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第2章
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リンリンって、いそがしい鈴虫がいなくなった10月。
大河は、サッカークラブの部活動に励んでいた。
まあ遊び感覚に近いけどね。
一也はプロになりたいみたいだけど、ぼくは違う。現実的。
サッカーは趣味。将来は公務員を目指す。
割り切った考えだった。
安定した将来を求めていた。
実歩の苦労を見てきているからだ。
お母さんにこれ以上負担をかけちゃいけないし、わがまま言っちゃいけないんだ。
真鈴は、今は私立中学に受験のため、塾や自習に時間を費やしている。
背伸びした恋に憧れるクラスの女子とはまるで違う。
「器用そうに見えるけど、私、不器用なんだ。今は恋できないかな」
大河は、女子たちの中、真鈴がそう言ってるのをたまたま耳にした。
じゃあ……受験が終われば他の女子みたいに彼氏を作るのかな……。
真に受けた大河は、少ししゅんとしてしまった。
末岡くんと辻さん。苗字呼びはなれてきて、とたんに変な噂は立たなくなった。
だから二学期もふたりで植物係を続けていた。
ふたりきりになったとき、大河はクセで「辻さん」呼びをしてしまったことがあった。
真鈴は、くもった顔で、
「今は私たちしかいないよ? ちゃんと名前で呼んで」って。
ああ、体がむずむずってかゆくなる。
ぼくらは、少し不思議な関係だ。
不思議で不安定で、特別で。
それが、成長して、変化して。かたちを変えていくことが、怖かった。
たとえば。
3年後、中学2年生になった頃は、ぼくは真鈴と、今と同じ関係なのだろうか。
真鈴は、私立中学に進学する。かしこいから、落ちるわけない。
そうなると会う時間も会う回数も、ぐーんとなくなる。
その頃ぼくたちは。香葉来も含めて、なかよし3人のまま……。
特別な友達を続けられているのだろうか。
大河は、真鈴と密に過ごせば過ごすほど、ちょっと先の未来の展望を想像してしまう。
希望的な観測はあまり描けない。
特別という名の風船は、どんどん膨れ上がっていく。
でもどこかで。
パンッ!! と弾けたり。
シュー……と徐々に萎んだり。
しないかな。
ネガティブな未来ばかり、意味もなく浮かぶ。
大河は、真鈴との別れを早くから意識して、そうやって、ひとりでうじうじすることが多かった。
もうひとりの特別な友達、香葉来とは、そんな感情は抱かない。
おとなりさん同士だから。6歳の頃からずっと一緒だから。
別れがくるとはこれっぽっちも思えない。安心できる。
そんな香葉来は、今、学童クラブで、一年生女児のお姉さん、世話係として大活躍してる。
「香葉来ちゃん。フレア描いて~」
「エンちゃんズルい! マナミが先にリーフ描いてもらうって約束してたもん! 香葉来ちゃんはフレアよりリーフが好きだしかわいいし!」
「フレアもかわいいよ。強いし……」
「リーフの方が強いよ。フレアは水かけられたら簡単にやられちゃう。ちょーよわっちい」
「……う……うぇ……そ、そんなこと……ないもん……ぅうえん」
たびたび起きる、香葉来争奪戦。
1年生のけんかは、たまに起きる。だいたい、気の強いマナミちゃんに、気弱なエンちゃんが口げんかで負けて泣き出しちゃう展開。香葉来はふたりの間に入る。
「もぉーだーめ。ケンカしないで。プリ魔女に強いも弱いもないの」
ちなみにケンカの発端は、マナミちゃんが香葉来に絵を描いてもらう約束をしていて、そこにエンちゃんもリクエストしてきたものだから、マナミちゃんが怒った。っていう流れ。
「みんな得意、不得意があるけど力を合わせるから敵をやっつけることができるの。フレアは炎の魔女よ。悪い気を焼き払ってくれるし、寒くなったらみんなをあたためてくれる。リーフは葉の魔女。枯れた大地を緑に染めてくれるし、アクアとペアになったら力もアップする。ふたりとも強くてカッコいいんだよ? もちろん、かわいいし、あたしはふたりとも好きだよ?」
「そんなこと言って香葉来ちゃんは葉の魔女のキーホルダーつけてるから、ほんとはリーフが好きなんでしょ?」
