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クレサによる混乱
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私の名前は【コミナ・ゼーガ・ラウンド・ダイト】
少々長い名故、“元の世界”では頭文字を取りコゼラダと呼ばれていた。
元の世界。この甘美なる言葉を疑問に思い、また好奇心が湧いた方も多いだろう。
そうだ、何を隠そう、私は他の世界からこの地球に転生してきた……いや、転生させられたとも言うか……とにもかくにも、私はこことは違う世界から地球という星の日本という国の小さな都市のゲームセンターという職場で働いている【手雲(てぐも)弘栄(こうえい)】という名の青年に転生した。
この星の紀年法で2004年6月初旬のことである。
元の世界では容姿端麗、才色兼備、天才大魔法使いのエルフ族で、地球の年齢に換算すれば240歳であった私が、この世界に転生してきた理由は、唯一つ
「ゲームセンター業界を救う事」
なのだろう……きっと……そうに違いない。
というのも、転生の際に、記憶の一部を失ったようで
脳の奥の失われそうな記憶を辿っても辿っても「ゲームセンター業界を救え」と響くだけなのだ。
きっと、この意味不明な転生の理由、目的がそうなのだろう。
だとすれば、ゲームセンター業界を救うことができれば元の世界に戻れる可能性があるということ。ならばやらない理由は無い。
剣も魔法も使えず、討伐すべきモンスターも跋扈しない、まさに無味無臭、こんな虚無の世界とは早めに決別せねばならない。だから私はゲーセンを救う。救わねばならない。
と、息巻いたはいいが、ゲームセンター業界を救うといっても、2004年6月現在、日本国におけるゲームセンターの店舗数は約二万五千店となかなかに多く、新店舗の開店情報も後を絶たない。故に、今後この勢いが衰えるとは考え難い。
また、救うにしても元の世界では名の知れた超絶魔法を習得していたエルフ族の天才のこの私だが、どうやら記憶と一緒に魔力も失ってしまった様で、魔法が一切使えなくなってしまった。
この世界の知識は転生した手雲青年の記憶で補ってはいるが、いかんせん青年は超が付く一般人であり、日本人の超平均的身長体重を持ち、顔立ちも普通、ただなんとなく「ゲーム好きだからゲーセンで働いてみよっかな~」と、なんの取り柄もない二十四歳。
元天才魔法使いだったであろう私は今や見る影もない普通の人間。そんな手雲青年がどうやってゲーセン業界を救うというのだ……。
まぁ、考えても直ぐには答えは出そうにない。とりあえず今できることは、ここ「ゲームセンター セタガトーステーション亜土阿店」の業績を伸ばし業界全体を盛り上げるきっかけを作り出すことだろう。
「弘栄君っ。ぼーっとしてないで、スタホにメダル補充お願い」
黄色い声の主は、早番担当の佐々岡希(ササオカ ノゾミ)ちゃんだ。
ゲーセンは朝9時に開店し、午前1時まで営業している。転生前は長寿なエルフ族だったが、流石に16時間労働は寿命が縮む、だから早番と遅番のシフト制が用いられるのだ。まぁこんなつまらない世界の労働環境などどうでもいい。それよりもなによりも重要視すべきは希ちゃんだろう。彼女の年齢は17歳。女子高生という甘美な響きと明朗快活な性格。長くサラサラな髪は常にポニーテール。エルフ族ほど美人ではないが的確な指示出しと、その声の質は十分魅力的だ。どうやら手雲青年も好意を抱いているらしい。きっとそのせいで私の目にも魅力的に映るのだろう。
ポニーといえば、希ちゃんが私に頼んだメダル補充のスタホというゲーム機はどうやら競走馬育成ゲームで「スーパータイラントホース」の略称だ。
スタホはメダルを使ってレースに賭けたり、自分の馬を育てる人気のゲームで店の売り上げの大半を担っている看板タイトルだ。このゲームの何が人々を惹き付けるのか今の私には理解できないが、この世界で生きていくためのお金を稼いでくれるのだから文句はない。
「弘栄、バイト終わったらパチスロ行こうぜ、ゴッドに設定入ってる店見つけたからよ」
私を呼び捨てにする声の主は、門田巧(カドタ タクミ)。店の先輩で年齢も上、悪い人間ではなさそうだがギャンブル狂い。最近はビリオンゴッド、通称“ゴッド”というパチスロ機にハマっていて、よく誘われる。
パチスロは嫌いではないがゴッドは、1日週十万円稼ぐこともできる名機。しかし、出るということは吸い込む力も尋常じゃないので門田は借金まみれだ。
「弘栄さん、このスロットの設定キーってどれでしたっけ?」
童顔で人懐っこい後輩の遠藤佑斗(エンドウ ユウト)。どうやら私になついているようで、なにかにつけて頼ってくる。まぁ悪い気はしない。
その他にも、2名のアルバイトが居て、私を含めた6人でこの店の早番を担当している。幸いにも皆明るく、接客態度も良好、常連のお客さんからの評判も良く、親しいお客さんにはクレジットサービスなんかもして店は大繁盛といえる状態だ。
