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最果ての森編
20. 魔法の練習①
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「さあ、ウィル君、始めようか!」
ライの笑顔が相変わらず眩しい。
そういえば、外に出るのは初日にジルに拾われて以来だ。
あの時、ちゃんと服は身に着けていたし、靴も履いていた。生まれたままの姿ではなかったことに、リイン様に感謝する。
「ふふ、ウィル君にどんな魔法を使ってもらおうか、あれから寝ずに考えたんだ」
徹夜明けのテンションだったのか。
「まず魔法っていうのはね、起こしたい現象を明確にイメージすることが大事なんだ。そして魔法名を唱えながら魔力を放出することで、イメージを具現化することが出来るんだよ」
へえー、何か唱えたりする必要はないのだろうか?
「イメージを具体的に固めるために、最初のうちは長文を詠唱する人もいるよ。魔法はその規模や威力、難易度などによって、初級、中級、上級、超級に分けられているんだ。その中でも特に上級以上の魔法は、魔力を練りながら詠唱してイメージを固めると、魔法が発動しやすいと言われていてね、『魔法詠唱集』なんて本も出てるくらいだよ。ただ、それが癖になって魔法名のみでの発動が難しくなる場合もあるから、詠唱も良し悪しだね」
なるほど。できれば僕は無詠唱で魔法を使えるようになりたい。長文を唱えるのは恥ずかしいお年頃なんだ。1歳だけど。
「もっとも、その現象を起こすのに魔力が足りなければ、不発に終わったり、イメージよりずっと小規模になったりするんだ。逆もまた然り。だから、イメージする魔法の現象の大きさと、放出する魔力量をすり合わせる練習も必要だよ」
ふむふむ。そのあたりは、何度もやって感覚を掴んでいくしかないのだろう。
「まずウィル君に習得して欲しいのは、土属性と光属性の初級魔法だよ。土属性は一見地味だけど、汎用性が高くて便利なんだ。光属性の初級魔法は失敗しても怪我をする心配はないからね。それで魔力の込め方に慣れたら、他の属性魔法にもどんどん挑戦していこう!」
おお、ついに魔法を習得する時が来た!テンションが上がってくる。
「それじゃあ、最初は土属性の初級魔法、土弾だよ」
そう言うとライは手のひらを前方に向け、『土弾』と唱える。
するとライの手から茶色い弾が飛び出し、10メートルほど先にあった木の幹をズサッと抉る。
「おお~!」
思わずぱちぱちと拍手をした。
「ふふ、ありがとう。それじゃあ、ウィル君もやってみようか。しっかりイメージを固めるんだよ」
地面に降ろされ、立ち上がる。
ジルに拾われた時は体に力が入らなかったが、もう大丈夫だ。まあ、ジルの足を掴んではいるが。
掴んでいない方の手を正面に向ける。
目を閉じて、土の弾が勢い良く発射されるのをイメージする。
弾と言えば、弾丸だよな。あれって、回転することで軸が安定するんだっけ?はっ!回転するってことは、ドリルみたいになってた方が、貫通力が高そうだ!柔らかいと衝撃で壊れちゃうから、強度も高くしよう!
そう考えて、円錐型にドリルのように溝が入った硬質な弾が、勢いよく回転しているのを想像する。
これでイメージは固まった!
魔力を込めて、発砲!
「『土弾』!」
ちょっと、いやだいぶ噛んだが気にしない。
ヒュンッ···ドスッ、ドサッという音が聞こえた。
あ、目を閉じたままだった。
目を開けると、口をぽかんと開けて固まっているライがいた。
「ウィル君···どんなイメージしたの···」
我に返ったライが訊ねる。
自分の魔法をちゃんと見ていなかったので、どう説明したものか。
というか、なんだか暑い。
「おい、ウィル!魔力を抑えろ!」
ジルが慌てたように僕に言う。
魔力を抑える?
そういえば、急に体内魔力が増えた気がする。抑えるってどうやればいいんだ?
というか、体が熱い。頭がぼーっとする。
「はっ!えっと、吸魔石!これ使って!」
ライが僕に何かを握らせる。するとその何かに向かって、僕の中から魔力が流れる。数秒か、数十秒か、時間の感覚がよく分からないが、しばらくして握っていたものがパキンと割れる。
「もう一つ!」
ライが再び僕に何かを握らせる。また魔力がそれに向かって流れ込む。
だんだんと、頭がクリアになってきた。熱も治まったようだ。
「ウィル、大丈夫か?」
ジルがしゃがんで僕の顔を覗き込む。
「あう」
返事をすると、ライが大きく息を吐いた。
「はあ、良かった」
どうやら心配されたようだが、一体何が起こったのだろう?
「俺が見てくるから、ライはこいつの傍にいてくれ」
ジルがそう言って、森の中へ入って行く。
しばらくすると、なにやら車ほどの大きさの物を抱えて戻って来た。力持ちのイケメンだ。
なんだ?動物?
「はあ、やっぱり」
ライがそれを見て言う。
「あれは、マンティコアだよ。ウィル君がさっきの魔法で倒したんだ」
···今、なんと?
ジルがドサッと地面に下ろしたそれは、奇妙な生き物だった。胴体がライオンのようで、背中にコウモリみたいな羽があり、尻尾がサソリのようになっている。極めつけは、人間のような顔だ。ただし、顎から後頭部にかけて穴が空いているが。
うっ、ちょっとグロいぞ。
「ウィル君がマンティコアを倒したことでレベルが上がり、体内魔力が増えたんだよ。もともとのレベルが0だったから、急激に増えすぎて体が耐えられなかったんだ。今ではもう、レベル27だよ」
どうやら僕は、やらかしてしまったようだ。
名前:ウィル
種族:人族
年齢:1
レベル:27
スキル:成長力促進、言語理解、魔力操作、魔力感知
魔法:土弾
耐性:
加護:リインの加護
称号:異世界からの転生者、黒龍帝の愛息子
ライの笑顔が相変わらず眩しい。
そういえば、外に出るのは初日にジルに拾われて以来だ。
あの時、ちゃんと服は身に着けていたし、靴も履いていた。生まれたままの姿ではなかったことに、リイン様に感謝する。
「ふふ、ウィル君にどんな魔法を使ってもらおうか、あれから寝ずに考えたんだ」
徹夜明けのテンションだったのか。
「まず魔法っていうのはね、起こしたい現象を明確にイメージすることが大事なんだ。そして魔法名を唱えながら魔力を放出することで、イメージを具現化することが出来るんだよ」
へえー、何か唱えたりする必要はないのだろうか?
「イメージを具体的に固めるために、最初のうちは長文を詠唱する人もいるよ。魔法はその規模や威力、難易度などによって、初級、中級、上級、超級に分けられているんだ。その中でも特に上級以上の魔法は、魔力を練りながら詠唱してイメージを固めると、魔法が発動しやすいと言われていてね、『魔法詠唱集』なんて本も出てるくらいだよ。ただ、それが癖になって魔法名のみでの発動が難しくなる場合もあるから、詠唱も良し悪しだね」
なるほど。できれば僕は無詠唱で魔法を使えるようになりたい。長文を唱えるのは恥ずかしいお年頃なんだ。1歳だけど。
「もっとも、その現象を起こすのに魔力が足りなければ、不発に終わったり、イメージよりずっと小規模になったりするんだ。逆もまた然り。だから、イメージする魔法の現象の大きさと、放出する魔力量をすり合わせる練習も必要だよ」
ふむふむ。そのあたりは、何度もやって感覚を掴んでいくしかないのだろう。
「まずウィル君に習得して欲しいのは、土属性と光属性の初級魔法だよ。土属性は一見地味だけど、汎用性が高くて便利なんだ。光属性の初級魔法は失敗しても怪我をする心配はないからね。それで魔力の込め方に慣れたら、他の属性魔法にもどんどん挑戦していこう!」
おお、ついに魔法を習得する時が来た!テンションが上がってくる。
「それじゃあ、最初は土属性の初級魔法、土弾だよ」
そう言うとライは手のひらを前方に向け、『土弾』と唱える。
するとライの手から茶色い弾が飛び出し、10メートルほど先にあった木の幹をズサッと抉る。
「おお~!」
思わずぱちぱちと拍手をした。
「ふふ、ありがとう。それじゃあ、ウィル君もやってみようか。しっかりイメージを固めるんだよ」
地面に降ろされ、立ち上がる。
ジルに拾われた時は体に力が入らなかったが、もう大丈夫だ。まあ、ジルの足を掴んではいるが。
掴んでいない方の手を正面に向ける。
目を閉じて、土の弾が勢い良く発射されるのをイメージする。
弾と言えば、弾丸だよな。あれって、回転することで軸が安定するんだっけ?はっ!回転するってことは、ドリルみたいになってた方が、貫通力が高そうだ!柔らかいと衝撃で壊れちゃうから、強度も高くしよう!
そう考えて、円錐型にドリルのように溝が入った硬質な弾が、勢いよく回転しているのを想像する。
これでイメージは固まった!
魔力を込めて、発砲!
「『土弾』!」
ちょっと、いやだいぶ噛んだが気にしない。
ヒュンッ···ドスッ、ドサッという音が聞こえた。
あ、目を閉じたままだった。
目を開けると、口をぽかんと開けて固まっているライがいた。
「ウィル君···どんなイメージしたの···」
我に返ったライが訊ねる。
自分の魔法をちゃんと見ていなかったので、どう説明したものか。
というか、なんだか暑い。
「おい、ウィル!魔力を抑えろ!」
ジルが慌てたように僕に言う。
魔力を抑える?
そういえば、急に体内魔力が増えた気がする。抑えるってどうやればいいんだ?
というか、体が熱い。頭がぼーっとする。
「はっ!えっと、吸魔石!これ使って!」
ライが僕に何かを握らせる。するとその何かに向かって、僕の中から魔力が流れる。数秒か、数十秒か、時間の感覚がよく分からないが、しばらくして握っていたものがパキンと割れる。
「もう一つ!」
ライが再び僕に何かを握らせる。また魔力がそれに向かって流れ込む。
だんだんと、頭がクリアになってきた。熱も治まったようだ。
「ウィル、大丈夫か?」
ジルがしゃがんで僕の顔を覗き込む。
「あう」
返事をすると、ライが大きく息を吐いた。
「はあ、良かった」
どうやら心配されたようだが、一体何が起こったのだろう?
「俺が見てくるから、ライはこいつの傍にいてくれ」
ジルがそう言って、森の中へ入って行く。
しばらくすると、なにやら車ほどの大きさの物を抱えて戻って来た。力持ちのイケメンだ。
なんだ?動物?
「はあ、やっぱり」
ライがそれを見て言う。
「あれは、マンティコアだよ。ウィル君がさっきの魔法で倒したんだ」
···今、なんと?
ジルがドサッと地面に下ろしたそれは、奇妙な生き物だった。胴体がライオンのようで、背中にコウモリみたいな羽があり、尻尾がサソリのようになっている。極めつけは、人間のような顔だ。ただし、顎から後頭部にかけて穴が空いているが。
うっ、ちょっとグロいぞ。
「ウィル君がマンティコアを倒したことでレベルが上がり、体内魔力が増えたんだよ。もともとのレベルが0だったから、急激に増えすぎて体が耐えられなかったんだ。今ではもう、レベル27だよ」
どうやら僕は、やらかしてしまったようだ。
名前:ウィル
種族:人族
年齢:1
レベル:27
スキル:成長力促進、言語理解、魔力操作、魔力感知
魔法:土弾
耐性:
加護:リインの加護
称号:異世界からの転生者、黒龍帝の愛息子
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