マナミちゃん、納得がいかない様子。
「……ぐすん……香葉来ちゃんは、フレア嫌いなの……?」
エンちゃん、ぐずる。
香葉来、「うんん。嫌いじゃないよ」とエンちゃんにほほえみかける。マナミちゃんにもうららかな視線を送る。
「あとね、この子は葉の戦士じゃない。初代の宝石の魔女、エメラルドよ。この子は特別なの。今のフェアリーだったらみんな好きだよ。えーっと、じゃあがんばってリーフもフレアも描くからなか直りしよ? お互いが好きなものを悪く言っちゃダメ。悪く言っちゃもう描いてあげないよ?」
「やだやだぁー! エンちゃんごめんね。フレアのことバカにして」
「……ううん。マナミちゃんが先に約束してたのに、あたしがわがまま言ったから……あたしもごめんね」
大河は、香葉来が女児をなだめる姿を見て、感心していた。
まあ、わりと強引だけど。
ふたりの意見を尊重しなから、ちゃんとなか直りさせた。
香葉来は、低学年の児童たちと接するときは、大河や真鈴としゃべるときとは違う。
しっかりとした口ぶりだし、自信をもってしゃべってる。
香葉来はふたりからお絵かき帳を受け取り、それぞれひとつずつ絵を描いていく。
学童クラブでは年長者だし、「お姉さん」役をこなそうとしているのかもしれない。
だけど……。
最近、香葉来の様子がおかしかった。
学童クラブ以外の場所。たとえば登校しているとき、たまに廊下ですれ違うときとか。
しなしな、萎んだナスみたいに、香葉来は元気がないのだ。
クラスでなんかあったの……?
算数障害が発覚した頃の香葉来を、大河は見ていた。
香葉来も成長して、障害にくじけずに頑張っている。なのに、そのときと同じ顔。
大河はうだうだしてられなかった。
下校のとき、香葉来に、ストレートに聞いてみよう。
もう高学年。大河と香葉来は、母の迎えを待っていることはない。
ふたり、徒歩で下校している。こんなときは好都合だ。
そして下校の時間。
大河は、香葉来と並んで歩いた。学校前の歩道橋をのぼる。
10月。陽の沈みは早い。6時半でも暗い。
ふたりとも緑色に光る反射材のリストバンドをつけている。小型のライトも持っている。多少、暗くても短い距離だったら大丈夫。
乾いた空気。外は誰もいない。ふたりだけで異次元に迷い込んだ、気分。
大河は、ごっくん、唾を飲む。こぶしを軽くグーにして。
心で「いくぞ!」とつぶやき、コクっとひとりうなずいた。
「あのさ香葉来。最近元気ない?」
「……え……? そう、かな……」
香葉来はビリリと背筋を立て、ぐぐっと喉を不自然に鳴らした。
顔には動揺の漢字二文字。
「うん。なんか、イヤなことでもあった?」
「……ないよ」
歩道橋の頂上。山から吹いてくる風、ひゅっととおる。
ふたりは鈍い足。猫背気味。のろのろ。とろとろ。亀みたい。
大河は香葉来に「重さ」を感じた。
ゆえに「何か隠している」と、直感的に悟った。
大河には弱いが根拠もある。香葉来は最近、クラスの話をしてこない。
「……森塚さん、河田さんとあんまり仲よくないの?」
「……な、んで……?」
「さくちゃん、桃ちゃんって言わないじゃん」
「……べつ、に」
「別にって。心配してるのに」
大河は思わず不満を吐いてしまう。
絶対悩んでるじゃん。ぼくのこと、頼ってよ。
って気持ちを前面に表してしまった。
「じゃあ心配しないでほしい」
「なんだよ友達じゃないか」
声を荒げた。
「友達……だけど……」
香葉来はうつむいた。彼女の声は覇気をなくしている。灰色よりも限りなく黒に近い無彩色。
瞳のかがやきも、ふっと息を吹けば消えそうな細いロウソクの火のようだ。
「だけど……」で言葉が途切れた。ついには足を止めてしまう。
大河は、どストレートに聞き過ぎた。反省した。
「ごめん。キツく言って」
「……ううん」
けんかすればまたつらい無言期間になるから、大河は素直に頭を下げた。
香葉来はごもった声だけど許してくれた。
ダメだ。香葉来は、いろいろ聞かれるの、イヤがってる。
急いじゃダメ。えっと、ぼくは。香葉来を元気づけなきゃ。
よし、優吾に教わったやつ、やろう。
しーんとする中。大河は……。
「タッタタッタ、タッタッタピオカ!」
と!
