29 / 115
最果ての森編
27. 耐性
しおりを挟む
「ウィル君、鼻を押さえて、どうしたんだい?」
くっ、イケメンにはイケメンの攻撃は効かないのか···!僕が大ダメージを受けているそばで、ライが不思議そうに聞いてくる。
「どうかしたのか?···魔力に乱れはないようだが」
あなたがイケメン過ぎて流血しそうになったんです。
「あ、あう~」
説明できたとしても理解してもらえる気がしないので、とりあえず笑顔で誤魔化す。
「何ともないならいいんだけどね。ちょっといきなり詰め込み過ぎちゃったかな?」
ライがシュンとした顔で心配している。
こ、心が痛い···!イケメンにシュンとされると、こんなに心臓が軋むのか。思わず胸を押さえそうになったが、また心配されそうなので鋼の意志で我慢する。
「今日はもう寝るか?」
ジルも心配そうに聞いてくる。
あああ、申し訳ない!僕にイケメン耐性がないばかりに!もうすぐ、もうすぐステータスに追加されると思うんだ!
「あーう」
まだ大丈夫、と首を横に振る。
「そうか?だが、今日の勉強はもう終わりにしよう」
「そうだね、ウィル君には時間があるんだし、急ぐことはないよ」
優しい大人達だ。僕の内心を知らないため、純粋に心配してくれている。これはもう、本当に申し訳ない。
「それじゃあ、私はそろそろお暇しようかな。ジル、夕食ありがとうね」
「ああ、あれくらいしか出来ないが、また食べに来てくれ」
「ふふ、ありがとう。ジルの料理はすごく美味しいよ。それじゃあ、ウィル君、また教えに来るね。あ、そうだ!本は置いていくね!」
そう言ってライがバッグから本と、それから服を出す。どんどん出す。え、そんなに入ってたの?すでにバッグの大きさ以上の量の荷物が出ている。もしかして、これも魔道具というやつなのだろうか。
「お前···」
ジルが若干呆れている。
僕はテーブルにできた本と服の小山を呆然と見上げる。
「ふふ、楽しくていっぱい持ってきちゃった。ウィル君、本は気が向いたら読んでみて。それから、服も着てくれると嬉しいな!それじゃあ二人とも、おやすみ!」
そう言って、ライが爽やかな笑顔で家を出る。···あれで、徹夜明けなんだよな。僕は手を振って眩しいイケメンを見送った。
さっきまで一緒にいた人がいなくなると、何とも言えない寂しさを感じる。まだ短い間だけど、僕はジルやライ達と一緒にいるのが自然なことだと感じているのかな、と思った。ジル達も、そう感じてくれたらいいな。
ライが買って来てくれた服を見る。外出するときに着ると良さそうな服もあるし、それにパジャマだろうか、生地が柔らかくて寝るときに着ると良さそうな服もある。柄や色合いはどれもシンプルで落ち着いたものばかりだ。ライは無難なものになったと言っていたけど、僕の精神が十代だと見抜いたのはライだ。あまり可愛すぎるのはやめておいてくれたのかもしれない。
「ウィル、まだ眠くないようだが、部屋には戻っておこう」
ジルにそう言われたので、小山の中からパジャマの上下セットを掴む。
「あう」
「これ着て寝るか?」
「あうあう」
「そうか」
ジルが僕の頭を優しく撫で、パジャマを掴んだ僕を抱えて部屋に連れて行ってくれた。
部屋で早速お着替えだ。今着ているのは、前開きのスナップボタンタイプなので、ぱちぱちっと自分でボタンを外す。パジャマは頭からすぽっと着るタイプで自分だけでは難しいので、ジルに手伝ってもらう。
「あう~」
両手を上げて、ジルがすぽっとしてくれるのを待つ。
「その前に、これも着替えるか」
ジルが手にしているのは、白い柔らかそうな生地の服。あ、これは肌着かな?肌着も着替えがあるなら、着替えさせていただこう。
なんだか、ぷくぷくの赤ちゃんボディが恥ずかしい。あ、でも今日お腹にりんごを光らせて見せたんだっけ。···ふっ、もうバレているのなら仕方ない。こうなったら、この流線美を見せてやろう。
僕はカッコよく流し目をキメながら肌着を着替えさせてもらった。
そして、パジャマも上下着せてもらう。新しい服を着ると、うきうきしてくるのはなんでだろうか。
肌着もパジャマも、肌触りが良くて気持ちいい。きっとライは良い物を買ってくれたのだろう。ありがたいな。いつか、恩返しをしたい。
「さっき少し眠そうな顔だったが···もう寝るか?」
え、僕そんな顔してたっけ?
