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第七章 弟切草
侵攻
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晴頼を拘束していた氷は溶け、炎に包まれ棺桶も消え去った。
しかし、晴頼は自身の中に込められた氷炎の楔の存在を確かに感じていた。
双子の兄達を追ってアララガ国へと辿り着いていたエミリーも合流し、晴頼の能力を吟味するため、軍の訓練場へと向かっていた。
軍施設の地下に作られた訓練場は、魔法を防ぐ障壁で囲まれ、様々な兵器が保管され、運用試験が行われていた。
対魔物戦を想定した訓練もあり、上位魔術で生成された各属性のゴーレムを相手にするもので、下級の剣士、魔術師では傷一つ付けることができないほど、強力なゴーレムを相手にするものだ。
ファザはその中でもより強力な闇の属性を持つゴーレムを晴頼へ仕向けた。
「これで死ねば、それまでの力だったということ」
ゴーシェやエミリーの、早計過ぎるのではという言葉にファザはそう返し、晴頼は刀を抜く。
そしてゴーレムは瞬く間に細切れになり、その場に崩れ落ちた。
「おもちゃを切っても意味ねぇよ」
晴頼は吐き捨て、刀を鞘に納めた。
「いいだろう、ターリー国へ向かえ、そこで存分に力を振るうが良い」
ファザはそう言うと、双子の息子達に目配せした。
「こいつを使って侵攻しようってか、相変わらずぶっ飛んでんなぁ」
ゴーシェは笑って返すが、ローシュとエミリーは怪訝な表情を浮かべている。
「父上、ターリー国とは和平に向けて休戦状態にあります。我ら軍部の侵攻が公けになれば、国王も……」
「何のことだ? 誰が侵攻せよと言った? 晴頼が力を試したいと願っているだけであろう」
「父上……」
「ゴーシェ、ローシュ、晴頼に付いて行け。隠密行動を怠るなよ」
ファザは楽し気に伝えた。そして晴頼には隠れることなく思う存分に刀を振るえと肩を叩く。
「エミリー、お前はハナを見張れ、弟切草の入った植木の手入れを怠るな、決して枯らすでないぞ」
「分かりました」
自分は命令されただけ、そして成功させ父親に褒められた。
ただそれだけのこと……。
エミリーはその思いを胸に、それ以上何も語らずに踵を返した。
「ちょっとした長旅だ。仲良くやろうぜ晴頼」
ゴーシェは親し気に晴頼の肩に腕を回す。
「そのターリーという国で、俺はなんでも切っていいんだな?」
晴頼がゴーシェに聞く。
「ああ、なんでもだ、お前は自由。好きに暴れろ」
「そうか……」
「どうした、怖いのか? 震えているぞ」
「分からない、これは……この体の震えはなんだ?」
「たぶん武者震いってヤツだな、興奮しているんだろ? わかるぜ」
「ああ、そうか……これが……」
晴頼は、ゴーシェと口付けを交わした時のような恍惚とした表情を浮かべ「向かおう、今すぐにだ」と、ゴーシェの手を引いた。
しかし、晴頼は自身の中に込められた氷炎の楔の存在を確かに感じていた。
双子の兄達を追ってアララガ国へと辿り着いていたエミリーも合流し、晴頼の能力を吟味するため、軍の訓練場へと向かっていた。
軍施設の地下に作られた訓練場は、魔法を防ぐ障壁で囲まれ、様々な兵器が保管され、運用試験が行われていた。
対魔物戦を想定した訓練もあり、上位魔術で生成された各属性のゴーレムを相手にするもので、下級の剣士、魔術師では傷一つ付けることができないほど、強力なゴーレムを相手にするものだ。
ファザはその中でもより強力な闇の属性を持つゴーレムを晴頼へ仕向けた。
「これで死ねば、それまでの力だったということ」
ゴーシェやエミリーの、早計過ぎるのではという言葉にファザはそう返し、晴頼は刀を抜く。
そしてゴーレムは瞬く間に細切れになり、その場に崩れ落ちた。
「おもちゃを切っても意味ねぇよ」
晴頼は吐き捨て、刀を鞘に納めた。
「いいだろう、ターリー国へ向かえ、そこで存分に力を振るうが良い」
ファザはそう言うと、双子の息子達に目配せした。
「こいつを使って侵攻しようってか、相変わらずぶっ飛んでんなぁ」
ゴーシェは笑って返すが、ローシュとエミリーは怪訝な表情を浮かべている。
「父上、ターリー国とは和平に向けて休戦状態にあります。我ら軍部の侵攻が公けになれば、国王も……」
「何のことだ? 誰が侵攻せよと言った? 晴頼が力を試したいと願っているだけであろう」
「父上……」
「ゴーシェ、ローシュ、晴頼に付いて行け。隠密行動を怠るなよ」
ファザは楽し気に伝えた。そして晴頼には隠れることなく思う存分に刀を振るえと肩を叩く。
「エミリー、お前はハナを見張れ、弟切草の入った植木の手入れを怠るな、決して枯らすでないぞ」
「分かりました」
自分は命令されただけ、そして成功させ父親に褒められた。
ただそれだけのこと……。
エミリーはその思いを胸に、それ以上何も語らずに踵を返した。
「ちょっとした長旅だ。仲良くやろうぜ晴頼」
ゴーシェは親し気に晴頼の肩に腕を回す。
「そのターリーという国で、俺はなんでも切っていいんだな?」
晴頼がゴーシェに聞く。
「ああ、なんでもだ、お前は自由。好きに暴れろ」
「そうか……」
「どうした、怖いのか? 震えているぞ」
「分からない、これは……この体の震えはなんだ?」
「たぶん武者震いってヤツだな、興奮しているんだろ? わかるぜ」
「ああ、そうか……これが……」
晴頼は、ゴーシェと口付けを交わした時のような恍惚とした表情を浮かべ「向かおう、今すぐにだ」と、ゴーシェの手を引いた。
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