唐突にクラスで人気のお笑い芸人のギャグを披露した。
しーんは、もっとしーんになりそう。やばい、すべった! むちゃくちゃさぶい!
大事故だった。
香葉来は、きょとんと丸い目で大河を見つめる。
本当に、しーん……と、なった。
……けど。
「……くくっ」
香葉来は笑い、腰を曲げてお腹を押さえだした。
「……くくく……タピオカ兄弟だ……くくくっ……おっかしい」
「え? ウケた……」
「だって大河くん、普通そんなこと、しないもん……くくくっ」
「マジ? えっと……じゃあ」
大河、色々吹っ切れた感じで、ギャグを続ける。
「1にタピオカ、2にタピオカ、3・4がなくて、5にインスタ!」
「くくくくっ……お腹痛いからやめてぇー」
くくくく。
香葉来からもれる、キーの高い笑い声。
ケラケラ楽しげな香葉来の顔。
まさかの大ウケだった。
それでも、暗かった香葉来を元気づけることができた。
香葉来にはにこにこが似合うから、不安の根っこは、ぼくが刈らなきゃいけない。
香葉来は大切な友達だから。
大河は強い使命感を抱いた。
もうひとりの心強い味方。真鈴に相談しよう。
うん、きっと大丈夫。
大河は、サッカークラブの部活動に励んでいた。
まあ遊び感覚に近いけどね。
一也はプロになりたいみたいだけど、ぼくは違う。現実的。
サッカーは趣味。将来は公務員を目指す。
割り切った考えだった。
安定した将来を求めていた。
実歩の苦労を見てきているからだ。
お母さんにこれ以上負担をかけちゃいけないし、わがまま言っちゃいけないんだ。
真鈴は、今は私立中学に受験のため、塾や自習に時間を費やしている。
背伸びした恋に憧れるクラスの女子とはまるで違う。
「器用そうに見えるけど、私、不器用なんだ。今は恋できないかな」
大河は、女子たちの中、真鈴がそう言ってるのをたまたま耳にした。
じゃあ……受験が終われば他の女子みたいに彼氏を作るのかな……。
真に受けた大河は、少ししゅんとしてしまった。
末岡くんと辻さん。苗字呼びはなれてきて、とたんに変な噂は立たなくなった。
だから二学期もふたりで植物係を続けていた。
ふたりきりになったとき、大河はクセで「辻さん」呼びをしてしまったことがあった。
真鈴は、くもった顔で、
「今は私たちしかいないよ? ちゃんと名前で呼んで」って。
ああ、体がむずむずってかゆくなる。
ぼくらは、少し不思議な関係だ。
不思議で不安定で、特別で。
それが、成長して、変化して。かたちを変えていくことが、怖かった。
たとえば。
3年後、中学2年生になった頃は、ぼくは真鈴と、今と同じ関係なのだろうか。
真鈴は、私立中学に進学する。かしこいから、落ちるわけない。
そうなると会う時間も会う回数も、ぐーんとなくなる。
その頃ぼくたちは。香葉来も含めて、なかよし3人のまま……。
特別な友達を続けられているのだろうか。
大河は、真鈴と密に過ごせば過ごすほど、ちょっと先の未来の展望を想像してしまう。
希望的な観測はあまり描けない。
特別という名の風船は、どんどん膨れ上がっていく。
でもどこかで。
パンッ!! と弾けたり。
シュー……と徐々に萎んだり。
しないかな。
ネガティブな未来ばかり、意味もなく浮かぶ。
大河は、真鈴との別れを早くから意識して、そうやって、ひとりでうじうじすることが多かった。