あっ···。あの、あれは、流し目なんです···。
どうやらカッコよく半目がキマっていたようで、眠そうだと思われたらしい。むう。これも練習しなくては。
眠くないと思っていたが、パジャマを着るとなんだか寝るスイッチが入る感じがする。
「あうあう」
今日はもう寝ようかな。
ベッドに入ると、ジルがふんわり毛布を掛けてくれた。
「おやすみ」
「あう、おあしゅみ」
「!」
ジルが、おやすみと言えてドヤ顔をしている僕の頭を撫でて部屋を出る。
さて、寝る前にチェックをしなきゃ。消えろと念じて消えたから、出すのも念じるだけでいいのかもしれない。そう考えて、『ステータス』と念じる。
するとブォンッとステータス画面が現れた。よし、予想通りだ。
名前:ウィル
種族:人族
年齢:1
レベル:27
スキル:成長力促進、言語理解、魔力操作、魔力感知
魔法:土弾、灯
耐性:
加護:リインの加護
称号:異世界からの転生者、黒龍帝の愛息子、雷帝の愛弟子
···どうやらまだ耐性はついていないようだ。
僕がダメージを受ける日々は、もう少し続きそうだ。
ところで、称号が増えているのだが···雷帝って、誰だ?
くっ、イケメンにはイケメンの攻撃は効かないのか···!僕が大ダメージを受けているそばで、ライが不思議そうに聞いてくる。
「どうかしたのか?···魔力に乱れはないようだが」
あなたがイケメン過ぎて流血しそうになったんです。
「あ、あう~」
説明できたとしても理解してもらえる気がしないので、とりあえず笑顔で誤魔化す。
「何ともないならいいんだけどね。ちょっといきなり詰め込み過ぎちゃったかな?」
ライがシュンとした顔で心配している。
こ、心が痛い···!イケメンにシュンとされると、こんなに心臓が軋むのか。思わず胸を押さえそうになったが、また心配されそうなので鋼の意志で我慢する。
「今日はもう寝るか?」
ジルも心配そうに聞いてくる。
あああ、申し訳ない!僕にイケメン耐性がないばかりに!もうすぐ、もうすぐステータスに追加されると思うんだ!
「あーう」
まだ大丈夫、と首を横に振る。
「そうか?だが、今日の勉強はもう終わりにしよう」
「そうだね、ウィル君には時間があるんだし、急ぐことはないよ」
優しい大人達だ。僕の内心を知らないため、純粋に心配してくれている。これはもう、本当に申し訳ない。
「それじゃあ、私はそろそろお暇しようかな。ジル、夕食ありがとうね」
「ああ、あれくらいしか出来ないが、また食べに来てくれ」
「ふふ、ありがとう。ジルの料理はすごく美味しいよ。それじゃあ、ウィル君、また教えに来るね。あ、そうだ!本は置いていくね!」
そう言ってライがバッグから本と、それから服を出す。どんどん出す。え、そんなに入ってたの?すでにバッグの大きさ以上の量の荷物が出ている。もしかして、これも魔道具というやつなのだろうか。
「お前···」
ジルが若干呆れている。
僕はテーブルにできた本と服の小山を呆然と見上げる。
「ふふ、楽しくていっぱい持ってきちゃった。ウィル君、本は気が向いたら読んでみて。それから、服も着てくれると嬉しいな!それじゃあ二人とも、おやすみ!」
そう言って、ライが爽やかな笑顔で家を出る。···あれで、徹夜明けなんだよな。僕は手を振って眩しいイケメンを見送った。
さっきまで一緒にいた人がいなくなると、何とも言えない寂しさを感じる。まだ短い間だけど、僕はジルやライ達と一緒にいるのが自然なことだと感じているのかな、と思った。ジル達も、そう感じてくれたらいいな。
ライが買って来てくれた服を見る。外出するときに着ると良さそうな服もあるし、それにパジャマだろうか、生地が柔らかくて寝るときに着ると良さそうな服もある。柄や色合いはどれもシンプルで落ち着いたものばかりだ。ライは無難なものになったと言っていたけど、僕の精神が十代だと見抜いたのはライだ。あまり可愛すぎるのはやめておいてくれたのかもしれない。
「ウィル、まだ眠くないようだが、部屋には戻っておこう」
ジルにそう言われたので、小山の中からパジャマの上下セットを掴む。
「あう」
「これ着て寝るか?」
「あうあう」
「そうか」
ジルが僕の頭を優しく撫で、パジャマを掴んだ僕を抱えて部屋に連れて行ってくれた。
部屋で早速お着替えだ。今着ているのは、前開きのスナップボタンタイプなので、ぱちぱちっと自分でボタンを外す。パジャマは頭からすぽっと着るタイプで自分だけでは難しいので、ジルに手伝ってもらう。
「あう~」
両手を上げて、ジルがすぽっとしてくれるのを待つ。
「その前に、これも着替えるか」
