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第一章 シクラメン
絆
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シーラを花に戻し、魔力を回復したハナは再び魔法を使い、庭でシクラメンの花に願った。
院の先生に、少女用の服を借りに行ったが「女の服を一体なにに使う気だい、将来が不安になるよまったく」と怒られて断念したハナの手には着まわし用の自分のシャツとズボン、それと帽子と靴。
ハナはシーラを呼び出すと、その着替え一式を置いて後ろを向いた。
「ごめんねシーラ、女の子の服は借りれなかったよ」
「いいよ別に、アビー先生が怖いの知ってるから」
ハナが先生に怒られながらも必死に相談している姿を、庭から見ていたシーラに責める気はまったくない。
「それに結構気に入ったから」
特にお気に入りなのは帽子だった。
自分が本来、花であること、そして少し内気な性格、それらを顔を隠すだけで不安は和らいだ。
「そっか、とても似合ってるよ」
「……そ、それよりも、魔法よ。ハナの魔法について調べなきゃ」
シーラはハナの素直な反応に、帽子を深く被った。
花であったときは、反応することが出来なかったから聞き流していたが、こうして面と向かってハナに愛でられると気恥ずかしさを隠せない。
それに魔法を知ることは、今後の活動にも影響するかもしれない、誤魔化すにはうってつけの口実であることは確かだった。
「うん。協力してくれてありがとね」
初めての魔法。初めての友達。ハナも心から喜んだ。
「とりあえず1日に使える魔法は3回まで、4回目で気を失ってしまうけど、休めばもう1回使える感じか」
帽子のつばに触れながら探偵のように振る舞うシーラ。
「それと花は摘んじゃうと、すぐに魔法が消えちゃうんだよね」
「うんうん、花が萎れるだけでダメみたいね」
「そうそう、花壇で魔法を使ったら全然長持ちするもんね」
「たぶんだけど、ハナの魔力と、花の生命力。両方とも重要なんじゃないかしら」
「なるほど、でも裸のまま外で呼び出すのはシーラに悪いよね」
「そうね、迷惑だわ。誰かに見られたらどうすんのよ」
「う~ん、そうだね、じゃあ植木鉢に移して僕の部屋で育てよう」
「いいわね、それなら可愛い植木鉢にしてよね、それと私の前で着替えとかしないでね」
「えー着替えダメなの? そうか、ずっとシーラが見てるのか……」
「見たくて見てるんじゃないんですけど」
「なんかそう考えると恥ずかしいな、どこか別の部屋に植木鉢を、個室……トイレとかどうかな」
「おバカなの? もっとダメでしょ」
「あはは、そうだね確かに」
「ハナってちょっと抜けてるよね」
「そうかな、照れるよ」
「褒めてないし」
他愛のない会話が続くハナとシーラ。
シーラにとって初めての会話、ハナにとって初めての友達。
何気ない時間も二人にとっては特別なものだった。
「おい、ハナくそハナたれ無能チビ」
その和やかな時を壊すように背後から投げつけられる言葉。
「ワッチくん……」
ハナから笑顔が消える。
ハナにワッチと呼ばれた男児は孤児院の上級生。
背丈も体格もハナより大きく、年齢も3歳上。
「あいつ、知らない女連れてますよ、生意気っすね」
ワッチの隣に居た男児がハナを指差して言った。
年齢も背丈もハナと同じ。名前はロイ。
「暇だし、遊んでやりましょうよ」
そしてもう一人。名前はベン。
ハナの1つ上、メガネで痩せ型の男児。
「あいつら、いつもハナをイジメてる……」
シーラがその男児たちを睨み付けた。
「い、イジメられてなんかいないよ、遊んでもらっているんだ」
ハナは、顔を強張らせて言った。
「ハナ……」