もうひとりの特別な友達、香葉来とは、そんな感情は抱かない。
おとなりさん同士だから。6歳の頃からずっと一緒だから。
別れがくるとはこれっぽっちも思えない。安心できる。
そんな香葉来は、今、学童クラブで、一年生女児のお姉さん、世話係として大活躍してる。
「香葉来ちゃん。フレア描いて~」
「エンちゃんズルい! マナミが先にリーフ描いてもらうって約束してたもん! 香葉来ちゃんはフレアよりリーフが好きだしかわいいし!」
「フレアもかわいいよ。強いし……」
「リーフの方が強いよ。フレアは水かけられたら簡単にやられちゃう。ちょーよわっちい」
「……う……うぇ……そ、そんなこと……ないもん……ぅうえん」
たびたび起きる、香葉来争奪戦。
1年生のけんかは、たまに起きる。だいたい、気の強いマナミちゃんに、気弱なエンちゃんが口げんかで負けて泣き出しちゃう展開。香葉来はふたりの間に入る。
「もぉーだーめ。ケンカしないで。プリ魔女に強いも弱いもないの」
ちなみにケンカの発端は、マナミちゃんが香葉来に絵を描いてもらう約束をしていて、そこにエンちゃんもリクエストしてきたものだから、マナミちゃんが怒った。っていう流れ。
「みんな得意、不得意があるけど力を合わせるから敵をやっつけることができるの。フレアは炎の魔女よ。悪い気を焼き払ってくれるし、寒くなったらみんなをあたためてくれる。リーフは葉の魔女。枯れた大地を緑に染めてくれるし、アクアとペアになったら力もアップする。ふたりとも強くてカッコいいんだよ? もちろん、かわいいし、あたしはふたりとも好きだよ?」
「そんなこと言って香葉来ちゃんは葉の魔女のキーホルダーつけてるから、ほんとはリーフが好きなんでしょ?」
マナミちゃん、納得がいかない様子。
「……ぐすん……香葉来ちゃんは、フレア嫌いなの……?」
エンちゃん、ぐずる。
香葉来、「うんん。嫌いじゃないよ」とエンちゃんにほほえみかける。マナミちゃんにもうららかな視線を送る。
「あとね、この子は葉の戦士じゃない。初代の宝石の魔女、エメラルドよ。この子は特別なの。今のフェアリーだったらみんな好きだよ。えーっと、じゃあがんばってリーフもフレアも描くからなか直りしよ? お互いが好きなものを悪く言っちゃダメ。悪く言っちゃもう描いてあげないよ?」
「やだやだぁー! エンちゃんごめんね。フレアのことバカにして」
「……ううん。マナミちゃんが先に約束してたのに、あたしがわがまま言ったから……あたしもごめんね」
大河は、香葉来が女児をなだめる姿を見て、感心していた。
まあ、わりと強引だけど。
ふたりの意見を尊重しなから、ちゃんとなか直りさせた。
香葉来は、低学年の児童たちと接するときは、大河や真鈴としゃべるときとは違う。
しっかりとした口ぶりだし、自信をもってしゃべってる。
香葉来はふたりからお絵かき帳を受け取り、それぞれひとつずつ絵を描いていく。
学童クラブでは年長者だし、「お姉さん」役をこなそうとしているのかもしれない。
だけど……。
最近、香葉来の様子がおかしかった。
学童クラブ以外の場所。たとえば登校しているとき、たまに廊下ですれ違うときとか。
しなしな、萎んだナスみたいに、香葉来は元気がないのだ。
クラスでなんかあったの……?