だがしかし、次の日、私以外の早番全員クビになっていた。
少々長い名故、“元の世界”では頭文字を取りコゼラダと呼ばれていた。
元の世界。この甘美なる言葉を疑問に思い、また好奇心が湧いた方も多いだろう。
そうだ、何を隠そう、私は他の世界からこの地球に転生してきた……いや、転生させられたとも言うか……とにもかくにも、私はこことは違う世界から地球という星の日本という国の小さな都市のゲームセンターという職場で働いている【手雲(てぐも)弘栄(こうえい)】という名の青年に転生した。
この星の紀年法で2004年6月初旬のことである。
元の世界では容姿端麗、才色兼備、天才大魔法使いのエルフ族で、地球の年齢に換算すれば240歳であった私が、この世界に転生してきた理由は、唯一つ
「ゲームセンター業界を救う事」
なのだろう……きっと……そうに違いない。
というのも、転生の際に、記憶の一部を失ったようで
脳の奥の失われそうな記憶を辿っても辿っても「ゲームセンター業界を救え」と響くだけなのだ。
きっと、この意味不明な転生の理由、目的がそうなのだろう。
だとすれば、ゲームセンター業界を救うことができれば元の世界に戻れる可能性があるということ。ならばやらない理由は無い。
剣も魔法も使えず、討伐すべきモンスターも跋扈しない、まさに無味無臭、こんな虚無の世界とは早めに決別せねばならない。だから私はゲーセンを救う。救わねばならない。
と、息巻いたはいいが、ゲームセンター業界を救うといっても、2004年6月現在、日本国におけるゲームセンターの店舗数は約二万五千店となかなかに多く、新店舗の開店情報も後を絶たない。故に、今後この勢いが衰えるとは考え難い。
また、救うにしても元の世界では名の知れた超絶魔法を習得していたエルフ族の天才のこの私だが、どうやら記憶と一緒に魔力も失ってしまった様で、魔法が一切使えなくなってしまった。
この世界の知識は転生した手雲青年の記憶で補ってはいるが、いかんせん青年は超が付く一般人であり、日本人の超平均的身長体重を持ち、顔立ちも普通、ただなんとなく「ゲーム好きだからゲーセンで働いてみよっかな~」と、なんの取り柄もない二十四歳。
元天才魔法使いだったであろう私は今や見る影もない普通の人間。そんな手雲青年がどうやってゲーセン業界を救うというのだ……。
まぁ、考えても直ぐには答えは出そうにない。とりあえず今できることは、ここ「ゲームセンター セタガトーステーション亜土阿店」の業績を伸ばし業界全体を盛り上げるきっかけを作り出すことだろう。
「弘栄君っ。ぼーっとしてないで、スタホにメダル補充お願い」
黄色い声の主は、早番担当の佐々岡希(ササオカ ノゾミ)ちゃんだ。
ゲーセンは朝9時に開店し、午前1時まで営業している。転生前は長寿なエルフ族だったが、流石に16時間労働は寿命が縮む、だから早番と遅番のシフト制が用いられるのだ。まぁこんなつまらない世界の労働環境などどうでもいい。それよりもなによりも重要視すべきは希ちゃんだろう。彼女の年齢は17歳。女子高生という甘美な響きと明朗快活な性格。長くサラサラな髪は常にポニーテール。エルフ族ほど美人ではないが的確な指示出しと、その声の質は十分魅力的だ。どうやら手雲青年も好意を抱いているらしい。きっとそのせいで私の目にも魅力的に映るのだろう。
ポニーといえば、希ちゃんが私に頼んだメダル補充のスタホというゲーム機はどうやら競走馬育成ゲームで「スーパータイラントホース」の略称だ。
スタホはメダルを使ってレースに賭けたり、自分の馬を育てる人気のゲームで店の売り上げの大半を担っている看板タイトルだ。このゲームの何が人々を惹き付けるのか今の私には理解できないが、この世界で生きていくためのお金を稼いでくれるのだから文句はない。
「弘栄、バイト終わったらパチスロ行こうぜ、ゴッドに設定入ってる店見つけたからよ」
私を呼び捨てにする声の主は、門田巧(カドタ タクミ)。店の先輩で年齢も上、悪い人間ではなさそうだがギャンブル狂い。最近はビリオンゴッド、通称“ゴッド”というパチスロ機にハマっていて、よく誘われる。
パチスロは嫌いではないがゴッドは、1日週十万円稼ぐこともできる名機。しかし、出るということは吸い込む力も尋常じゃないので門田は借金まみれだ。
「弘栄さん、このスロットの設定キーってどれでしたっけ?」
童顔で人懐っこい後輩の遠藤佑斗(エンドウ ユウト)。どうやら私になついているようで、なにかにつけて頼ってくる。まぁ悪い気はしない。
その他にも、2名のアルバイトが居て、私を含めた6人でこの店の早番を担当している。幸いにも皆明るく、接客態度も良好、常連のお客さんからの評判も良く、親しいお客さんにはクレジットサービスなんかもして店は大繁盛といえる状態だ。
だがしかし、次の日、私以外の早番全員クビになっていた。
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