シーラは、いつも見ていたから知っている。
魔法が使えなくてバカにされ、イジメられても必死に我慢して耐えているハナを。
「魔法も使えない無能のハナくそが、女とじゃなくて俺達と遊ぼうぜ」
ワッチがポケットに手をいれ、ハナの前に唾を飛ばした。
「そうだ、魔法の練習しようぜハナ、またお前は的な、必死に逃げないと火傷するよぉ」
ロイが人差し指を立てると、指先に蝋燭のような火が出現した。
「無能だけど、逃げ足だけは早いからなぁハナは」
ベンが薄ら笑いを浮かべてロイと同じように指先に火を灯す。
「さぁ逃げろ逃げろ」
ワッチがハナの肩を小突くと、その勢いでハナは転んでしまう。
「ハナっ、大丈夫?」
シーラはしゃがみこみ、ハナの手を取り言った「なんでいつも抵抗しないのよ」
「だって、僕は無能だから……」
ハナは自分で立ち上がり、自分の土埃を払った。
「ハナは無能じゃない、だってちゃんと魔法も」
「ハナくそが魔法? そんなわけねぇだろバカ女」
そう言ったワッチを睨み付けるシーラ。
「うるさいバカガキ、ハナはちゃんと魔法が使えるの」
「じゃあ見せてみろよバカ女」
「見せろって、もう見ているでしょう。私が……」
シーラが魔法の説明を試みようとした時、ハナはシーラの手を強く握った。
「ハナ?」
「ダメだよシーラ、魔法のことは言わないで」
「どうしてよ」
「シーラは僕の友達だから、ここで言ったら、きっとダメな気がする」
初めての友達。
ハナは、それが魔法を使ってできたものだと知られたら何かが変わってしまう気がした。
「意味が分からない、本当のことを言ってこいつらの鼻を明かしてやりましょうよ」
「嫌だ。僕が我慢すれば大丈夫だから、だからシーラは待ってて」
「ハナ……分かった。じゃあ私も一緒に戦う」
「え? 戦う?」
「うん、こんなやつら二人でやっつけられるでしょ」
「無理だよ、上級生だよ?」
「大丈夫、イケる気がするの。私、きっと強いよ」
「そうなの?」
ハナは驚き。
シーラは根拠のない自信で拳を構えた。
院の先生に、少女用の服を借りに行ったが「女の服を一体なにに使う気だい、将来が不安になるよまったく」と怒られて断念したハナの手には着まわし用の自分のシャツとズボン、それと帽子と靴。
ハナはシーラを呼び出すと、その着替え一式を置いて後ろを向いた。
「ごめんねシーラ、女の子の服は借りれなかったよ」
「いいよ別に、アビー先生が怖いの知ってるから」
ハナが先生に怒られながらも必死に相談している姿を、庭から見ていたシーラに責める気はまったくない。
「それに結構気に入ったから」
特にお気に入りなのは帽子だった。
自分が本来、花であること、そして少し内気な性格、それらを顔を隠すだけで不安は和らいだ。
「そっか、とても似合ってるよ」
「……そ、それよりも、魔法よ。ハナの魔法について調べなきゃ」
シーラはハナの素直な反応に、帽子を深く被った。
花であったときは、反応することが出来なかったから聞き流していたが、こうして面と向かってハナに愛でられると気恥ずかしさを隠せない。
それに魔法を知ることは、今後の活動にも影響するかもしれない、誤魔化すにはうってつけの口実であることは確かだった。
「うん。協力してくれてありがとね」
初めての魔法。初めての友達。ハナも心から喜んだ。
「とりあえず1日に使える魔法は3回まで、4回目で気を失ってしまうけど、休めばもう1回使える感じか」
帽子のつばに触れながら探偵のように振る舞うシーラ。
「それと花は摘んじゃうと、すぐに魔法が消えちゃうんだよね」
「うんうん、花が萎れるだけでダメみたいね」
「そうそう、花壇で魔法を使ったら全然長持ちするもんね」
「たぶんだけど、ハナの魔力と、花の生命力。両方とも重要なんじゃないかしら」
「なるほど、でも裸のまま外で呼び出すのはシーラに悪いよね」
「そうね、迷惑だわ。誰かに見られたらどうすんのよ」
「う~ん、そうだね、じゃあ植木鉢に移して僕の部屋で育てよう」
「いいわね、それなら可愛い植木鉢にしてよね、それと私の前で着替えとかしないでね」
「えー着替えダメなの? そうか、ずっとシーラが見てるのか……」
「見たくて見てるんじゃないんですけど」
「なんかそう考えると恥ずかしいな、どこか別の部屋に植木鉢を、個室……トイレとかどうかな」
「おバカなの? もっとダメでしょ」
「あはは、そうだね確かに」
「ハナってちょっと抜けてるよね」
「そうかな、照れるよ」
「褒めてないし」
他愛のない会話が続くハナとシーラ。
シーラにとって初めての会話、ハナにとって初めての友達。
何気ない時間も二人にとっては特別なものだった。
「おい、ハナくそハナたれ無能チビ」
その和やかな時を壊すように背後から投げつけられる言葉。
「ワッチくん……」
ハナから笑顔が消える。
ハナにワッチと呼ばれた男児は孤児院の上級生。
背丈も体格もハナより大きく、年齢も3歳上。
「あいつ、知らない女連れてますよ、生意気っすね」
ワッチの隣に居た男児がハナを指差して言った。
年齢も背丈もハナと同じ。名前はロイ。
「暇だし、遊んでやりましょうよ」
そしてもう一人。名前はベン。
ハナの1つ上、メガネで痩せ型の男児。
「あいつら、いつもハナをイジメてる……」
シーラがその男児たちを睨み付けた。
「い、イジメられてなんかいないよ、遊んでもらっているんだ」
ハナは、顔を強張らせて言った。
「ハナ……」
シーラは、いつも見ていたから知っている。
魔法が使えなくてバカにされ、イジメられても必死に我慢して耐えているハナを。
「魔法も使えない無能のハナくそが、女とじゃなくて俺達と遊ぼうぜ」
ワッチがポケットに手をいれ、ハナの前に唾を飛ばした。
「そうだ、魔法の練習しようぜハナ、またお前は的な、必死に逃げないと火傷するよぉ」
ロイが人差し指を立てると、指先に蝋燭のような火が出現した。
「無能だけど、逃げ足だけは早いからなぁハナは」
ベンが薄ら笑いを浮かべてロイと同じように指先に火を灯す。
「さぁ逃げろ逃げろ」
ワッチがハナの肩を小突くと、その勢いでハナは転んでしまう。
「ハナっ、大丈夫?」
シーラはしゃがみこみ、ハナの手を取り言った「なんでいつも抵抗しないのよ」
「だって、僕は無能だから……」
ハナは自分で立ち上がり、自分の土埃を払った。
「ハナは無能じゃない、だってちゃんと魔法も」
「ハナくそが魔法? そんなわけねぇだろバカ女」
そう言ったワッチを睨み付けるシーラ。
「うるさいバカガキ、ハナはちゃんと魔法が使えるの」
「じゃあ見せてみろよバカ女」
「見せろって、もう見ているでしょう。私が……」
シーラが魔法の説明を試みようとした時、ハナはシーラの手を強く握った。
「ハナ?」
「ダメだよシーラ、魔法のことは言わないで」
「どうしてよ」
「シーラは僕の友達だから、ここで言ったら、きっとダメな気がする」
初めての友達。
ハナは、それが魔法を使ってできたものだと知られたら何かが変わってしまう気がした。
「意味が分からない、本当のことを言ってこいつらの鼻を明かしてやりましょうよ」
「嫌だ。僕が我慢すれば大丈夫だから、だからシーラは待ってて」
「ハナ……分かった。じゃあ私も一緒に戦う」
「え? 戦う?」
「うん、こんなやつら二人でやっつけられるでしょ」
「無理だよ、上級生だよ?」
「大丈夫、イケる気がするの。私、きっと強いよ」
「そうなの?」
ハナは驚き。
シーラは根拠のない自信で拳を構えた。
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