算数障害が発覚した頃の香葉来を、大河は見ていた。
香葉来も成長して、障害にくじけずに頑張っている。なのに、そのときと同じ顔。
大河はうだうだしてられなかった。
下校のとき、香葉来に、ストレートに聞いてみよう。
もう高学年。大河と香葉来は、母の迎えを待っていることはない。
ふたり、徒歩で下校している。こんなときは好都合だ。
そして下校の時間。
大河は、香葉来と並んで歩いた。学校前の歩道橋をのぼる。
10月。陽の沈みは早い。6時半でも暗い。
ふたりとも緑色に光る反射材のリストバンドをつけている。小型のライトも持っている。多少、暗くても短い距離だったら大丈夫。
乾いた空気。外は誰もいない。ふたりだけで異次元に迷い込んだ、気分。
大河は、ごっくん、唾を飲む。こぶしを軽くグーにして。
心で「いくぞ!」とつぶやき、コクっとひとりうなずいた。
「あのさ香葉来。最近元気ない?」
「……え……? そう、かな……」
香葉来はビリリと背筋を立て、ぐぐっと喉を不自然に鳴らした。
顔には動揺の漢字二文字。
「うん。なんか、イヤなことでもあった?」
「……ないよ」
歩道橋の頂上。山から吹いてくる風、ひゅっととおる。
ふたりは鈍い足。猫背気味。のろのろ。とろとろ。亀みたい。
大河は香葉来に「重さ」を感じた。
ゆえに「何か隠している」と、直感的に悟った。
大河には弱いが根拠もある。香葉来は最近、クラスの話をしてこない。
「……森塚さん、河田さんとあんまり仲よくないの?」
「……な、んで……?」
「さくちゃん、桃ちゃんって言わないじゃん」
「……べつ、に」
「別にって。心配してるのに」
大河は思わず不満を吐いてしまう。
絶対悩んでるじゃん。ぼくのこと、頼ってよ。
って気持ちを前面に表してしまった。
「じゃあ心配しないでほしい」
「なんだよ友達じゃないか」
声を荒げた。
「友達……だけど……」
香葉来はうつむいた。彼女の声は覇気をなくしている。灰色よりも限りなく黒に近い無彩色。
瞳のかがやきも、ふっと息を吹けば消えそうな細いロウソクの火のようだ。
「だけど……」で言葉が途切れた。ついには足を止めてしまう。
大河は、どストレートに聞き過ぎた。反省した。
「ごめん。キツく言って」
「……ううん」
けんかすればまたつらい無言期間になるから、大河は素直に頭を下げた。
香葉来はごもった声だけど許してくれた。
ダメだ。香葉来は、いろいろ聞かれるの、イヤがってる。
急いじゃダメ。えっと、ぼくは。香葉来を元気づけなきゃ。
よし、優吾に教わったやつ、やろう。
しーんとする中。大河は……。
「タッタタッタ、タッタッタピオカ!」
と!
唐突にクラスで人気のお笑い芸人のギャグを披露した。
しーんは、もっとしーんになりそう。やばい、すべった! むちゃくちゃさぶい!
大事故だった。
香葉来は、きょとんと丸い目で大河を見つめる。
本当に、しーん……と、なった。
……けど。
「……くくっ」
香葉来は笑い、腰を曲げてお腹を押さえだした。
「……くくく……タピオカ兄弟だ……くくくっ……おっかしい」
「え? ウケた……」
「だって大河くん、普通そんなこと、しないもん……くくくっ」
「マジ? えっと……じゃあ」
大河、色々吹っ切れた感じで、ギャグを続ける。
「1にタピオカ、2にタピオカ、3・4がなくて、5にインスタ!」
「くくくくっ……お腹痛いからやめてぇー」
くくくく。
香葉来からもれる、キーの高い笑い声。
ケラケラ楽しげな香葉来の顔。
まさかの大ウケだった。
それでも、暗かった香葉来を元気づけることができた。
香葉来にはにこにこが似合うから、不安の根っこは、ぼくが刈らなきゃいけない。
香葉来は大切な友達だから。
大河は強い使命感を抱いた。
もうひとりの心強い味方。真鈴に相談しよう。
うん、きっと大丈夫。
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