56 / 115
最果ての森編
54. 風属性魔法
しおりを挟む
ファムがウィンドカッターで木を切り倒しているのを見て、あることに気づいた。無秩序に切り開いているのではなくて、敷地がきれいに一回り広がるように、木を選んで切っている。僕が勢い余って切り倒した三本の木から広がるように。ファムの行動は気まぐれのようで、実はちゃんと考えてくれているのかなと思った。
もしかして、前にここの木を切り倒したのにも、何か理由があったのだろうか。
「ブハハ!今日はオレ、隠れてないから怖くないぜ!」
テムがそんなことを言って笑っている。どういうことだろうと思っていると、ライが説明してくれた。
「ふふ、前にテムとファムがここでかくれんぼを始めてね、隠れたテムをファムがなかなか見つけられなくて、木を切っちゃったんだよ。『木がなかったら、隠れる場所は少なくなるよねー!』って。ふふふ、ものすごい力技だよね」
···理由は、かくれんぼに勝利するためだった。
「あれはスリル満点のかくれんぼだったな!オレもスパッとやられるんじゃないかとヒヤヒヤしたぜ!」
怖かったと言うわりにはニカッと笑顔を見せるテム。さぞかしスリルを楽しんだのだろう。
かくれんぼにしても鬼ごっこにしても、この世界の遊びのなんとデンジャラスなことか。い、いや、きっと、これほど危険なのはこの二人だからだろう。二人の遊びは、普通の人にとっては命の覚悟をしなくてはならないほどのものなのだ。そうでなきゃ、困る。誘われたら、僕は腹を括る必要がありそうだ。
ファムがあまりにも楽しそうにウィンドカッターを放っているので、僕も何度かやってみた。これは魔法の練習だからね。結果として木が倒れちゃうかもしれないけど、魔法の練習だから、仕方がないんだ。
この後、ファム(と僕)が切り倒した木を一か所に積み上げた。
結構いい感じにスパッと出来るようになったな、と手応えを感じていると、「ふふ、木ってね、結構重いんだよ。テムが重力魔法でサポートしてくれて本当に助かったよ」とライがにこやかな笑顔で言っていた。ジルは僕に葉っぱが降り注ぐのを防いでくれていたので、ライを手伝ってはいなかったようだ。
それから、風属性の魔法を数種類教えてもらった。
直径一メートルはある大きな空気の塊を放つ魔法を習ったときは、「ふふ、これを砂が多い場所でやると、いい嫌がらせになるんだよ」とライがいい笑顔で言っていた。砂ではなくて、別の物を巻き込んだら、より凶悪な魔法になるかもしれないと思った。そうだ、いつか試したい魔法のリストを作っておこう。
自分の前で風をグルグルと巻き起こす魔法もあった。これは防御力はあまりないが、目くらましになるらしい。この魔法を巨大にしたのが、トルネードだ。これに巻き込まれたらよほど防御力が高くない限りボロボロになるのだと、ライが目を輝かせて言っていた。
自分の得意属性であるからか、いつもより饒舌に説明をしてくれるライ。その知識はやはり豊富で、これまでの経験に裏打ちされた確かな解説は、非常に勉強になる。
「中級魔法や上級魔法になると、さらに威力やバリエーションが増すからね。特に雷の魔法は強力だよ。ふふ、早くウィル君に教えたいなあ」
教えることをこんなに楽しみにしてくれる師匠は他にいるだろうか。そんなライに、僕も応えたい。これからも頑張って練習していこうと思う。
あ、僕の前世の知識は、ライへのお礼になるだろうか。今までも魔法の改良に使ってきたから、今後もこの世界の魔法と前世の知識を融合することは可能なはずだ。知識さえあれば、それこそ僕が考えもしないような使い方を思い付くかもしれない。
よし、知識を思い出せる限り思い出して、伝えよう。書き留めたいから、紙とペンが必要だ。それから、絵では伝えるのに限界があるので字も覚えなくては。
ライに、紙を持ってペンで書くジェスチャーをすると、「ああ、紙とペンかな?」とすぐに分かってくれた。···字、覚えなくてもいいのかな?と一瞬思ったが、きっといつか必要になるからね。怠けず頑張ることにしよう。
今日は、粉塵爆発の知識を伝えることにした。空気の塊に小麦粉などを含ませて火を着けると大爆発、という知識に最初はみんな首を傾げていた。
そういえば粉の密度が重要なんだっけと思い出す。密度が低いと爆発しないよと説明したら、ライとファムが「なるほどー!」と言っていた。···これだけの説明で、原理が分かったの?君達、凄すぎない?とどこか納得のいかない気分になったが、「んん?うんん?」と唸っているテムを見て、小さい点々をたくさん描いた疲れさえも癒やされた。
「そういえば、工場や工房で大きな爆発が起きる事故がたまにあるんだ。今まで原因が分かっていなかったけど、もしかしたらこれかもしれないね」
