35 / 52
第六章 ガーベラ
色欲の魔法使い
しおりを挟む
ハナ達がダンジョンに挑まんとする頃。
「おかしいです、お兄様。どこにも魔法使いの集団は見当たりません。それどころか街の中は平穏そのもの、光魔法の襲撃を受けていたというのは勘違いだったのでしょうか」
エリナは、千里眼の魔法を使いながら監視を続けていた。
「光の爆発までは至らなかったが、アルテマの魔法を見間違えるはずがない」
ワンは眉間にシワを寄せ考え込んだ。
「おそらく他の国の軍による侵攻……だとすれば、一刻も早く国王に知らせに戻らねば」
「そうですね、ハナにはエミリーが付いているようですから大丈夫でしょう」
「ああ、ファザの傀儡となってしまっているが、賢い子だ。今はエミリーに任せよう」
ワンはそう言うと、乗ってきた馬に跨がった。
「ハナ、裸の女、アルテマ……最近調べることが多いですね」
大きく凛々しい騎馬の手綱を握るワンの背中に、幸せそうにしがみつくエリナが言った。
「そうだな、特に裸の女……今はただの噂話だが気になる」
「お兄様、女の裸が気になるのですね……(私がいつでも力になるのに)」
エリナは回した腕に力を込めた。
「ああ、アララガの兵を惨殺し、魔物を産み出す謎の女。野放しにできん」
「そうですね、とっても綺麗な女性らしいですからね、早く殺してしまいましょう」
「同感だ。急ぐぞ、しっかり掴まれ」
ワンは騎馬を蹴りつけ、速度を上げた。
「はい、お兄様」
ワンとエリナがした噂話。
それはハナが花を人に変える魔法を習得した日を境に、アララガの国の周辺で広がっていた。
一糸纏わぬ絶世の美女が森を徘徊している。
その鮮烈な噂話に、色欲に駆られた男達が探索に勇み、そして帰って来なかった。
男達の捜索願いがアララガ国王軍に届き、軍務として数名が駆り出されたが、やはり帰らぬ者となった。
追加で出された捜索隊が発見したのは爆散した兵の遺体だった。
「色欲の魔法使いが、男を殺し、その血肉を食らい、魔物を産み落とす」
その噂話は瞬く間に広がり、生き証人達はこぞって警告する。
「花の匂い、甘い香りがしたら迷わず逃げろ」
やがて、アララガ軍上層部にまで伝わり、今に至る。
「花の匂い……花を人に変える魔法……お兄様、ハナの魔法が関係している可能性は?」
エリナが感を働かせ、兄に尋ねた。
「……あるいは、あのアルテマも……いや、憶測は破滅を招く」
そう自らに言い聞かせたワンだったが、彼岸花の引き起こした殺戮を鑑みても、ハナの魔法が不穏な胸騒ぎの元凶であることは確かだった。
✿
ハナが立ち入ったダンジョン内。
「アルテマッ」
「はいっアルテマ」
「アルテ~マ」
「アルテマ、アルテマっと」
「もー面倒くさいから纏めてアルテマー」
「アルッテマ、アルッテマ、アルッテマ~アルテマあれば余裕でしょ♪」
最後には替え歌交じりで生息する魔物を蹂躙するジェルベーラの姿があった。
無尽蔵の魔力と、光魔法の威力を目の当たりにするハナとエミリーはジェルベーラに導かれるままに、ダンジョン最深部へ到着したのだった。
「おかしいです、お兄様。どこにも魔法使いの集団は見当たりません。それどころか街の中は平穏そのもの、光魔法の襲撃を受けていたというのは勘違いだったのでしょうか」
エリナは、千里眼の魔法を使いながら監視を続けていた。
「光の爆発までは至らなかったが、アルテマの魔法を見間違えるはずがない」
ワンは眉間にシワを寄せ考え込んだ。
「おそらく他の国の軍による侵攻……だとすれば、一刻も早く国王に知らせに戻らねば」
「そうですね、ハナにはエミリーが付いているようですから大丈夫でしょう」
「ああ、ファザの傀儡となってしまっているが、賢い子だ。今はエミリーに任せよう」
ワンはそう言うと、乗ってきた馬に跨がった。
「ハナ、裸の女、アルテマ……最近調べることが多いですね」
大きく凛々しい騎馬の手綱を握るワンの背中に、幸せそうにしがみつくエリナが言った。
「そうだな、特に裸の女……今はただの噂話だが気になる」
「お兄様、女の裸が気になるのですね……(私がいつでも力になるのに)」
エリナは回した腕に力を込めた。
「ああ、アララガの兵を惨殺し、魔物を産み出す謎の女。野放しにできん」
「そうですね、とっても綺麗な女性らしいですからね、早く殺してしまいましょう」
「同感だ。急ぐぞ、しっかり掴まれ」
ワンは騎馬を蹴りつけ、速度を上げた。
「はい、お兄様」
ワンとエリナがした噂話。
それはハナが花を人に変える魔法を習得した日を境に、アララガの国の周辺で広がっていた。
一糸纏わぬ絶世の美女が森を徘徊している。
その鮮烈な噂話に、色欲に駆られた男達が探索に勇み、そして帰って来なかった。
男達の捜索願いがアララガ国王軍に届き、軍務として数名が駆り出されたが、やはり帰らぬ者となった。
追加で出された捜索隊が発見したのは爆散した兵の遺体だった。
「色欲の魔法使いが、男を殺し、その血肉を食らい、魔物を産み落とす」
その噂話は瞬く間に広がり、生き証人達はこぞって警告する。
「花の匂い、甘い香りがしたら迷わず逃げろ」
やがて、アララガ軍上層部にまで伝わり、今に至る。
「花の匂い……花を人に変える魔法……お兄様、ハナの魔法が関係している可能性は?」
エリナが感を働かせ、兄に尋ねた。
「……あるいは、あのアルテマも……いや、憶測は破滅を招く」
そう自らに言い聞かせたワンだったが、彼岸花の引き起こした殺戮を鑑みても、ハナの魔法が不穏な胸騒ぎの元凶であることは確かだった。
✿
ハナが立ち入ったダンジョン内。
「アルテマッ」
「はいっアルテマ」
「アルテ~マ」
「アルテマ、アルテマっと」
「もー面倒くさいから纏めてアルテマー」
「アルッテマ、アルッテマ、アルッテマ~アルテマあれば余裕でしょ♪」
最後には替え歌交じりで生息する魔物を蹂躙するジェルベーラの姿があった。
無尽蔵の魔力と、光魔法の威力を目の当たりにするハナとエミリーはジェルベーラに導かれるままに、ダンジョン最深部へ到着したのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
22
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる