

檻の出入り口を開けると、魔獣はゆっくりと檻から出てきた。
ララは魔獣の斜め後ろから、魔獣に進む方向を指示してみた。
魔獣は自身の感覚によりララの言う通りの方向に進むことになり、バーバラたちが待っている庭に辿り着いた。
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