そんなことをライが言っていた。この世界でも、似たようなことは起こっているのか。僕の知識が、これから起こりうる事故の防止につながると嬉しいな。
この日伝えられた知識はこれ一つだが、今後も思い出したらすぐにメモするようにしようと思っている。
名前:ウィル
種族:人族
年齢:1
レベル:34
スキル:成長力促進、言語理解、魔力操作、魔力感知
魔法:土属性魔法(初級)
風属性魔法(初級)
光属性魔法(初級)
水弾、火弾、闇弾、火壁、水壁、闇盾
耐性:熱耐性
加護:リインの加護
称号:異世界からの転生者、黒龍帝の愛息子、雷帝の愛弟子
もしかして、前にここの木を切り倒したのにも、何か理由があったのだろうか。
「ブハハ!今日はオレ、隠れてないから怖くないぜ!」
テムがそんなことを言って笑っている。どういうことだろうと思っていると、ライが説明してくれた。
「ふふ、前にテムとファムがここでかくれんぼを始めてね、隠れたテムをファムがなかなか見つけられなくて、木を切っちゃったんだよ。『木がなかったら、隠れる場所は少なくなるよねー!』って。ふふふ、ものすごい力技だよね」
···理由は、かくれんぼに勝利するためだった。
「あれはスリル満点のかくれんぼだったな!オレもスパッとやられるんじゃないかとヒヤヒヤしたぜ!」
怖かったと言うわりにはニカッと笑顔を見せるテム。さぞかしスリルを楽しんだのだろう。
かくれんぼにしても鬼ごっこにしても、この世界の遊びのなんとデンジャラスなことか。い、いや、きっと、これほど危険なのはこの二人だからだろう。二人の遊びは、普通の人にとっては命の覚悟をしなくてはならないほどのものなのだ。そうでなきゃ、困る。誘われたら、僕は腹を括る必要がありそうだ。
ファムがあまりにも楽しそうにウィンドカッターを放っているので、僕も何度かやってみた。これは魔法の練習だからね。結果として木が倒れちゃうかもしれないけど、魔法の練習だから、仕方がないんだ。
この後、ファム(と僕)が切り倒した木を一か所に積み上げた。
結構いい感じにスパッと出来るようになったな、と手応えを感じていると、「ふふ、木ってね、結構重いんだよ。テムが重力魔法でサポートしてくれて本当に助かったよ」とライがにこやかな笑顔で言っていた。ジルは僕に葉っぱが降り注ぐのを防いでくれていたので、ライを手伝ってはいなかったようだ。
それから、風属性の魔法を数種類教えてもらった。
直径一メートルはある大きな空気の塊を放つ魔法を習ったときは、「ふふ、これを砂が多い場所でやると、いい嫌がらせになるんだよ」とライがいい笑顔で言っていた。砂ではなくて、別の物を巻き込んだら、より凶悪な魔法になるかもしれないと思った。そうだ、いつか試したい魔法のリストを作っておこう。
自分の前で風をグルグルと巻き起こす魔法もあった。これは防御力はあまりないが、目くらましになるらしい。この魔法を巨大にしたのが、トルネードだ。これに巻き込まれたらよほど防御力が高くない限りボロボロになるのだと、ライが目を輝かせて言っていた。
自分の得意属性であるからか、いつもより饒舌に説明をしてくれるライ。その知識はやはり豊富で、これまでの経験に裏打ちされた確かな解説は、非常に勉強になる。
「中級魔法や上級魔法になると、さらに威力やバリエーションが増すからね。特に雷の魔法は強力だよ。ふふ、早くウィル君に教えたいなあ」
教えることをこんなに楽しみにしてくれる師匠は他にいるだろうか。そんなライに、僕も応えたい。これからも頑張って練習していこうと思う。
あ、僕の前世の知識は、ライへのお礼になるだろうか。今までも魔法の改良に使ってきたから、今後もこの世界の魔法と前世の知識を融合することは可能なはずだ。知識さえあれば、それこそ僕が考えもしないような使い方を思い付くかもしれない。
よし、知識を思い出せる限り思い出して、伝えよう。書き留めたいから、紙とペンが必要だ。それから、絵では伝えるのに限界があるので字も覚えなくては。
ライに、紙を持ってペンで書くジェスチャーをすると、「ああ、紙とペンかな?」とすぐに分かってくれた。···字、覚えなくてもいいのかな?と一瞬思ったが、きっといつか必要になるからね。怠けず頑張ることにしよう。
今日は、粉塵爆発の知識を伝えることにした。空気の塊に小麦粉などを含ませて火を着けると大爆発、という知識に最初はみんな首を傾げていた。
そういえば粉の密度が重要なんだっけと思い出す。密度が低いと爆発しないよと説明したら、ライとファムが「なるほどー!」と言っていた。···これだけの説明で、原理が分かったの?君達、凄すぎない?とどこか納得のいかない気分になったが、「んん?うんん?」と唸っているテムを見て、小さい点々をたくさん描いた疲れさえも癒やされた。