ジルが手にしているのは、白い柔らかそうな生地の服。あ、これは肌着かな?肌着も着替えがあるなら、着替えさせていただこう。
なんだか、ぷくぷくの赤ちゃんボディが恥ずかしい。あ、でも今日お腹にりんごを光らせて見せたんだっけ。···ふっ、もうバレているのなら仕方ない。こうなったら、この流線美を見せてやろう。
僕はカッコよく流し目をキメながら肌着を着替えさせてもらった。
そして、パジャマも上下着せてもらう。新しい服を着ると、うきうきしてくるのはなんでだろうか。
肌着もパジャマも、肌触りが良くて気持ちいい。きっとライは良い物を買ってくれたのだろう。ありがたいな。いつか、恩返しをしたい。
「さっき少し眠そうな顔だったが···もう寝るか?」
え、僕そんな顔してたっけ?
あっ···。あの、あれは、流し目なんです···。
どうやらカッコよく半目がキマっていたようで、眠そうだと思われたらしい。むう。これも練習しなくては。
眠くないと思っていたが、パジャマを着るとなんだか寝るスイッチが入る感じがする。
「あうあう」
今日はもう寝ようかな。
ベッドに入ると、ジルがふんわり毛布を掛けてくれた。
「おやすみ」
「あう、おあしゅみ」
「!」
ジルが、おやすみと言えてドヤ顔をしている僕の頭を撫でて部屋を出る。
さて、寝る前にチェックをしなきゃ。消えろと念じて消えたから、出すのも念じるだけでいいのかもしれない。そう考えて、『ステータス』と念じる。
するとブォンッとステータス画面が現れた。よし、予想通りだ。
名前:ウィル
種族:人族
年齢:1
レベル:27
スキル:成長力促進、言語理解、魔力操作、魔力感知
魔法:土弾、灯
耐性:
加護:リインの加護
称号:異世界からの転生者、黒龍帝の愛息子、雷帝の愛弟子
···どうやらまだ耐性はついていないようだ。
僕がダメージを受ける日々は、もう少し続きそうだ。
ところで、称号が増えているのだが···雷帝って、誰だ?
64
お気に入りに追加
5,857
あなたにおすすめの小説
称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい
兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。
神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
スキル【レベル転生】でダンジョン無双
世界るい
ファンタジー
六年前、突如、異世界から魔王が来訪した。「暇だから我を愉しませろ」そう言って、地球上のありとあらゆる場所にダンジョンを作り、モンスターを放った。
そんな世界で十八歳となった獅堂辰巳は、ダンジョンに潜る者、ダンジョンモーラーとしての第一歩を踏み出し、ステータスを獲得する。だが、ステータスは最低値だし、パーティーを組むと経験値を獲得できない。スキルは【レベル転生】という特殊スキルが一つあるだけで、それもレベル100にならないと使えないときた。
そんな絶望的な状況下で、最弱のソロモーラーとしてダンジョンに挑み、天才的な戦闘センスを磨き続けるも、攻略は遅々として進まない。それでも諦めずチュートリアルダンジョンを攻略していたある日、一人の女性と出逢う。その運命的な出逢いによって辰巳のモーラー人生は一変していくのだが……それは本編で。
小説家になろう、カクヨムにて同時掲載
カクヨム ジャンル別ランキング【日間2位】【週間2位】
なろう ジャンル別ランキング【日間6位】【週間7位】
伯爵家の三男は冒険者を目指す!
おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました!
佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。
彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった...
(...伶奈、ごめん...)
異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。
初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。
誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。
1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる