転生したらドラゴンに拾われた

hiro

文字の大きさ
上 下
57 / 115
最果ての森編

55. ハイスペックイケメン

しおりを挟む
 ファム(と僕)によって敷地が一回り広くなった、翌日。
 僕は家の外に出て、改めて庭を眺める。

 目の前に広がる庭は、昨日伐採が行われたとは思えないほどきれいだ。地面に残っていた切り株がいつの間にか取り除かれ、整地されている。

 変化したことと言えば敷地が広くなったことだが、それ以外にもう一つ、大きな変化がある。驚くべきことに、先日みんなでサンドイッチを食べた場所に、いつの間にかオープンテラスができていたのだ。
 これはもしかしなくても、ハイスペックイケメン・ジルの仕業だ。あの日、天気さえ良ければいつでも外で食べたいと思っていたのが伝わっていたのだろうか。あのイケメンは、読心術まで身につけているのか。

 そんな僕の父親は、現在テラスに白い革のようなものを屋根として取り付けている。

「これで直射日光を遮られるな」

 イケメンな気遣いで、屋根まで設置してしまった。

「おお~」

 テラスを完成させたジルに、ぱちぱちと拍手をする。

「天気がいい日は、外で食べるのもいいからな」

 そう言って頭を撫でてくれた。···やっぱり読心術が使えるんじゃないだろうか。

 テラスの近くには、まだ丸太が数本残っている。結構な数の木を切っちゃったからな。

「あう?」

 僕は丸太を指して首を傾げる。

「ああ、これか。とりあえず今は必要ないから、収納しておく」

 ジルがそう言い、家から持って来たバッグにぽんぽんと丸太を入れ始めた。あれもマジックバッグだ。

「以前、テムが作ってくれた。この家を建てる前にな」

 僕がバッグを凝視していると、ジルが教えてくれた。もしかして、ライが持っているのもテムが作ったものなのだろうか。テムは、友達想いで優しいからね。

「ウィルも、自分のバッグに入れておくか?」

 まだ地面に残っている丸太の断面をコンコンと叩いていると、ジルがそう聞いてきた。今のところ使い道は思い付かないけど、持っていたら役に立つことがあるかもしれない。そう思って、こくりと頷く。

「あう」

「そうか、なら何本か入れておくか」

 ジルがオッケーをくれたので、リュックとして背負っていたマジックバッグをおろし、丸太を入れる。
 バッグから離れていたら入らないが、一部でもバッグの中に入っていたら、あとはヒュンッと全体が入る。僕が手を入れてもバッグに入ることはないから、生き物は入れないのかもしれない。
 ちなみに、テムとファムがこのバッグをプレゼントしてくれてから、ごはんのときと寝るとき以外はだいたい背負っている。本当はごはんのときも背負っていたいけど、お行儀が悪いからね。ちゃんと我慢しているんだ。

 丸太を全部片付けて、家に戻る。
 今日はみんなは来ないようだし、読書の日になりそうだ。

 バッグに何冊か入れておいたライの本を取り出し、読み始める。

 しばらく集中して読んでいると、コトッという音が聞こえたので視線を上げる。ジルが水を持って来てくれていた。フルーツを漬け込んだ、美味しい水だ。前世では作ろうとさえ思わなかったオシャレな水を、ここではたらふく飲むことができる。ジルのイケメンパワーに改めて感謝だ。

「あいあと!」

「ああ」

 コクコクと飲んでぷはーっと息を吐いていると、ジルが頭を撫でてくれた。なんだか僕、ものすごく甘やかされてるよね。これを当たり前だと思うことがないように、感謝の気持ちを忘れないようにしよう。

「···明日、出発することになった」

 感謝は大事だよねと思っていると、ジルがそう言う。···え?出発?どこに?ジルが?···僕も?
 急な話題に、次々と疑問が浮かぶ。

「ソルツァンテだ。話したらテムとファムも行きたがっていたから、テムに転移を頼むことにした。ライも一緒だ」

 あ、リーナさんにお礼をする話か!行きたいけど、もう少し先の話かと思っていた。森を出て大陸を横断する旅になるから、体力も実力も、それから物資の準備も必要だなと考えていたのだ。でも、テムが転移で送ってくれるなら、時間をかけて準備することもないのかもしれない。

「明日の朝、皆ここに集まって出発する。何日かかけてソルツァンテに行くことになる。準備は···服を数着バッグに入れておけばいいだろう」

 具体的な話に、本当に行くんだなとわくわく感が高まる。それに、みんなで一緒に行けるのも嬉しい。楽しい旅行になりそうだ。

 
 わくわくしすぎてなかなか寝付けなくなるのを見越して、今日は早めにベッドに入る。
 すでに準備はばっちりだ。先ほどバッグに服を入れておいたのだ。

 ···ああ、どうしよう。わくわくするあまり、眠気が来ない。目をぎらぎらさせながら羊を数えていると、ジルが部屋に入って来た。

「眠れないのか?」

 僕の顔を見て、ジルがそう訊ねる。

「あう」

 頷いて肯定すると、優しく頭を撫でてくれる。もしかして、今までもこうやって様子を見に来てくれていたのだろうか。

「楽しみだろうが、ちゃんと眠っておいた方がいい」

 ジルがゆっくり優しく頭を撫でてくれて、さっきまで目が冴えていたはずのに、まぶたが重くなる。ジルの手には、安眠の効果もあるようだ。
 
「おあしゅみ」

 ジルも、ちゃんと寝るんだよ。明日は楽しい旅行なんだからね。そう思いながら、おやすみを言う。

「ああ、俺もしっかり寝ておく。···おやすみ」

 遠くなっていく意識の中で聞こえたジルの声に、やっぱり読心術が使えるのだと確信し、僕は眠りに落ちた。
しおりを挟む
感想 380

あなたにおすすめの小説

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

チートな親から生まれたのは「規格外」でした

真那月 凜
ファンタジー
転生者でチートな母と、王族として生まれた過去を神によって抹消された父を持つシア。幼い頃よりこの世界では聞かない力を操り、わずか数年とはいえ前世の記憶にも助けられながら、周りのいう「規格外」の道を突き進む。そんなシアが双子の弟妹ルークとシャノンと共に冒険の旅に出て… これは【ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました】の主人公の子供達が少し大きくなってからのお話ですが、前作を読んでいなくても楽しめる作品にしているつもりです… +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-  2024/7/26 95.静かな場所へ、97.寿命 を少し修正してます  時々さかのぼって部分修正することがあります  誤字脱字の報告大歓迎です(かなり多いかと…)  感想としての掲載が不要の場合はその旨記載いただけると助かります

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

処理中です...