「そういえば、工場や工房で大きな爆発が起きる事故がたまにあるんだ。今まで原因が分かっていなかったけど、もしかしたらこれかもしれないね」
そんなことをライが言っていた。この世界でも、似たようなことは起こっているのか。僕の知識が、これから起こりうる事故の防止につながると嬉しいな。
この日伝えられた知識はこれ一つだが、今後も思い出したらすぐにメモするようにしようと思っている。
名前:ウィル
種族:人族
年齢:1
レベル:34
スキル:成長力促進、言語理解、魔力操作、魔力感知
魔法:土属性魔法(初級)
風属性魔法(初級)
光属性魔法(初級)
水弾、火弾、闇弾、火壁、水壁、闇盾
耐性:熱耐性
加護:リインの加護
称号:異世界からの転生者、黒龍帝の愛息子、雷帝の愛弟子
50
お気に入りに追加
5,836
あなたにおすすめの小説
令和日本では五十代、異世界では十代、この二つの人生を生きていきます。
越路遼介
ファンタジー
篠永俊樹、五十四歳は三十年以上務めた消防士を早期退職し、日本一周の旅に出た。失敗の人生を振り返っていた彼は東尋坊で不思議な老爺と出会い、歳の離れた友人となる。老爺はその後に他界するも、俊樹に手紙を残してあった。老爺は言った。『儂はセイラシアという世界で魔王で、勇者に討たれたあと魔王の記憶を持ったまま日本に転生した』と。信じがたい思いを秘めつつ俊樹は手紙にあった通り、老爺の自宅物置の扉に合言葉と同時に開けると、そこには見たこともない大草原が広がっていた。
死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)
オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!
IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。
無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。
一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。
甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。
しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--
これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話
複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています
異世界無知な私が転生~目指すはスローライフ~
丹葉 菟ニ
ファンタジー
倉山美穂 39歳10ヶ月
働けるうちにあったか猫をタップリ着込んで、働いて稼いで老後は ゆっくりスローライフだと夢見るおばさん。
いつもと変わらない日常、隣のブリっ子後輩を適当にあしらいながらも仕事しろと注意してたら突然地震!
悲鳴と逃げ惑う人達の中で咄嗟に 机の下で丸くなる。
対処としては間違って無かった筈なのにぜか飛ばされる感覚に襲われたら静かになってた。
・・・顔は綺麗だけど。なんかやだ、面倒臭い奴 出てきた。
もう少しマシな奴いませんかね?
あっ、出てきた。
男前ですね・・・落ち着いてください。
あっ、やっぱり神様なのね。
転生に当たって便利能力くれるならそれでお願いします。
ノベラを知らないおばさんが 異世界に行くお話です。
不定期更新
誤字脱字
理解不能
読みにくい 等あるかと思いますが、お付き合いして下さる方大歓迎です。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます
銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。
死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。
そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。
そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。
※10万文字が超えそうなので、長編にしました。
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる