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最果ての森編

34. 反省

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「やあ、みんな。おかえり」

 ライが爽やかに声をかけてきた。いや、爽やかというより、···涼しい。いや、冷たい?···さ、寒い?

「あ、ライだー!ただいまー!」

「よお!こないだぶりだな!」

 そんなライを気にすることなく挨拶する二人。

「ライ、来たのか。昨日の件で、また世話になった」

 み、みんな、寒さには強いのかな?
 昨日の件って、もしかしなくても覗きの件ですよね。いつの間に連絡したのだろうか。

「ふふふ、そんなことはどうでもいいんだ。私もちょうど会う用事があったからね」

 そんなこと···どうでもいい···のか。会う用事って、王様に会う用事のことだよね。ライって、王様と会えるくらい凄い人なのか。

「···?何か、問題でもあったか?」

「ふふ、問題ね。そうだね、うん、あるかもしれないね。···あそこに置いてあるの、オーガだよね?」

 ライが、庭の隅の方に無造作に放置されているオーガを指差す。

「ああ」

「あれね、ウィルくんが倒したんだよー!」

「そうだぜ!ビュンッて!めちゃくちゃ速かったんだぜ!」

「ふふふ、テムがオーガをこっちまで連れて来ちゃったのかな?そしてファムがウィル君にアースショットを見せてとお願いしていたところで、それが偶然にもオーガに当たったってところだよね?」

 す、すごい。全部当たってる。この状況でそこまで分かるのか。

「ライすごーい!大正解だよー!」

「ふふふ、それで、みんなで増えすぎたゴブリンを減らしに行ったのかな?」

「おう!すげー楽しかったぜ!」

「ふふふ、そう。みんなで、行ったんだね。つまり、ウィル君も、連れて行ったんだね」

「···ああ」

 雲行きが怪しくなってきたぞ。

「あのね、ジル。ゴブリンなんてテムとファムに頼めばいい訳で、君が一緒に行くことはなかったんじゃない?」

 ···はっ!そうじゃないか!後片付けだって、テムとファムだけでも出来ないことはないんだ。

「···そうだな」

「ジル、ウィル君は異世界から来たばかりで、こちらの世界のことはまだほとんど知らないんだよ。魔法が無かった世界なんだから、魔物もいなかった可能性が高い。そんな世界にいたウィル君を、急にゴブリン討伐に参加させるのは酷なんじゃないかい?」

 そ、そうだよ!僕のチキンハートが震えてたんだからね!

「既にマンティコアとオーガを倒しているとはいえ、偶然なんだから。魔法を放った先に、たまたま運の悪い魔物がいただけで、倒そうとしてたんじゃないんだよ?予想外だったんだよ?」

 そ、その通りだけど、そんなに偶然を強調しちゃう?

「私としては、ウィル君にはこの世界のこと、特に前の世界にはなかったものをよく知ってもらって、少しずつ慣れてもらいたかったんだけどね」

 ライが手を額に当て、はあ、とため息をつく。

「なんだか荒療治みたいになっちゃったね。ウィル君、怖くなかったかい?」

 背景が吹雪いてそうな雰囲気は消え、純粋に心配そうにライが聞いてきた。···まあ、正直、怖くなかったと言えば嘘になるけど。僕は狩りに参加せずに済んだし、ジルが少し離れた場所で止まってくれたから、大丈夫だ。

「あう」

 大丈夫、とライの目を見て伝える。

「···そう。ウィル君は強いね」

 ライが目を細めて、僕の頭を撫でる。僕は強くないけどね。ジルが一緒にいるなら、大丈夫なんだ。

「テムとファムも、二人で遊ぶのは構わないけど、ウィル君と一緒のときはもうちょっと気をつけてね」

「分かったぜー。悪かったな、ウィル」

「ウィルくん、ごめんねー?」

 シュンとしている二人。テムはともかく、ファムは、楽しいならオッケー!みたいな感じだと思っていたから、ちょっとびっくりだ。ライのお説教はそれだけ珍しいのかもしれない。僕も、悪気はないのは分かってたんだ。そんなに謝られると逆に申し訳ない。
 
「···すまない、ウィル」

 も、申し訳ない!そんなに落ち込まないで!僕は大丈夫だから!

「あうあう!」

 これ以上謝られると、本当に申し訳なくなってしまう。テムとファムにはいつも元気でいてほしいと思っているし、ジルはいつも僕の気持ちを尊重してくれるから、感謝しているんだ。そんな気持ちを込めて笑いかける。

「ふふ、ウィル君、ほんとにいい子だね」

 ライはそう言うが、みんながいてくれるから、僕はこの世界でも安心して笑えるんだ。

「ウィル、慣れたらでいいから遊ぼーぜ!」

「そうだよー!楽しみにしてるからねー!」

 二人がまた遊びに誘ってくれるのが嬉しい。遊びの内容については応相談だが。

「···俺も、はしゃぎ過ぎていたようだ。ゆっくり慣れていってくれ」

 ジル、はしゃいでたのか。···僕の父親が可愛い。

 ちょっと和んでいると、どこからかぐうーっという音が聞こえてきた。え、今回は僕じゃないよ?

「オ、オレじゃないぜ!」

 テムが赤い顔でお腹を押さえている。あ、君なんだね。みんな生暖かい目でテムを見る。

「ふふ、それじゃあお説教はここまでだね。玄関先で話し込んじゃってごめんね。ジル、私もお邪魔していいかい?」

「ああ、昼食にしようと話していたんだ。ライも良かったら食べてくれ」

「わあ、嬉しいな。ありがとう!」

「お昼ごはーん!楽しみー!」

「うおー!腹減ったぜー!」

 みんな昼食と聞いて、一気にテンションが上がっている。僕も楽しみだ。

「準備するから、少し待っててくれ」

 家に入って、ジルはキッチンへ。残りのメンバーは、いつものようにテーブルを囲んでスタンバイだ。

「ウィル君、またレベルが上がったんじゃない?今回は大丈夫だった?」

 わくわくしながらジルを待っていると、ライが少し心配の色を滲ませながら聞いてきた。

「あうあう」

 今回は、頭がぼーっとするようなこともなかったし、大丈夫だ。

「ふふ、それなら良かった。ウィル君、ステータスを見せてもらうね。あ、もうレベル34かあ。···なっ!···え!?」

 僕のステータスを見ていたライが、突然変な声を上げて固まった。
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